【インタビュー】クウチュウ戦「牛久大仏のような多面的なデカさを携えて、そのデカさに惹かれた人を悦ばせる音楽をやりたい」
■プログレだからとかロックだからというところに逃げたくない
■音楽フリークではない人に良いと感じてもらえる歌を歌いたい
――続いてプレイや音作りになどに関する話をしましょう。まず、今回ギターの面でこだわったことをあげるとしたら?
リヨ:ギターは、特になにも考えていないです(笑)。
――本当ですか? ローゲインのトーンが主体で、あまりダビングもせずに、ディレイやリバーブで飛ばすという空間を活かしたアプローチが印象的です。
リヨ:そうなんですけど……気づいたら、ああいうギターを弾くようになっていたという感じです。
――特定の誰かの影響を受けたわけでもなく?
リヨ:もちろん好きなギタリストはいますよ。デヴィッド・ギルモアとジミー・ペイジは、すごく好きです。でも、彼らの手法をそのまま真似したりはしていなくて。自分が良いと思うギターを弾いているだけです。
――音もちょっと独特じゃないですか? クリーン・トーンでもないし、クランチ・トーンでもない…みたいな音が鳴っていたりしますよね。
リヨ:僕は飽き性なので、いろんな音を出したいという気持ちが漠然とあるんですよ。あとは、使っているギターがちょっと変わっているので。僕は、VOXのファントムというギターを使っているんです。
――ええっ? メインで、ですか?
リヨ:はい(笑)。カスタムしまくっていますけど。元々はすごく平坦で、ペケペケした音だったので、改造しまくりました。ピックアップの交換は当たり前で、シングルコイルPUのトーンは、普通は250Ωのポットじゃないですか。それを、ハムバッカー用の500Ωにしているんです。それに、PUをシングル/ハムバッカー/シングルにしています。
――えっ、センターにハムバッカーですか?
リヨ:そう(笑)。僕は人と同じギターは使いたくないし、人と同じような音も出したくないんです。中2病をいまだに引きずっているようなところがあって(笑)。
――いえ、個性的であるというのは素晴らしいことだと思います。ギター・ソロやリード・パートもファントムで弾いているのでしょうか?
リヨ:全部、弾いています。
――だとすると、良い音しますね。
リヨ:むちゃくちゃ良い音がします(笑)。いろいろ手を加えて、良い音がするところまで持っていきました。アンプは基本的にローランドのJC-120を使っていて。あとは、僕はACE TONEの古いアンプとかも持っていて、それも使ったりしました。
――……かなりな衝撃です(笑)。ギターのプレイ面で、特に印象の強い曲なども教えていただけますか。
リヨ:プレイ面では、「テレパス」のギター・ソロです。あのソロは、自分でもすごく気に入っていますね。泣きのギターが大好きなので。
――分かります。「テレパス」に限らず、随所に泣きのギターが散りばめられていますよね。
リヨ:出てきますね(笑)。それは、本当にもうギターを始めた頃から一貫して追求してきているんです。僕の中には、ギターは泣いていないといけないというのがあるので。
――「白い10代(2017ver.)」のギター・ソロの延々ハンマリングを続けるフレージングなども、今どき珍しくないですか?
リヨ:アハハ(笑)。この曲のギター・ソロは、相当こだわりましたね。ハンマリングに限らず、自分がイメージしているところまで持っていきたくて、かなりがんばって。もうヘトヘトになりながら弾きました(笑)。
――流れが良いし、歌っているし…ということで、耳を奪われました。そういうギターを泣かせる一方で、トレモロ・ピッキングなどを使った速弾きも織り交ぜています。
リヨ:それは、ジミー・ペイジ的なところというか。速弾きといっても、テクニカルなものとかには興味がないんですよ。テクニックを見せつけるための速弾きではなくて、緩急をつけるために速弾きもするという感じですね。
――結果的に、単なるオールドロックのコピーではなく、今の感覚も入ったリード・プレイになっています。
リヨ:それは、ありますね。高校生、大学生の頃は、流行っているJ-POPとかも普通に聴いていたので。その辺は、うまく釣り合いが取れていると思います。
――バランス感覚が鋭いんでしょうね。ボーカルに関しては、どうでしたか?
リヨ:今回は、優しく歌いたいというのがありました。リスナーに歩み寄りたい…じゃないけど、受け入れられやすい歌にしたかったというか。僕は、昔はすごくコブシを効かせた歌い方をしていたし、すごくエグいビブラートを掛けていたんです。それを今の普通の若い子が聴くと、演歌っぽく感じると思うんですよ。だから、そういう癖の強い歌い方はやめようと思って。それに、今回はタイトルも「愛のクウチュウ戦」だし。……とにかく優しくなったんですよね、僕自身が(笑)。歌以前に、人が優しくなった(笑)。包み込んであげたいという気持ちが強くなって、「ユートピア」とか「テレパス」とかがそうですけど、“優しく歌う”ということがテーマとしてありました。
――優しく歌うといってもベタベタした歌い方ではないですし、ダイナミクスも効かせていて、すごく聴き応えがあります。
リヨ:ありがとうございます。僕は歌うことが本当に好きで、プログレだからとか、ロックだからというところに逃げたくないんですよ。クウチュウ戦の楽曲や歌詞と同じように、音楽フリークではない人が聴いても良いなと感じてもらえる歌を歌いたい。特に、今回はそういう気持ちが強かったですね。
――その辺りは、根っこに井上陽水さんや、さだまさしさんが入っていることも大きい気がします。今作の他のメンバーのプレイには、どんな印象を持たれていますか?
リヨ:まずニシヒラは、すごく努力をしています。本当に、ずっとベースを弾いていますから。移動する機材車の中でもベースを弾いていたりするんですよ。ドラムのアバシリもそうだけど、元々そんなに器用なタイプじゃないのに、曲を作るたびに僕がいろんなことを要求するから、彼らはそれに応えるためにすごく努力してくれる。ニシヒラは、本来は今回のアルバムの後半に入っている曲で弾いているようなベースが得意なんですよ。何かを支えるというよりはちょっと上物っぽいというか、ガンガン前に出るようなベーシストだったので、「セクシーホモサピエンス」や「ユートピア」は、最初はかなり苦戦していました。そこから相当努力したことは、間違いないですね。アバシリも元々はジャズをやっていたんですけど、僕がいろいろいって、ロックな方向にいってもらったんです。彼も、かなりがんばってくれました。
――お二人ともプレイヤーであると同時に、すごく音楽が好きなことが分かります。ベントラーさんの鍵盤に関しては?
リヨ:彼は、もう誰よりも器用なヤツなんですよ。ドラムも出来るし、ベースも出来るし、しかも上手い。キーボーディストにありがちな、それは理論的におかしいとか、そんなコードはない…みたいなことは言わないし。とにかく音楽面の反射神経がすごくて、僕が曲を持ってきた時に、パッとアンサーが返ってくるんです。こんな引き出しもあるんだと思って、こっちが驚くこともあるし。あいつはね、本当に素晴らしいです。今回のアルバムでも良い演奏を沢山していて、特に「セクシーホモサピエンス」のエレピ・ソロとかはすごく好きです。
――『愛のクウチュウ戦』は、プレイの聴きどころが多いことも魅力になっています。さて、今日話を聞いて改めて思ったことですが、『愛のクウチュウ戦』はプログレ・バンドという先入観を持たずに、ポップスとして聴いて欲しいですね。
リヨ:僕も、本当にそう思っています。ポップスで実験していくというのが、今の僕らのスタンスなので。'70年代のプログレというのは、そういう音楽だったと思うんですよ。スタイルありきではなくて、もっと面白いことをやりたい、他の人がやっていないカッコいいものを創りたいという想いが高じて、ああいう音楽になったんだと思う。そういう意味では、クウチュウ戦は意識の面でプログレッシブ・ロックを継承しているんです。
取材・文●村上孝之
リリース情報
発売日:2017年6月14日(水)
品番:PTAL-0001
税込価格¥2,000
発売元:PTA
販売元:PCI MUSIC
1.セクシーホモサピエンス
2.ユートピア
3.テレパス
4.アモーレ(2017ver.)
5.コメット氏の場合
6.白い十代(2017ver.)
7.愛去ってhealing
ライブ・イベント情報
7/14 下北沢Daisy Bar w/Walkings、モンスター大陸
7/19 下北沢GARDEN
東放学園音響専門学校主催
LOVE! LIFE! LIVE! ?~ライブ新体験!新しい音楽シーンをココから発信!~(free live)
7/24名古屋・池下UPSET w/絶景クジラ、それでも尚,未来に媚びる、the twenties
8/4大阪・福島2ndLine 夏福後夜祭 w/メランコリック写楽、嘘とカメレオン、レベル27etc
『愛のクウチュウ戦』レコ発ワンマン
“クウチュウ戦のfirst love tour 2017”
・9/15(金) 大阪Pangea
・9/16(土) 名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
・9/28(木) 新代田FEVER
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