【ライブレポート】R指定、「ここがアンダーグラウンドの中心だ」
R指定が2018年1月1日、東京ドームシティホールにて単独公演<望まぬ生命>を開催した。
◆ライブ画像
新年一発目のライブにもかかわらず、<望まぬ生命>と明るさの欠片もないタイトルを付けてしまうところが彼ららしい。そう、R指定の発想は普通のバンドが考える趣向とはまるで異なる。それだけに彼らを支持するファンも一味違う個性の持ち主が多い。だからこそライブを通してお互いの存在を確かめ合うのだ。
まずこの日は、ライブタイトルと同名の楽曲「望まぬ生命」から始まった。胎児、手術シーンなど決して明るくない、むしろ希望が見えない映像が流れるなか、メンバーは紗幕の後ろで淡々と歌い演奏していく。幕が落ちてからは一縷の望みを残すかのようなサビが心に残る。続いては「毒廻る」。この曲は以前出した「毒盛る」の続編となるのだが、ストーリー的には「望まぬ生命」ともリンクしていて、聴き進めるごとに胸が痛くなる。
一転して「-SHAMBARA-」では、マモ(Vo)の「いくぞ、東京!」との一声で曲の頭からエアバーストが炸裂、場内の熱量も高まっていく。SEを挟んだ後は「晩秋」を。Z(G)のギターの音色は哀愁が漂い、ロックななかにドラマを生み出す。「ネクラ・ネクロ・ネグロ」では、本編オープニングと同じく、ショッキングな映像を背景に歌い上げる。映像にばかり目がいかないのは、彼らの演奏能力が高いからだろう。曲を通して伝えたいメッセージがあるからこそ、映像に飲み込まれていかない。それは「八幡の薮知らず」でも。楓(G)が奏でるギターフレーズはもの悲しく、聴く者の感情を揺さぶる。本編後半にかけては、ライブバンドとしての見せ所をといった調子で「スーサイドメモリーズ」「喪失-soushitsu-」「病ンデル彼女」「MELT DOWN」を畳み掛ける。「わかってるよな、もっといけんだろ!」という煽り文句を並べながら、マモは想いを吐き出していく。それにあわせ、3階までぎっしりと詰まったファンは席があるのを忘れてしまったかのようにその場で身を乗り出しながら頭を振る。最後に演奏された「ぼくらのアブノーマル」では、全員が力の限りライブに臨んでいった。
だがこれで終わるわけもなく。アンコールでは先程とはうって変わって、メンバーの気楽なMCが続いたことで場内は穏やかな雰囲気に。宏崇(Dr)にいたっては、「マモが雑誌とかで今日のライブはおめでたいムードを出さないと言ってたから、ずっとそうなのかとビクビクしてた」と観客の笑いを誘う。その後にはメンバー全員でじゃれあうなど、いつになく仲の良いところを見せる。仲間でありながらも良いライバル関係を築き、切磋琢磨して各々が成長してきたバンドだからこそこういう場面は何とも微笑ましい。「こんなバンドですけど、これからもついてきてくれますか? みんな今日が暴れ始めだろ。どのバンドよりもかっこいいと思わせてやるから!いくぞ!」とマモが言い、「波瀾万丈、椿唄」「魅惑のサマーキラーズ」といったライブでの人気曲を次々と披露していく。そして、最後には、「さらばビッチ」を場内に金色のテープが舞うなか演奏を進めていく。盛り上がりが最高潮となった瞬間、マモが叫んだ。「生きろ!」と。儚くも力強いその一節に、観客の多くが胸を熱くしていた。
本編中、自らを「アンダーグラウンド」と言い切ったマモ。「ここがアンダーグラウンドの中心だ」とライブを指す。それゆえ、今回の単独公演をこういったタイトルにしたと語る。楽しいとか幸せとかよりも、ファンから“死にたい”という声を聞いたことで、その気持ちを代弁してこのタイトルになったとのこと。「君らのことを誇りに思うし、望んでいます。だから、生きて下さい」その言葉こそが今日伝えたいことの全てである。新年早々、何でこんなにも重いタイトルを付けてきたのだろうと思った人もいたはずだ。だが、時として生きることは死を選ぶよりも難しい。だからこそ嬉しいと感じる時間を多く作り、この時代を共に生き抜いていこうという彼らなりのエールが込められていたに違いない。
「10周年に向けて、デカいステージに連れて行くことを約束します!」最後の最後で向けられた華やかな言葉に観客は惜しみない拍手を贈った。拍手はいつしか大きな歓声に変わり、メンバーを呼ぶ。いつもならそのまま終わったはずだ。しかし観客の声の大きさと熱意に押されたのか、メンバーは再びステージに現われ、当初予定にはなかった「衝動」「素晴ラシキ此ノ人生」「修羅場」「嗚呼、性春」の4曲を披露した。その様子はまるで、ここがアンダーグラウンドの中心だと思えたほど。生きているからこそこうしてライブも楽しめる。だから、また次に会うときまで頑張って生きるんだという想いが音から感じられたのだった。
なお、この日は今後のスケジュールもいくつか発表された。まずR指定史上、初めてとなるアジアツアーを4月に敢行するとのこと。そして5月5日と6日には、ZeppTokyoにてマモの生誕祭が行われるのだが、こちらはタイトルを<命日>と付けているだけに一筋縄ではいかないことが予想される。普通を嫌い、アンダーグラウンドと言い切るバンドの行く末とはいかに。それは、これからじっくりとわかるはずだ。
文◎水谷エリ
写真◎ゆうと。
◆R指定 オフィシャルサイト
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