【魅力を探る】ジョン・メイヤーがこんなに凄い、4つの理由

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2001年にメジャーデビュー、以降その流麗なギター・テクニックで米メディアにおいてはジョン・フルシアンテ、デレク・トラックスと共に「現代の三大ギタリスト」と呼ばれ、またソングライターやボーカリストとしても数多くの心の残る名曲を生み出している、ジョン・メイヤー。シングル「スティル・フィール・ライク・ユア・マン」等全12曲を収録した、約3年半ぶりとなるオリジナル・アルバム『ザ・サーチ・フォー・エヴリシング』を完成させたばかりの彼のこれまでの軌跡、そして紡ぐ音楽の魅力を探ってみたい。


◆ジョン・メイヤーってどんなミュージシャン?

1977年米・コネチカット州生まれ。スティーヴィー・レイ・ヴォーンに感銘を受けブルーズを志し、19歳で名門バークレー音楽院に入学するも、数ヶ月で通うのをやめ、1999年に自主制作盤『ルーム・フォー・スクエア』をリリース。すると世界で400万枚以上のセールスを記録しブレイク、2001年にアルバム『インサイド・ウォンツ・アウト』でメジャー進出を果たす。アルバムは全米チャートトップ10入りし、翌年のグラミー賞にて最優秀男性ポップ・ボーカルを獲得。さらに2003年にリリースしたアルバム『ヘヴィアー・シングス』が全米チャート1位を獲得。収録曲の「ドーターズ」はグラミー主要4部門のうちのひとつである最優秀楽曲賞に加え、最優秀男性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞にも輝き、世界を代表する実力派シンガーソングライターとなる。また、その甘いルックスからプライベートもたびたび注目され、パパラッチに追われることも。

その後もリリースした作品は軒並みヒット。これまで、グラミーで7つの最優秀賞を獲得し、全米チャートでも3作品が1位にランクイン。全世界でのアルバムのトータル・セールスは2000万枚以上を誇るなど、その人気は揺るぎないものとなっている。ちなみに高校生の頃に留学していたことをきっかけに、大の親日家となり、プライベートで何度も来日。来日公演の際には、日本語でMCを披露している。


◆ジョン・メイヤー音楽のここがすごい! その1:ギター編

デビューして15年以上、常に多くの人々の心を惹きつけてやまない、ジョン・メイヤーの音楽。なかでも注目されているのが、ギターの実力である。幼い頃から、多様なギタリストが奏でるブルーズでファンク、そしてロックなグルーヴを耳にし、それをエレクトリックやアコースティックなどのギターで表現してきたジョン。ちなみにバークリー音楽院在籍時には、日本人ギタリストに師事し、その腕を磨いていたのだという。ゆえに、彼の奏でるギターはとても情緒豊か。楽曲ごとに、時にエキサイティングに、時にセンチメンタルに、ボーカルが存在していなくても、楽曲でどういう思いや風景を伝えたいのかが、超絶的なテクニックとともに伝わってくるのだ。そこが「現代の三大ギタリスト」と呼ばれる所以なのだと思う。


◆ジョン・メイヤー音楽のここがすごい! その2:ソングライティング編

彼の音楽はギター以外に、ソングライティングやボーカルにおいても、それに劣らない魅力を放つ。作る楽曲に関しては、自身の恋愛経験を想像させる私的なものから、社会情勢に思いを巡らせたメッセージ性のあるものまで、扱うトピックはさまざま。だが、例えば当時の世相に憂いを感じながらも、社会がより良い方向に進んでくれることを祈る思いを、普遍的かつ文学性の高い歌詞と、美しくキャッチーなメロディーを用いて表現している、2006年に発表したアルバム『コンティニュアム』に収録の「ウェイティング・オン・ザ・ワールド・トゥ・チェンジ」など、どの曲にも時間によって色あせることのない言葉や旋律が溢れていて、胸に深く残るのだ。


◆ジョン・メイヤー音楽のここがすごい! その3:ボーカル編

ボーカルに関しても、表現力に定評のあるジョン。時には骨太で力強いメッセージを発信したり、時には甘くセクシーな雰囲気を醸し出したりするなど、曲のタイプごとにニュアンスを変えながらも、聴き手の心に寄り添う声を響かせているのだ。特に、2009年にリリースしたアルバム『バトル・スタディーズ』に収録されている「フー・セイズ」。この曲は、ニューヨークで生活を送っている主人公(おそらくジョン本人)が、失恋をして相手のことを忘れようとする姿を描いたシンプルな弾き語りナンバーであるが、そのハスキーでソフトな声を聴いていると、こちらも日常のさまざまなことを乗り越えて、次の日へとまた一歩前進できそうな気分になれるのだ。


そんなジョンのボーカルは、2012年に声帯の手術をし活動休止を経験したことをきっかけに、新たな魅力が生まれたように思う。それまでは、時には感情をストレートにぶつけているようなものもあったが、手術後である2013年にリリースされたアルバム『パラダイス・バレー』では、収録曲の「ぺーパー・ドール」を筆頭に、穏やかに人生を見つめているというか。たとえどんなことが起こっても、人生の苦難を乗り越えてきた自分は、もう何かに惑わされることなく、音楽の道を進んでいくという、強くておおらかな視線を声を通じて感じることができた。


◆ジョン・メイヤー音楽のここがすごい! その4:インスパイア編

超絶的なギター、時代に色あせないソングライティング・センス、そして人々を包み込むようなボーカルで、世界を魅了しているジョン・メイヤー。今では、その音楽スタイルは他のミュージシャンに影響を与えている。

特に、ジョンからの強い影響を語っているのが、カナダ出身のシンガーソングライターであるショーン・メンデスだ。「彼の音楽は楽しいし、まるで詩のようでもある。また、人間的にも素晴らしいし、本当に刺激を受けているんだ。だから、彼からいただいたギターは常に手放せないし、また曲作りにも大きな影響を与えているのは、確かだね」と公言するほどで、実際ショーンの最新アルバムの冒頭に収録されている「ルーイン」のイントロは、ジョンのギター・フレーズからインスパイアされて作ったものだという。ちなみに、ショーンとは17年4月におこなわれたカナダ・トロントでのショーで共演している。


他にもロックやブルーズ、さらにはR&Bなど、さまざまなミュージシャンからリスペクトされているジョン。テイラー・スウィフトやケイティ・ペリーなど、現代のポップ・アイコンとも共演を果たし、彼女たちに新たな音楽世界をもたらしている。


◆最新アルバム、ここが聴きどころ!

前作『パラダイス・バレー』からおよそ3年半ぶりに届けられた、通算7作目となるアルバム『ザ・サーチ・フォー・エヴリシング』。先行リリースされた2枚のEP『ザ・サーチ・フォー・エヴリシングー・ウェイヴ・ワン』と『ザ・サーチ・フォー・エヴリシング - ウェイヴ・トゥー』収録曲を含む、全12曲の構成である。共同プロデューサーには『コンティニュアム』や『バトル・スタディーズ』でサウンド・エンジニアとして参加していたチャド・フランスコービアックを起用し、「ジョン・メイヤー・トリオ」でコラボしているスティーヴ・ジョーダン(Dr・本作のエグゼクティヴ・プロデューサーでもある)と、ピノ・バラディーノ(B)が全面参加。気心の知れたメンバーと作り上げている作品だ。

「これは、今まで僕がやってきた多様な音楽スタイルを集めたミックス・テープのようなアルバム」とジョンは語っているが、その通りで自身のルーツ的存在であるはずのブルーズからソウル、ポップスまで、さまざまな音楽を、彼の「尽きることのない探究心(ザ・サーチ・フォー・エヴリシング)」というフィルターを通して表現しているような1枚になっている気がする。

特に印象的なのが、先行EPにも収録されていてアルバムの冒頭を飾る「スティル・フィール・ライク・ユア・マン」だ。彼の音楽に欠かせない存在であるはずのギターではなく、ジャジーなピアノの音色から始まるナンバー。ファルセットを効かせたボーカルも、これまでにはない艶やかさが漂っていて新鮮だ。これは、最近のケンドリック・ラマーやチャンス・ザ・ラッパーなどの登場によって注目を受けるオーガニックなソウル・サウンドを、彼なりに解釈し完成させた楽曲のような気がした。また、日本の道場をイメージさせるセットの中でパンダの着ぐるみと一緒にダンスするミュージック・ビデオも、普段あまり見かける機会の少ないジョンのユーモラスで気さくなキャラクターが伺えて面白い(しかし、楽曲の内容は過去の恋愛を引きずり続ける未練タラタラの男なのだが)。


その他にも、こちらもソウルフルでアーバンな魅力に溢れる「ムーヴィング・オン・アンド・ゲッティング・オーヴァー」といった、新たな魅力を響かせるものもあれば、ビーチ・ボーイズのアル・ジャーディンと息子のマット・ジャーディンが(たまたま同じスタジオで出会ったことをきっかけに)参加したというセンチメンタルなアコースティック・チューン「エモジ・オブ・ア・ウェイヴ」、シェリル・クロウと共演したカントリー・テイストの「イン・ザ・ブラッド」、さらにタイトル・トラックでもあるインスト「テーマ・フロム “ザ・サーチ・フォー・エヴリシング”」など、ギターを駆使した「ザ・ジョン・メイヤー・サウンド」を堪能できる楽曲も多数収録。彼の音楽家としてのこれまでと、これからをうまくミックスさせた仕上がりになっていると思う。と同時に、彼の「尽きることのない探究心」が、我々に贅沢な音楽時間をもたらしてくれることにも気づくだろう。



テキスト:松永尚久


ジョン・メイヤー『ザ・サーチ・フォー・エヴリシング|The Search For Everything』

国内盤4月26日(水)発売
SICP-5193 \2400+税
1.スティル・フィール・ライク・ユア・マン
2.エモジ・オブ・ア・ウェイヴ
3.ヘルプレス
4.ラヴ・オン・ザ・ウィークエンド
5.イン・ザ・ブラッド
6.チェンジング
7.テーマ・フロム “ザ・サーチ・フォー・エヴリシング”
8.ムーヴィング・オン・アンド・ゲッティング・オーヴァー
9.ネヴァー・オン・ザ・デイ・ユー・リーヴ
10.ロージー
11.ロール・イット・オン・ホーム
12.ユーアー・ゴナ・リヴ・フォーエヴァー・イン・ミー
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