【ロングインタビュー】Linked Horizonが見てきた『進撃』の世界…新作『進撃の軌跡』10000字調査報告

■その先の物語に思いを馳せて聴き終わってほしい

──そして『Season 2』のOP主題歌「心臓を捧げよ！」ですが、このアルバムで初めてフルサイズが収録されますね。

Revo：最新の主題歌なので、自ずとすべての要素を踏まえた曲になるんですよね。今までのさまざまな要素を踏まえた作りにはなっていますし、聴いてくださるみなさんも、当然今までの主題歌を踏まえて聴いてくれると思うんです。さらにアルバムという意味では、この曲がフィナーレのような位置にあり、その先の物語に思いを馳せて聴き終わってほしい……そういう思いも込めて制作しました。表紙を眺めてから1曲ずつ歌詞をたどり、そして最後のページにたどり着き、裏表紙に至る。そこに描かれたものを眺めながら、どんなことを思うのか。アルバム1枚を聴き終えたあと、聴く前と後で心にどんな変化が起きているのか。もし良かったら、考えてもらえると嬉しいかもしれないね。

──「心臓を捧げよ！」は主題歌としてのパワーを持ちながらも、そういう意味合いを注ぎ込むということで、フルサイズは途轍もなく情報量の多い1曲で。

Revo：実はこの曲からアルバムがはじまる、という案もあったんですよ。そうしていたら、作品の作りはまったく別の構造になっていたでしょうね。それはそれで面白いんですよ。でも、きっと突き詰めれば、何度やり直しても現在の形に落ち着くはずです。僕を主人公に選んだ瞬間に、こうなることはもう決まっていた人生なんだろうな（笑）。僕の人生そのものだって、きっと何度やり直しても音楽に至ると思うもん。でも、もし「やり直せる」とわかっていたら「今回は別の人生を歩んでみようかな？」と考えるかもしれないけど……でも、100%とは言い切れないか。全然ダメだと思ってやってこなかったけど、「ラグビーやってみたら実は才能が爆発！」という人生だって可能性はゼロではないもんね。個性的なルーティーン編み出してたかもしれないし（一同笑）。まあ、まったく想像つかないけど（笑）。

──（笑）。新曲のお話を全曲聞かせていただいたところで、どの楽曲か詳細にはあえて言いませんが、このアルバムのあの楽曲に、リヴァイ（CV：神谷浩史）のセリフが入っていますが、お聴きになられていかがでしたか？

Revo：「本物の兵長だ」という感想以外にないんですけど（笑）、何パターンか録らせていただいたんです。このセリフって基本的に独り言なんですけど、独り言にもパターンがある。ディレクションをした僕の解釈もあるし、神谷さんの解釈もある。そして聴く人の解釈もあるとは思うんですけど、僕はこの独り言を「聴いている人に届けたい」と思った。ただの独り言になってしまうのは、寂しいなって。でも「伝えよう！」という思いが出過ぎるとくどくなる。その芝居のバランスで一番良い塩梅のものを、作品には収録させてもらいました。

──このテンション感、絶妙ですよね。

Revo：そう、絶妙なんですよ。さすがですよね。

──あと、やはり初回限定盤は特別な仕様で……。

▲『進撃の軌跡』初回限定盤

Revo：そうですね。色々な遊び心が入れられたので、進撃ファンの方には是非おすすめです。世界観がより楽しめることでしょう。もちろん、通常盤も充分濃い内容のものにはしたつもりです。このアルバム、僕の中ではとても分かりやすい作りだと思います。少しだけ理解するのに苦労する部分もあるかもしれないけど、すべてちゃんと意味のあるものを、意図を持って収録しているので、しっかりと聴いていただければ腑に落ちると思います。パッケージまで含めて、すべてにおいてね。そういえば、曲の中では極力登場人物の名前は出さないようにしているのですが、描かれている状況や口調などから、誰のことを描いているのかは必ず伝わると思います。そこは今回、良かった点だと思っていますね。僕ってわかりやすくしようと思うと、クドイようなことをやり過ぎちゃうタイプだから（笑）。

──やはりシンガーのみなさんには、歌詞で名前を言わずともキャラクターが伝わるようにとディレクションを？

Revo：相当やりましたよ。「彼女は冷たい棺の中で」とかは特に、普段の歌い方とは全然違うことをこの曲のためにやってもらっていますからね。

──そして7月からは日本全国を巡り国外へも飛び出すライブ・ツアーが開催されますが、かつてない規模感ですね。

Revo：これからリハーサルを……という感じでまだまだこれからなのですが、今はステージのイメージの叩き台を作って、ブラッシュアップをしているところなので、だんだんと見えてきたところですね。あとは具体的にどうしていくのか、ですね。振り付けなんかもありますから。まだまだ気が抜けないですね。気を抜いてしまうと、すぐにタイムリミットが来てしまうので。

──アルバム制作をしながら、ステージの構想も考えて？

Revo：そうですね。ただSHほど厳密なものではなくて、LHはもう少し縛りが緩い方がいいだろうと思っていて。突き詰めるとどんどんとミュージカルのようなものになっていきますが、そうすると立体機動装置なんかも求められてしまう。先日、舞台『ライブ・インパクト 進撃の巨人』の準備中に悲しい事故が起きてしまいましたが、ああいうものをリアルで表現しようというのは、やはり危険を伴うものなんだと。しかしできる限り楽曲の世界観は表現したいと思っています。勿論、普通のJ-POPのコンサートとは違うものにはなります。分かりやすくいうなれば、SHとJ-POPコンサートの中間に位置するような、そんなイメージかもしれませんね。『進撃の軌跡』の世界観とそれぞれの楽曲を気に入っていただけたら、きっと楽しんでもらえるツアーになると思います。いろいろな環境で音楽が楽しめる時代ですけど、生の音楽でなければ宿らないものが絶対にあるんですよ。心に訴えかける何かがあり、僕たちはそれを信じてライブ・ツアーをやるんです。その場で体感しなければ伝わらない何か、それは必ずある。その“何か”は言葉にするのがすごく難しいだけど、もし言葉にできてしまったら、ライブやコンサートをやる必要がないもんね（笑）。ライブやコンサートって、ステージ上にいる僕たちだけを観て何かを感じてもらうのではなくて、自分と隣り合ったお客さんたちと一緒になって一喜一憂することも、重要な要素なんです。『進撃の巨人』とLHがリンクすることで生まれる、生の世界観とその音楽を、ぜひ楽しみにしていてほしいですね。

取材・文◎冨田明宏