【インタビュー】石山竜市 (ex.Lastier)、「二度とステージに立つことはない」

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■今回の機会は僕自身の卒業式であり
■新たな道に対する決意表明の場なのかも

──ステージを降りようと決めたのが7年前ということでしたが、造型師としての活動は?

竜市:本格的に始めてからは7年ですけど、音楽活動を行っている頃からプロの造型師として仕事をしていましたから、その時期も合わせたら10年くらいにはなります。この仕事は企業の活動に紐付いて行なうことが多いから、制作者の名前を表に出すことはないんですね。だから名前を出してないだけで、実は現在まで多くの造形物を作っています。

──その造形物とは具体的にどういうものなのか? 造型師とは一体どういう仕事なのか教えてください。

竜市:造型師の仕事にもいろいろあります。それこそ美術品の修復や、一点物のフィギュアの制作だったり。わかりやすく造型師と名乗っていますけど、正確に言うなら、僕のやっていることは原型師という仕事なんです。商品の金型と同じように、造形物の原型を作る、それが今の僕の職業です。

──造型師を本格的に始めた当時から現在まで、音楽との関わりは?

竜市:一度だけ、復興のためにLastierを復活させましたけど、音楽活動というカタチで人前へ立ったのはあのライヴ1回のみです。本当は、Lastierが解散した時点で、二度とLastierをやることはないとメンバーとも決めていたんですよ。僕のわがままでLastierを終わらせましたからね。復興のときは、それでもやるべき理由があったから一度きり復活したのであって、あの日を最後に、僕自身ステージから引退した気持ちでいました。

──それがなぜ、ソロとして再びステージへ立とうと?

竜市:<Earliest Memories 2017>参加の話は、実は2016年からいただいてまして。当初、“'90年代の輝いてたあの時代を、あの頃のバンドたちが集結して1日だけでも取り戻そう”という趣旨のもと、Lastierとしての出演依頼をいただいたんです。でも、先ほどお話したようにそれは絶対にないのでお断りしました。「ならば、竜市君のソロとして出て欲しい」とも懇願されましたが、僕は現役アーティストではありませんし、もう表舞台に立つ気持ちは一切なかった。だけど、間を開けて話をいただくという……おそらく3回は断ってるんです。

──3回も。そのオファは懇願に近いものがありますね(笑)。

竜市:“田舎で原型師をしている僕を、なんでそこまで求めてくれるのか?”、根負けしたと言いますか(笑)、結果、出演を決めました。ただ、ブログにも書いたように、レコーディングや楽曲制作は好きなんですね。仕事というカタチではなく、一人の男のライフワークとして音楽は続けていきますし、ILLUMINAのTAKA君と「どちらかが棺桶へ入る前までに、二人で作った音源を世の中へ残したいね」と約束しているんです。それがいつになるかはわからないけど、叶えるつもりで。もしかしたら60歳や70歳かも知れないですけどね(笑)。ただ、一つだけ明確に言えるとすれば、ライフワークとして音楽は続けていく。けれどもそれは使命感を持ってやることではなくて。

──というと?

竜市:自分が一生懸命音楽をやっていた時間は、シンデレラがガラスの靴を履いて舞踏会へ出ていたのと同じようなもので。その靴を履いた時間だけは華やかな世界に居た感覚なんです。だけど今は、ガラスの靴は溶けてなくなった。今の僕が僕で居る場所はステージ上ではなく、原型師として活動をしていくことなんです。

──つまり復活ではないと。

竜市:僕自身、中途半端にしたくない性格的なものもあるんでしょうね。それまで、発表する理由も必要もないことから引退について何も言わず、当たり前のように造型師として日々を過ごしてきましたが、今回の友情出演をきっかけに、“石山竜市が復活!?”と勘違いした人たちもいれば、“うちのイベントにも出て欲しい”という声がいろいろなところから届くようになったんです。

──9月17日に新潟Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGEで行われるイベント<UNKNOWN LUCK FES 2017>に、セッションバンドRKMRとして出演することも決定しています。

竜市:それは引退した僕が、“たった一度とはいえ舞台に戻ってくるのなら”と、Lastier時代の仲間であるKyoichi君が声をかけてくれたんです。「これが最後だと思うからこそ、もう一度だけ一緒にステージに立ちたい」と。その想いに、僕自身も気持ちで応えたくて引き受けたことなんです。

──RKMRのメンバーも、竜市さんにとって大切な仲間ですもんね。

竜市:はい。LastierのRyuichi、Kyoichi、Ryo、L'luviaのマースケ。この4人でLastierとL'luviaの楽曲を演奏します。しかもこの日は、LastierとL'luviaの所属事務所RISKY DRUG STOREの代表だった本間ゲンさんが企画する最後のイベントなんですね。そういう理由も重なって出演を決めました。僕がL'luviaの楽曲を歌うのは、この日が最初で最後。お互いがあまりにも近すぎる関係性だったからこそ、両バンドの曲は当然知っていながら、それを交換して歌う機会はなかった。レアなステージになるんじゃないかな。何よりインディーズ時代にズッとお世話になったゲンさんへ久しぶりにお会いする機会であり、最後に恩返しをしながら、自分のステージを新潟で締めくくれるのも嬉しいことです。

──そこにも素敵なドラマがあったという。

竜市:話を戻しますが、僕の出演発表によって、また音楽活動を始めたいと思っていると勘違いされているような声が多かったんです。ここではっきり“ステージを引退する”と意思表示しておかないと同じようなオファが続くと思ったので、ブログで宣言したわけなんです。実際、いろんなライヴの誘いをいただいたときにも思いましたからね、自分はミュージシャンとしてステージに立ちたいのではない、原型師として自分の人生をそこへ注ぎ込みたいんだと。その気持ちが改めてはっきりしたんです。

──8月11日のイベントは、同じ時代を駆け抜けたバンドたちが集結しますね。

竜市:楽しみしかないです。加えて、ステージでの僕の最後を求めてくれる人たちにも、歌を通して決意をしっかり届けられたらなと思っています。このイベントへ出演するwyse、JURASSIC、CARESS、LAID、ILLUMINAは、'90年代当時ソフトビジュアル系と呼ばれていたバンドたちですよね。“あの時を一夜だけTSUTAYA O-WESTに甦らせる”という趣旨のように、自分もその時代の石山竜市に気持ちを戻して歌えたらと思います。観に来る人たちも含め、ぜひ同窓会気分で楽しみましょう。

──石山竜市さんのtwitter上では、Lastierの代表曲である「SKY」と「WILL」を歌うことが発表されています。

竜市:しかも演奏は、この日出演するミュージシャンたちにお願いをしているんです。せっかくのお祭りですし、みんなと「SKY」と「WILL」を大合唱したいので、ライヴに足を運ぶ方はこの2曲を覚えてきてくれたら嬉しいです。

──ちなみに、この日はメイクして登場するんですよね。

竜市:ヘアメイクさんを用意してくださるとお聞きしたので、メイクはします。ただ、せっかく長年かけてここまで伸ばした髭は、今のところ剃らないつもりでいますけどね。一見無精髭のように思われそうですが、その形も含め、こだわりとして生やしているから。僕は昔から髭の生えないタイプで、時間の経過と共に剃り跡が青くなることもなかったので、Lastierをやっている頃は薄化粧で済んでいたんですよ。年齢を重ねた今も、髭を伸ばそうにもなかなか伸びない。ライヴに来る方はそこも楽しみの一つにしていてください(笑)。

──現在の竜市さんとして出演するわけですね。いろんな偶然が重なったとはいえ、8月と9月の2本のライヴで今のご自身の気持ちをたくさんの人に伝えれば、本当に納得のいく形でステージ人生を終えられることになりそうですね。

竜市:本当に偶然の重なりあいなんですよ。自分ではとっくにアーティスト活動を辞めていたのに、まわりの人たちの熱い気持ちを受けて幕引きが出来ることになりましたから。今回の宣言を行うまで、僕が音楽人生に挫折して新潟へ戻った、と思っている人が多かったようで。もちろん、挫折も理由の一つではありますけど、造型師として新しい道を歩むために、アトリエの拠点を新潟へ移して新しい目標へ向かい走り続けてきた。悲観的な気持ちは一つもありません。今回の機会は、それをしっかり世の中へ伝えるために改めて用意した僕自身の卒業式であり、新たな道に対する決意表明の場だったのかもしれません。

──これまでの竜市さんの経緯や変遷を知らない人たちには、それを知る良い機会になると思います。

竜市:造型師、原型師としても、すでに10年の経験を重ねているので。それが今の石山竜市です。同時に、音楽を離れた7年間があったからこそ、また新鮮な気持ちで、最後のステージで歌えそうな気もしています。8月と9月のステージが泣いても笑っても人生最後のライヴだから、みんなでお祭り騒ぎをして、楽しくケジメをつけたいと思っています。


■<Earliest Memories 2017>

2017年8月11日(祝)TSUTAYA O-WEST
OPEN 16:00 START 17:00
▼出演
wyse、JURASSIC、CARESS、LAID、ILLUMINA、石山竜市(友情出演)
▼チケット
4月1日(土)発売
ローソンチケット L-72662

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