【連載】フルカワユタカはこう語った 第20回『hangover weekend』

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熱めのお湯と入浴剤の柑橘臭で幾分楽になった。

◆フルカワユタカ 画像

起き抜けに吐いた、というか気持ち悪くて起きたのか。とにかく先ほどの胃酸で歯の裏がざらざらしていて舌の居心地が悪い。久々に絶望的な二日酔いになるまで飲んでしまった。普段、朝風呂などはしないのだが、二日酔いの時はこれに限る。2リットルのペットボトルを風呂場に持ち込み、とにかくそれを飲み、そしてとにかく湯につかる。

サッシ窓を開けると、濡れた頭に冷たい秋風があたって少し気持ちがいい。今日は日曜なので、向かいでやっている居間を揺らすほどの解体工事の音もなく静かだ (ということは本来はゆっくり寝れたのか)。はしゃぐ子供達の声が聞こえる。小鳥がさえずっている。閑静な住宅街の穏やかな朝の一コマだ。この腐れ主人公以外は。「もう二度と飲まないからな。あんなもの」何度、こうして風呂場で呟いてきたことだろう。

昼間の4時前。須藤君(※Hisashi Suto [Vo&G] / 髭)から「近くにいるから、これから飲まない?」とLINEがあった。飲み始めるには随分早いので若干ためらったのだが、先日須藤君に歌詞を書いてもらっており、その打ち上げ的なことは“ある”なと思い「ちょろっとなら」と返事をした。4時半に合流した時には彼はもう酔っぱらっていた。結局そこから日をまたぐまで、ということは少なくとも8時間以上。2軒目で木下(※木下理樹 [Vo&G] / ART-SCHOOL)が合流して、3軒目でケイシ(※Keishi Tanaka [Vo] / ex.Riddim Saunter)を呼んで、4人で4軒目に移動して。5軒目はケイシの家の近くでサシ飲み。そこにはどのくらいいたのだろう。ケイシにもう一軒誘われたのを断ったのは覚えているが、それからソファーで気持ち悪くて目が覚めた先ほどまでの記憶が無い。

▼LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS@<中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017>9月23日(土) REALIZE STAGE


先日(2017/10/3)、HAWAIIAN6のライブを見に恵比寿LIQUIDROOMへ行った。このコラムではドーパン(※DOPING PANDA)の黎明期に最も関わりがあったバンドとして度々書いてるので、その関係性は知るところだと思うが、お互いの名が世の中に出始めた頃くらいから僕らは活動を共にしなくなったので、その2バンドに接点があることを知らないファンも案外多い。ちなみにドーパンの解散が決まった時、一番最初に報告したミュージシャンはなぜかはっちゃん(※HATANO [Dr] / HAWAIIAN6)だった。特に深い意味はなかったが、元々あった場所に元々あったものを戻すような、そんな自然な気持ちからだった。

出会いは本当に古い。当時、まだドーパンのドラムは隼人じゃなかったし、知り合い以外のお客なんて一人もいなかった。HAWAIIAN6とJr.MONSTER、それにこの日のLIQUIDROOMにも出ていたSTOMPIN' BIRD、他にも幾つかバンドがいたが、あの頃は常に一緒だった。新宿ACB、西荻窪WATTS、高円寺GEAR、渋谷CYCLONE。主催者と箱が変わるだけで居並ぶメンバーはいつも同じ。毎週飲んでるから別にいいようなものの必ず打ち上げして、お金がないから駅のベンチで始発を待って。単にライブハウスを民族大移動してるだけだったが、何かシーンを作ってる気になれてて楽しかった。東京にすらお客がいないくせに、一丁前にツアーにも行った。思い出というより、もはや伝説に近いが<冒険ゴリラツアー>と<孔雀ドラゴンツアー>は一生語れるであろう良い昔話だ。

しばらくして、HAWAIIAN6やSTOMPIN' BIRDに“れっきとした”お客が付き始める。嫉妬もあったと思う。その辺りから、僕ははっちゃんやヤス(※YASU [B&Vo] / STOMPIN' BIRD)の(言い方を悪くすれば)“暑苦しい”MCに共感出来なくなっていた。先日のLIQUIDROOMではっちゃんから言われた、「ユタカ、いつも怒ってたよな」と。そんな記憶はあまりないのだが、40歳目前の今でも本音を隠しきれない僕だ、きっと嫉妬や焦りがみっともないくらいに溢れ出ていたのだろう。

久々に見たHAWAIIAN6とSTOMPIN' BIRDはとてもカッコ良かった。お互い、どうやら古い曲を多めにプレイしていたようだが、僕にとってはほとんど知らない曲ばかりだった。それよりも、はっちゃんとヤスのMCがすんなり入ってきた。もちろんいろいろ経て、僕の嫉妬や焦りがなくなったからというのは大きいだろう。だが、それだけではない。彼らの言葉に当時とは違う説得力があった。僕は僕なりにメジャーというフィールドでフジファブリックやART-SCHOOLという戦友達ともがきながら、バンドは無くしてしまったが、それでもどうにかここまで来た。彼らは彼らでlocofrankやdustboxという戦友達と、沢山の壁にぶつかりながら、そこに立っているのだ。その歴史がかつてどこか浮ついて聞こえていた言葉達を全く違うものにしたのだと思う。もう暑苦しいとはこれっぽっちも感じなかった。

「打ち上げに出ない」と言ったら「まだ喋ってねえじゃん!」ってユウタ(YUTA [Vo&G] / HAWAIIAN6)に怒られた。そもそもユウタと喋るつもりで遊びに行ったし、打ち上げも出るつもりだったのだが、ライブを見たらなんだか急に照れくさくなって、大勢で飲めばわけのわからないフルカワユタカを演じてしまいそうで。またサシで行きましょう。ギターとお酒持ってスタジオに入るとか、絶望的にダサイ飲み方でも僕は構わないから。いや、そういう飲み方をしてみたいな。駄目かな。嫌かな。

須藤君と木下と飲んでるときの僕は軽薄だ。それは彼ら2人が僕に輪をかけて軽薄だからだ、きっと。飲み屋のBGMで踊り出す須藤君と、日々の絶望を語る木下。僕は笑いながら相づちを打ったり、突っ込みを入れたり。気がつけば時間が経っているのだが、どうしたらこの薄っぺらい会話だけでこの時間に至れるのかと毎回感心してしまう。さらにタチが悪いのは中身が無いくせにかなりの確率で二日酔いになることだ。

HAWAIIAN6を見に行って熱い気持ちになった後で、少々己にがっかりだが、つくづくこれが本当の僕なんだろうなと思う。なんとも馬鹿馬鹿しくて、女々しくて、軽薄で、愛らしくて、最高に居心地が良い。やはり僕はパンクスにはなれなかったんだ。

▼LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS@<中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017>9月23日(土) REALIZE STAGE


市川さん(※LOW IQ 01)の横でギターを弾くようになって、昔の仲間や先輩とも良く会うようになった。尖ってた頃を冷やかされたりして、恥ずかしい気持ちもありながら、そんな僕を迎え入れてもらってることに感謝もしている。先日、細美君(※細美武士 [Vo&G] / the HIATUS / MONOEYES)と初めてちゃんと話す機会があった。

「俺、お前のこと嫌いだったんだよ」──細美
「はい。なんとなくそうだってことは耳にしてます」──フルカワ
「昔ね、DOPING PANDAとELLEGARDENと10-FEETでイベントがあってね。楽屋口にたまたまTAKUMA(※[Vo&G] / 10-FEET)と俺とお前がいてさ。イベントのカメラマンが“だったら”ってことで『3人で一枚いいですか?』って」──細美
「はい」──フルカワ
「そしたらお前さ、『俺、そういうんじゃないんで』って、どっかいっちゃってさ。別に、俺だってそういうんじゃねーよ!(笑)。でもなんかそういうのはさ、そんな言い方しなくていいじゃん」──細美
「覚えてないけど、絶対やったんでしょうね。本当にすみません」──フルカワ
「いや、謝んなよ、そういうのはトイレにジャーッと流してよくて。最近、市さんの横でギター弾いてて『元ロックスターです!』とか言ってんの見て。ああ、なんか思ってたのと違うじゃんって。おかえりって」──細美

マサ(※masasucks [G] / the HIATUS / FULLSCRATCH / RADIOTS / and more...)と飲むと十中八九ケンカになる。あいつは、僕の女々しいというか芸術家ぶってるところが嫌いらしく、“逃げんなや”とか“立ち向かえや”とか抽象的なアドバイスが意味不明かつうるさいので、“お前こそ女々しいじゃないか”と、“あっちこっちやってないで一度は自分のしたいこと一個に決めてみろ”と。まあここはここで、須藤・木下飲みに匹敵するくらい不毛なのだが、そこはギターを愛する者同士、時が進めば家で延々ギターを弾きながら飲むみたいな、チョーキングを披露し合うみたいな、絶望的にダサイいことも2人なら戸惑い無く出来たりする。

話の続きで細美君に言われた。

「でもさ、マサが『あいつはいいやつだよ』ってずっと言ってたからさ。お前、マサがいなかったら、今頃、敵だらけだよ」──細美

こういうのはきっとオフレコだし、絶望的に照れるし、人によってはあざとく感じるだろうから、書こうかどうか迷ったけど。圧倒的に嬉しい話だったからついつい書いちゃった。マサよ、お前いいヤツだなあ~。

撮影◎平野大輔(中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017)



■シングル「days goes by」

2017年11月8日(水)発売
【CD】NIW136 1,700円 +税
<収録曲>
1. days goes by
※ボーナストラックとしてDEMO音楽収録
※Guest Backing Vocal:ucary valentine
※Producer:TGMX

■<フルカワユタカ SHELTER 3days>

11月28日(火)下北沢 SHELTER「バック・トゥ・ザ・インディーズ」
▼サポートメンバー
bass: 村田シゲ (ロロロ) / drum: 福田忠章 (Frontier Backyard , Scafull King)

11月29日(水)下北沢 SHELTER「フルカワユタカはこう弾き語った」

11月30日(木)下北沢 SHELTER「無限大ダンスタイム’17」
▼サポートメンバー
guitar: 新井弘毅 / bass: 宇野剛史 (QUADRANGLE,GOLIATH) / drum: 鈴木浩之 (U&DESIGN, QUADRANGLE,GOLIATH)

▼チケット
全公演 前売り¥3,500(税込、D別)
※3日間連続ご来場のお客様にはプレゼントあり
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888 (weekday12:00~19:00)




■<フルカワユタカ presents「5×20」>

2018年1月28日(日)新木場STUDIO COAST
開場13:15 開演14:00
出演:フルカワユタカ / the band apart / Base Ball Bear / …and many bands , musicians
▼チケット
スタンディング 4,800円(税込)
※ドリンク代別
※3歳以上要チケット
一般発売:2017年11月25日(土)
【オフィシャルHP2次受付(抽選)】
2017/10/13(金)12:00〜10/23(月)23:59まで
http://eplus.jp/rockstar18hp/ (PC・携帯・スマホ)
※イープラスの会員登録(無料)が必要です。
※受付にはe+のプレオーダーシステム(抽選制)を利用します。先着順ではございません。
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888 (weekday12:00~19:00)

■<FRONTIER BACKYARD 6th album「THE GARDEN」Release Tour>

2017年11月10日(金)宮城・仙台 enn 2nd
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月11日(土)岩手・大船渡 KESEN ROCK FREAKS
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / the band apart / フルカワユタカ
2017年11月12日(日)岩手・宮古 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / the band apart / フルカワユタカ
2017年11月14日(火)北海道・札幌 BESSIE HALL
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月16日(木)青森・aomori SUBLIME
出演:FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月17日(金)宮城・石巻BLUE RESISTANCE
出演:FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月18日(土)栃木・HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
出演:FRONTIER BACKYARD/ CALENDARS / フルカワユタカ

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