【インタビュー】ISEKI （元キマグレン）、原点に向き合ったAORカバー集「自分にしか出せないものができたら」

■楽しみ方はいろいろあると思う
■自分にしか出せないものができたら

──次作も楽しみにしつつ、9月から全国ツアー＜ISEKI LIVE 2017～COFFEE & SOUL vol.2～＞が決定しています。今年1月から同タイトルの＜vol.1＞として、弾き語り形式の対バンツアーを行われていましたが、今回はワンマンで廻ると。

ISEKI：今のところはこれをベーシックにしたいなと思っていて。最終的には47都道府県をひとりでまわりたいなと思っているんですけど……なんか楽しいんですよ、弾き語りって（笑）。お客さんとの距離も近いし。

──今のISEKIさんとしては、構えずに聴いてほしいというモードなんですか？

ISEKI：そうですね。基本的にはのんびり聴いてもらいたいなって。

──なぜまたそういうスタンスでやろうと？

ISEKI：自分の立場だったらそうかなって。僕がライブに行って、席を立って、ウオー！ってやるのって、ちょっとキツいんですよ。体力的に（笑）。今度のワンマンツアーはほぼイスがある会場にしているんですけど、曲によっては席を立って盛り上がってもらってもいいし、のんびりと座って聴いてもらってもいいし、気持ちよければ寝てもいいし。

──寝てもOKなんですか!?

ISEKI：全然ありですよ。だって、みなさん日頃から疲れているわけじゃないですか。平日であれば、仕事が終わった後に来てくださったり、わざわざ夜行バスに乗って地方から来てくださる方もいますし、絶対に疲れているわけですよ。それで、夕方から薄暗い照明を当てられて座っていたら、寝ますよね（笑）。

──心地よさもあるでしょうし。

ISEKI：そうそう。サウンドが心地よければなおさら眠くなるので。そういう人達を無理矢理起こすよりは、のんびりと聴いてもらって、なんならちょっと仮眠してもらって（笑）、最後に盛り上がってもえたらいいなって。で、最終的には“ゆっくりできたな”“楽しめたな”って、いいバイブスで帰ってもらいたいですね。楽しみ方はいろいろあると思うので。

──タイトルの通り、コーヒーを飲むかのようにリラックスできる時間になってほしいと。ちなみに、ISEKIさんご自身がリラックスできる方法ってなんですか？

ISEKI：なんだろうなぁ……それこそコーヒーは好きだし、よく飲みますよ。1日に1回はコーヒーショップで買うし、コーヒーマシンも家に何個かあって、自分でやったりもしてるし。

──豆にこだわったりとかは？

ISEKI：いや、そこまではさすがに。でも、シュンケさんも中田くんもコーヒーマニアで、僕より全然詳しいんですよ。シュンケさんは豆にこだわっていたり、自分で焙煎していたりするんですけど、レコーディングのときに一式持って来てくれたんですよ。（コーヒーミルで）ガリガリやって、お湯の温度を測って淹れてくれたんですけど、めっちゃくちゃ美味かったですね。

──リラックスしてレコーディングに臨めたと。あと、ISEKIさんプロデュースのイベントも決定していますね。

ISEKI：＜音霊＞をやっていた頃から自分でイベントを組んでいたんですが、そのひとつが＜Yamaha Acoustic Mind＞というもので。イベント自体は4年前からやっているんですけど、今年は9月17日、18日の2日間、赤坂BLITZでやろうと。去年は演劇チックな形にしたんですが、今年は今の自分のテーマと近い形で、キリっとした感じのものにしようと思っていて。

──というと？

ISEKI：1日目は出演者それぞれが交代で出てきて、セッションも含めてやろうと思っているんですけど、2日目に関しては、僕がホスト役として常にステージにいる状態にしようかなと。バンマスみたいな立ち位置でいるというか。

──ホスト役＝司会進行のみというわけではないんですね。

ISEKI：そうです。このイベントは毎年すごく大変なんですけど、今年はすっごく大変そうです（笑）。それもありつつ、12月には＜毎日がクリスマス＞というイベントを主催していまして。去年はスキマスイッチとAimerさんとか、田島貴男さんとShiggy Jr.とか、毎日いろんなアーティストのツーマンとか、ワンマンをブッキングしているんですけど、今年は10周年ということで、とにかくもうすごいメンツが決まっていまして。

──本当にすごそうですね。

ISEKI：期待していてください！　で、その最終日の12月25日に、僕がワンマンをやらせてもらおうかなと。これもゲストを呼べたらいいなと思っているのと、この日はフルバンドでやろうと思っているので、アコースティックとは違ったものを見せたいなと思っています。

──先ほど「もう40曲以上は作っている」とのことでしたが、それこそトレンドのひとつとしてAORというものがあるわけじゃないですか。それをルーツに持っているISEKIさんが今後どういうものをやっていくのか気になるんですが。

ISEKI：中田くんともよく話すんですけど、最近のAORって爽やかなんですよね。あとはオシャレ。でも、僕はオシャレじゃないんで、オシャレじゃない方向というか（笑）。僕が元々持っているものであったり、キマグレンでやってきたものを加味したような、自分にしか出せないものができたらいいなと思いますね。

──色気とかも？

ISEKI：出せたらいいですよね。今年37歳の自分にしかできないことをやりたい。

──ちなみに、色気というか、AORの大人な雰囲気に惹かれたところってありますか？　個人的な話で恐縮なんですが、「接吻」を小学生のときに初めて聴いて、“これが大人の恋愛なのか……！”って思ったんですけど。

ISEKI：僕は歌詞の内容をそこまで深く考えてなかったかも。メロディがすっと入ってくるなっていう印象だったので。

──歌詞の意味はわからないけれども、とにかくいい曲だなっていう。

ISEKI：そうそう。だって、（「SAY YES」の）「愛には愛で感じ合おうよ」って歌詞、小学生の僕にはイマイチよくわからなかったですからね（笑）。今は“深いなぁ”って思いますけど。だから、歌詞のことをすごく考えるようになったのは、本当に大人になってからなんですよ。でも、こういう音楽をやっているけれども、この世代の人達に聴いてほしい！というわけではなく、これを聴いた小学生とか、当時の僕みたいな子が、なんかかっこいいなぁって思ってくれたらいいなって。

──いろんな世代の人が口ずさめるものというか。

ISEKI：AORって、難しいコードが出てきたりするけど、なんだかんだメロディはめちゃくちゃキャッチーなんですよ。僕はそこをすごく大事にしたくて。言葉とメロディのキャッチーさ、歌謡曲やJ-POP的な部分をしっかり大事にしたうえで、音楽づくりをしていきたいです。どのアーティストもそう考えていると思うけど、僕は僕なりの視点でそういうものを作っていきたいですね。

取材・文◎山口哲生