【インタビュー】Tetsu [D’ERLANGER]、「もう一度あの場所で」
2007年の復活劇から満10年を経て、通算第8作目にあたる約2年ぶりのニュー・アルバム『J’aime La Vie』をリリースしたD’ERLANGER。早くも「名盤!」といった声が飛び交い始めているが、まさに“2017年のD’ERLANGERだからこそ作り得たアルバム”というべき今作にまつわるメンバーたちの個別インタビューを、BARKSでは全4回にわたってお届けする。
◆D’ERLANGER 画像
最新アルバム『J’aime La Vie』のリリースを挟みながらお届けしてきたD’ERLANGERの個別インタビューも、いよいよ大詰め。最終回にあたる今回はTetsuの登場である。バンドの鼓動を打ち鳴らすドラマーはよく“屋台骨”と形容されるものだが、彼の場合はビートでこのバンドを支えるのみならず、マネージメントの一切合切を取り仕切る立場としても、D'ERLANGERを底辺から支えている。再結成10周年の節目を迎えた今、彼は何を動機としながらどんな明日を目指しているのか? その口からは“もう一度立つべき場所”の具体的な名前も聞こえてきた。
◆ ◆ ◆
■アルバムによってこの先何年かが見えたというより
■止まらずに行くってことがまずは先決で
──近年のD’ERLANGERには、すごく自然なポップ感が伴ってきているように思うんです。前作『Spectacular Nite -狂おしい夜について-』に収められていた「CRAZY4YOU」、今作での「バライロノセカイ-Le monde de la rose-」あたりには、特にそれが顕著に出ていますよね。
Tetsu:それは嬉しい言葉ですね。俺自身、そもそもポップ・ソングは大好きで。実際、今回のレコーディング期間中に俺をいちばん支えてくれたのはLORDEの「Green Light」という曲でね。“ああ、明日はどうしようかな”とか、“もう寝るべきなんだけど眠れねえな”みたいな時にも、あの曲を聴くことですごく頑張れたところがあった。ただ、ポップ・ソングは大好きなんだけど、やりたくてもできないところがあるんですよ、自分には。それこそ「バライロノセカイ-Le monde de la rose-」にしても「CRAZY4YOU」にしても、曲調はポップではあるかもしれないけど、世間が言うところのポップ・ソングの演奏にはなってないというか。そこに課題を感じるというか、歯痒さをおぼえるところが実はあって。メロディだけ聴けばポップでも、TVの歌番組とかそういうのが似合うようなポップさとは違うわけで。だから、ミュージックステーションとかから出演依頼が来たらどうするんだろうな、と思う(笑)。
▲<REUNION 10th ANNIVERSARY -薔薇色の激情-> 2017年4月22日(土)@豊洲PIT |
Tetsu:まあポップ観とかそういうものの解釈というのは十人十色だろうけど、俺が思うポップというのは、自分にはできないものという感覚かな。どうしてもできない。トライする意味でポップな演奏に挑んでみることもあるんだけど、それをやると逆に手を抜いてるように思われてしまったりとかね。そういうところについて、“それは自分が確立されてるってことだ”とか他人様は言ってくれるけども、やっぱりそこで、ないものねだりをしたくなる自分もいてね。みんなそういう部分は抱えてるんじゃないかな、プレイヤーとして。狙いたいところがあっても結局それができない、というのはずっとついて回るものでね。
──そんな葛藤めいたものを感じていたとは思いもしませんでした。ロック・バンドがポップ・ソングをやろうとする時、逆に妙に気負ってしまうことがあると思うんですよ。だけどD’ERLANGERには、それをまったく感じさせられないんです。
Tetsu:そこはまあ、ベテランですからね(笑)。
──失礼しました(笑)。こうして新しい作品がひとつ生まれたことによって、次に進むべきところが見えてくるというのもあると思うんです。この先何年かが見えてきた、というようなところもあるんじゃないですか?
Tetsu:うーん。それはどうかな。ワーナー(ミュージック・ジャパン)さんに移籍してきてから、どういうわけか2年に1枚のペースでアルバムを出してきて、今回で3枚目になるわけじゃないですか。なんかその周期が決まりごとみたいになっているような気がして、それはちょっと嫌だなという気持ちもあるんだけど。こうして時代も変わってきてるなか、あくまで他の人がやらないようなことをやりたいと思っていて、それが具体的にどういうことなのかは今はわからないんだけども……実は今、いくつかこの先に向けて仕込んでることがあって、そのなかには過去に自分たちがやったことのないこともあって。そんなことが実現できたりすると、また新たな刺激が得られたりもするだろうし。もちろん“完全に誰もやっていないこと”なんてごくわずかだろうけども、それでも誰かと同じようではありたくないし、そうやって新たな刺激を受け続けていくことで、それまでの自分たちとは違うことができるはずだって信じてるからね。だから、このアルバムによってこの先何年かが見えたというより、2018年の4月22日(=アニヴァーサリー・イヤーの終着点)まで、止まらずに行くってことがまずは先決で。おかげさまでこの夏にも面白そうなことが決まりつつあるし、秋のツアーを迎える前に9月頃にはこんなことをしてみようかとか、着々と話を進めつつあるからね。4月22日の豊洲PITでのライヴが終わって、その翌日くらいはその余韻を噛みしめるような時間もあったけども、やっぱりすぐに次のことを考えていかなくちゃいけない。だから、ひとつひとつのことについてじっくりと深く考える時間がないんですよ。だけどまあそれも贅沢な悩みであって、自分にはこういうやり方がいちばん合ってるように思うんで。
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