【レポート】かまいたち、正真正銘の解散ライブ「俺らよりカッコいいバンドがあるか!」
'90年代のヴィジュアル系黎明期、短い活動歴ながら旋風を巻き起こしたかまいたちが、2013年のリユニオンに終止符を打つワンマン<かまいたち最終公演『THE END』>を8月5日、赤坂BLITZで開催した。
◆かまいたち 画像
ドラマーでリーダーのCRAZY DANGER NANCY KENchanの『活動30周年イベント』で奇跡の再結成を果たしたかまいたちは、<VISUAL JAPAN SUMMIT>出演をはじめ、新宿LOFTや京都MUSEでのワンマンライブなど一連の活動を展開。そしてこの日、正真正銘の解散ライブを行うとあって、真夏の赤坂には愛すべき“はちゃめちゃ狂”信者たちが全国から集結した。1991年の渋谷公会堂解散ライブから26年、当時を知るファンもメンバー自身も、人生の年輪を重ねてきたのは紛れもない事実だ。お互いの26年を確かめるためにも、この解散ライブは大きな意味を持つ。
「かまいたち」がBGMに流れる中、定刻より15分が過ぎて場内暗転。おなじみのSEに煽られて客席に緊張感が高まる。けたたましいサイレンが鳴り響き、CRAZY DANGER NANCY KENchan(以下、CDNけんchan)がステージに現れると、当時の言葉を再現した。
「ついにきた。2017年8月5日。今日は俺たちと愛するお前たちの心に残る絆を作ってください!」──CRAZY DANGER NANCY KENchan
続いて、サポートギターの屍忌蛇(VOLCANO)、ベースのMOGWAIの順に登場したメンバーが1曲目の「199Q」に突入、かと思いきやMOGWAI機材トラブルでのっけからの中断。「ごめん! 電池切れてたわ~!」とMOGWAIがコメントすると客席に笑顔と大歓声が沸き起こった。「今からやぞ~」と屍忌蛇、「なんとも、かまいたちらしい! なんせ僕たちハチャメチャ狂ですから!」とCDNけんchan。トラブルへの余裕の対応も彼らの深いキャリアがなせる業だ。
CDNけんchanの「一緒に生きようぜ!!」という号令でリスタートしたライブは、ボーカルのSCEANA登場と「オーイ!赤坂!!」という怒気を含ませたような煽りで一気にボルテージを上げていく。「スピロヘータ」の曲頭では当時を彷彿させる特効が炸裂。フロアを埋めたオーディエンスも、とりわけ最前ブロックはもみくちゃ状態だ。あの頃の勢いそのままの光景に会場に居合わせたすべての人が、「俺らもまだまだ行けるでー!」と思ったに違いない。
「おーい。クソガキども! 今日は最後までぶっ飛ばしていくぞ! こんなもんか赤坂!」──SCEANA
このMCに呼応して沸騰するフロアに向け、「みにくいあひるのこ」「Boys,Be Ambitious」を続けざまにプレイするなど序盤からノリのいいパンクチューンで畳みかける。この後のMCでは「みなさん本当にごめんなさい……」と再びMOGWAIが冒頭のトラブルを謝罪するも、ファンにもメンバーにも愛される彼の人柄によって全てが許されていく陽の雰囲気は彼らならではのもの。MOGWAIの仕切りで各メンバーを紹介、恒例となっている屍忌蛇のここでの決め台詞「今からぜよー!」から「天邪鬼」「非行少年」へ。
一旦ステージ袖にメンバーが姿を消すと、暫くしてSE「パワーフォール」が流れた。プロレスラー長州力の入場テーマとしても有名なこの曲をステージ再登場曲にチョイスしたのは、CDNけんchan主宰のアナーキストレコードのレーベルメイトで、かまいたちの大ファンだったという「亡くなった仲間が好きだったSEだから」とCDNけんchanは後に語った。
そして、ここから始まるのはドラムソロだ。ステージの一際高い位置にセッティングされたバンドの象徴ともいえる緑の2バスドラムセットから繰り広げられるソロは、プレイはもちろんMCも26年前のドラムソロを再現したもの。その途中では、スティックや衣装、はたまたリズムマシンまで客席に放り込むなどサービス精神もはんぱない。“人を楽しませることが最優先”という彼らならではの“イズム”がこのあたりにも溢れていた。
メンバーがステージに現れ、いよいよライブも中盤から後半へ。最狂パンクナンバー「かMARCH」「NO THANK YOU」では「お前ら、今日が最後ってわかってるよな。こんなもんかー!」とさらにオーディエンスに火をつけるSCEANA。「妖妖怪ROCK!」「へのへのもへじ」とアッパーなパンクチューンを次々投下してライブを加速させる。
「奇跡の復活から神様のプレゼント。本当に奇跡って、本当に神様っているんだなってはじめて思った」と涙を流し、ここまでの道程を感慨深く語ったCDNけんchan。「今日はカメラ入ってるんですよ。これライブ映像として11月くらいに出します」と続け、この日のライブがDVDリリースされることを発表した。詳細は未定だが、同公演以外のライブ映像や秘蔵過去映像も収録される見込みとのことだ。
怒濤の終盤は「俺らよりカッコいいバンドがあるかー!」とSCEANAが叫んで「MASTURBATION」から。「TOY DOL(S)」ではフロアのモッシュが一段と大きくなり、26年前の渋谷公会堂破壊劇が脳裏をよぎる。本編ラストは曲中のベースのキメフレーズが印象的な「自由の女神」だ。CDNけんchanやSCEANAがMOGWAIのベース弦を弾き、圧巻の本編が終了した。
アンコールに導かれ、短いMCにのってメンバーが再登場、そして披露されたのは「BAD WORST(形だけ)」だ。SCEANAがコール&レスポンスを繰り返し、オーディエンスもそれに大きく呼応する様が、最後の瞬間を惜しむかのようにも映った。「JEKYLL&HYDE」を最後にステージを颯爽と降りたメンバーだが、しかしまだまだアンコールが止まない。“まだ、あの曲をやってない!あの曲をやらずには終われない!”。そんな想いを込めたコールが延々と鳴り響く。ダブルアンコールに応えて再び登場したメンバーを代表してSCEANAがこう語った。
「今日は本当にありがとう。俺たち、かまいたちは終わりになっちゃうけど、またどこかで会えたらいいな。その時まで元気で!暴れろクソガキ!!!」──SCEANA
ダブルアンコールの1曲目は「ノイローゼ」。続けてこの日無料配布されたCD収録曲にして問題作「KILL YOURSELF」。ラストはかまいたち史上最もPOPで1番のメッセージソング「I LOVE YOU」だ。会場が一丸となった「I LOVE YOU」コールに全ての想いが込められ、あまりにも美しくはちゃめちゃな大団円を迎えた。
「ようやく、かまいたちというバカデカい妖怪、モンスターから解放されます」──CRAZY DANGER NANCY KENchan
最後に贈った言葉には、“思い残すことはもう何もない”というメンバーの気持ちが込められていると全てのオーディエンスが感じたに違いない。様々なことを乗り越えてようやく辿り着いた終着点は、本当の意味でのかまいたちの解散を描き切った。26年の時を経て、彼ららしいやり方と伝え方で終焉を迎えたかまいたちは、姿を見せずに切り刻む“かまいたち”のごとく、風の中に“はちゃめちゃ狂”を携えて心の中に生き続ける。そしてまたいつの日か、気がついたら心地よい傷を負わされていることだろう。
取材・文◎桜井マサナオ(Field Arrow)
撮影◎メトロ。
■<かまいたち最終公演「THE END」>
2017年8月5日@赤坂BLITZセットリスト
01.199Q
02.スピロヘータ
MC
03.みにくいあひるのこ
04.Boys, Be Ambitious
MC
05.天邪鬼
06.非行少年
07.HAPPY ROOM“777”
(C.D.N.けんchanタイコソロ)
08.かMARCH
09.NO THANK YOU
MC
10.妖怪ROCK!
11.へのへのもへじ
MC
12.MASTURBATION
MC
13.TOY DOLL(S)
14.自由の女神
encore
En1.BAD WORST(形だけ)
En2.JEKYLL&HYDE
W.encore
En3.ノイローゼ
En4.KILL YOUR SELF
En5.I LOVE YOU
Last MC
SCEANA(Vo), MOGWAI(B), CRAZY DANGER NANCY KENchan(Dr), 屍忌蛇(support guitar / VOLCANO)
■LIVE DVD『かまいたち最終公演「THE END」@赤坂BLITZ』
LZLND-003 販売価格未定
◆かまいたち オフィシャルサイト
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