【インタビュー】千聖、過去と未来を繋ぐソロデビュー20周年ベスト
PENICILLINの千聖がソロデビュー20周年を記念したベスト盤『千聖〜CHISATO〜 20th ANNIVERSARY BEST ALUBUM「Can you Rock?!」』を6月7日にリリースした。
◆千聖 インタビュー画像
そのヒストリーを振り返ると千聖がソロデビューを果たしたのは1996年の9月。その半年前にはPENICILLINがデビューを飾っている。自身のバンドがデビューしたばかりという異例のタイミング。HAKUEIもソロデビューしたため、「解散か?」と噂される中、PENICILLINは1998年に「ロマンス」という大ヒット曲を放つ。当時の謎を解き明かしつつ、千聖とCrack6の違いやリクエスト制にしてすべての曲を新たにレコーディングし直したこだわりのベストアルバムについて、その思い入れをたっぷり語ってもらったロングインタビューをお届けする。
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■ここで自分のミュージシャンとしての運命が変わっている
──約20年の時を経て当時の楽曲を再録、書き下ろしの新曲も収録したベストアルバム『千聖〜CHISATO〜 20th ANNIVERSARY BEST ALBUM「Can you Rock?!」』がリリースされますが、千聖さんの中にこの頃の曲をいつかヴァージョンアップさせたいという想いはあったのですか?
千聖:当初は「絶対出したい」っていう感じより、「あれから、もう20年経つのか? あの当時の半端ないエネルギーが凝縮した作品をもう一度見つめ直してみようかな?」って思ってたんですよね。でも、せっかくベスト盤を発売するなら全曲、録り直したいと考えてもいました。当時の音源のまま収録して今との違いを感じるのもありだけど、自分の場合ほとんど歌ったことがない変わった状態でソロデビューをしたので、歌もスタイルも模索しながら作った1stアルバム(『ORGANIC GROOVER』)は今と全く歌が違うんですよね(笑)。当時の音楽を今の自分の温度感でやってみたらどうなるんだろう? っていう興味はありました。
──千聖さんは1996年の9月にシングル「DANCE WITH THE WILD THINGS」でソロデビュー。それまではギタリストで、歌った経験がないのにヴォーカルをとって、ライヴとなるとフロントに立つわけですよね。その勇気ってスゴイなと思うんですが。
千聖:確かに勇気いりますよね(笑)。しかもPENICILLINがデビューしたのが同じ年の3月ですからね。当時、徳間ジャパンの制作本部長が「千聖くんをソロデビューさせたい」って熱くおっしゃられて「それはありがたいことだし、何かできたらいいですね」っていうところから始まったんですよ。いきなり「歌もうたってください」って言われたら断っていたかもしれない。
──じゃあ、当初はギターアルバムの可能性もあったんですか?
千聖:インストかもしれないし、別のヴォーカリストを迎えるのかとか、はっきり決まってなかったんですよ。ただその部長さんのロジックがはっきりしていたので「一緒にやったら面白い作品ができそうだな」と思ってOKしたんです。そうこうしている内に会議で「千聖さんに歌っていただくことになった」って言われて「えーっ!?」って(笑)。サウンドプロデューサーはPENICILLINのプロデューサーSHIGEさん(SHIGE ROCKS/Crack6のギター&プロデューサー)にお願いしたんですけどSHIGEさんに「で、誰が歌うの?」って聞かれて「俺」って答えたら、やっぱり「えーっ!?」って(笑)。でも、その時は失敗したらどうしよう…とか考えたこともなくてね、まぁ万が一したとしても結果クリエイティブな何かが生まれればいいかなって。
──最初はイチかバチかみたいなところがあったんですね。
千聖:うん。イチかバチかで恥かいてもいいんじゃない?って、最終的に面白かったって思えれば良いや!ってね。好奇心の方が勝っちゃったんでしょうね。まさに若さと勢いですよ(笑)。だから、その更に先のライヴのことなんか考える余裕なんか全くなかったです(笑)。で、最初はわけがわからないから、ポップでキャッチーな方がメジャー市場だから良いかな?って勝手に考えて、そういった感じの曲を何曲も作って持って行ったんですが、全部ボツ出されて…「これ結構ロックな感じだけど、まぁいいか!」って最後に書いてた曲が唯一OKが出まして、それがのちの「DANCE WITH THE WILD THINGS」になったんですね。
千聖:歌ってないですね。ここで自分のミュージシャンとしての運命が変わっているので。たぶん、ソロを出す話がなかったら、ギターに専念していたと思うんですよ。もしかしたらその後、作曲等するとき歌の表現とかをよく考えない人になる可能性もありますから、変な壁にぶち当たっちゃってたかもしれないですね。
──千聖さんのソロプロジェクト、Crack6も誕生していなかった?
千聖:ないです、ないです。結果やっていたとしても相当、出遅れたと思うんですよね(笑)。後にこういうことは早く経験しておいたほうがいいんだなと思いましたもん。ラッキーだったし、みなさんに感謝ですね。当時は絶賛活動中のバンドのメンバーがソロ作品を出すなんてありえない時代というか、出すとしても解散後や休止中だったので、インタビューでものっけから「PENICILLINでデビューしたばかりなのになぜソロなんですか?」って聞かれてましたね。
──今だったらネットで炎上でしょうね(笑)。
千聖:あの頃も「PENICILLIN解散するんじゃないか」とか、もしくは「解散した」って過去形で書かれたりしてました(笑)。それと自分がハードロック、ヘヴィメタルが好きなのはある程度知られていたので、ソロを出すならそういうジャンルだろうと思われていたんですね。「DANCE WITH THE WILD THINGS」は今でいうデジロックで打ち込みと自分のギターが絡む曲だったので、「こういうのやりたかったんですか?」って突っ込まれて「このコラボレーション面白くない? ロックバンドのソロならアリなんじゃない?」って答えてました。「俺はいろんなことやりたいし、その一部だよ」って。自分で言っちゃいますけど、あの時代にはデジロックなんて言葉無かったけど、非常に革命的な音楽だなと思っていました。
──ある意味、実験的なことをしたわけですね。
千聖:そう、そう。当時のサウンドプロデューサーの1人のT2yaくんが僕の原曲のドラムとベースのパートを分解して打ち込みを何十トラックも入れたデジロックサウンドにしたんですけど、「こんな感じに千聖くんの曲をいじってみました」って言われて「何だこりゃ! 音の洪水だ!?」と思うと同時に「面白いな」って。当時はロックっぽくないとか、いろいろ言われましたけどね。
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