【インタビュー】長澤知之、34曲収録アンソロジー完成「怒りも悲しみも肯定的に持っていけるエネルギーに」
■ジャケットはいい意味で
■怨念深い場所なんです(笑)
──10年の間にターニングポイントになる出来事はありましたか? 『神の手』という彫刻に出会ったこともそうだと思うんですけど。
長澤:“3.11 (東日本大震災)”はけっこう大きかったです。自粛という状況になったとき、いろいろ考えましたね。音楽をやることが不謹慎とされることは理解に苦しみました。僕は音楽に救いを求める人間なんで、そういう状況だからこそって考えたんですけど。その年の4月6日に『JUNKLIFE』って自分の1stフルアルバムが出る予定だったんですよ。友人のバンドを含め、周りがいろいろなことを延期していく中で、延期せずにリリースしたんですけど、いろいろ考えましたね。
──考えた結果、何か答えは出ましたか?
長澤:日本人は表現することに対して、異常なほど道徳を持ち出すんだなって思いました。“死ね!”って言葉にも通じると思うんですけど、たとえば、その人のことを尊重していることは変わらないとしても、表現のしかたとして、“おまえのことをクソ愛している”と言われるよりも、“あなたのことが大好きです”って優しく言われるほうがいいとされると言うか、情熱的だったり、トゲがあったりする表現は好まれない。そういう意味で、言葉の使い方が几帳面なところが不自由だなと思いました。だから言葉の使い方をいろいろ考えるようになってしまいましたね。ターニングポイントと言うか、すごく厄介な枷に感じるようになってしまって、それまではいろいろ言えたんですけど、それを考えるようになってしまったことが自分の中で負だったりしますね。そういうことをなるべく考えないようにしようってことが、すでに考えていることなんで。そういうモヤモヤを“3.11”以降、感じるようになって、いまだに考えちゃいますね。でも、多くの人がそういうことを考えたんじゃないですか。
──じゃあ、歌詞の書き方を含め、「3.11」以降、曲の作り方も変わった?
長澤:歌詞を書く時の衝動は変わらないんだけど、それを発表するとき、“ここはひょっとしたら”と不安が過るようになりました。書き方というよりは表現の仕方ですよね。自分の部屋で収まっていたら、それはいいんですけど、それを人に対して表現する時ですよね。ただ、曲作りそのものは変わっていないと思います。
──ジャケットに映っているのは、長澤さんの部屋だそうですね。
長澤:福岡の実家にある僕の部屋なんですけど、そこに何年間かひきこもっていて、その時に、怒りを込めながら曲を書いたり、希望を持って曲を書いたりしていたことを考えると、僕にとって怨念深い場所なんです(笑)。
──怨念ですか?
長澤:いい意味でね。福岡ってけっこうマッチョな世界なんで、音楽をやっていることがけっこうナヨいと思われるんですよ。昔から、めんたいロックって言われるけど、やっている音楽ってマッチョなものばかりじゃないですか。フォークなんてやっているとナヨいと思われるところがあって、自分がやっていることが歓迎されていないような気もしたし、僕は市内の中で一番底辺の高校に行ったから、そういうところでも負け組みたいな気がしていて。劣等感が人一倍強くて、被害妄想が膨らんでいただけかもしれないんですけど、音楽をやっていることに喜びがあって、なにくそって思いながら曲を作っていたっていう怨念と言うか、いい思い出があるんですよ。それが報われるようにという思いもあって、パシャッと撮ったものをスタッフからデザイナーさんに渡してもらったら、“これいいじゃないですか”ってなったんです。実家がもうすぐ取り壊しになるんですよ。だから、なくなる前にという気持ちもありました。
──「R.I.P.」「蜘蛛の糸」という新曲についても聞かせてください。『Archives #1』に加えるとき、どんなことをアピールしたいと考えて、この2曲を選んだんでしょうか?
長澤:その2曲がその時、好きだったから入れさせてもらっただけですよ。
──「蜘蛛の糸」は、1月21日のライヴでも弾き語りでやっていましたけど、たぶん自分の部屋でベッドに寝転がって、なんとなく天井を見ていたら、蜘蛛がいてというところから発想が生まれた曲じゃないかと思うんですけど、そこから思考が宇宙に広がる壮大さがいいですね。
長澤:ありがとうございます。僕もそういうところが好きです。
──そしてもう1曲の「R.I.P.」は、長澤さんの身の上に何があったのかな、と想像しながら聴いたら楽しい曲ですね(笑)?
長澤:そうですね(笑)。
──やっぱり、元になる出来事があったわけですね。
長澤:ええ。でも、それは表現の自由の世界に止めておいていただければ(笑)。
──こういう楽しい曲になるところが冒頭におっしゃっていた今のモードなわけですね?
長澤:でも、女性賛美でもあるんですよ(笑)。
──だけど、おまえは違う、と(笑)。リリース後には<Nagasawa Tomoyuki Band Tour‘Kumo No Ito’2017>と題して、3年ぶりにバンド編成でツアーを行いますが、新曲の「蜘蛛の糸」がツアータイトルになっています。
長澤:ああいう感覚が今のモードなんです。元々、ワンマンのツアーは<Nagasa・Oneman>ってタイトルで、毎年ずっとやってきてたんですけど、9年目にできなくて、10周年を祝ってもらって、11年目って時に<Nagasa・Oneman9>っておかしいってことになって、じゃあ最新の曲の、一番自分のモードに合うタイトルにしようってことで、そのタイトルにしました。
──バンド編成は約3年ぶりだから楽しみなんじゃないですか?
長澤:もちろん楽しみなんですけど、松江潤さん(G)、須藤俊明さん(B)、秋山タカヒコさん(Dr)って、今回のメンバーは、僕がデビューして間もない頃、一緒に回ってくれた人達なので、すごくうれしい反面、すごく緊張してしまうところもありますね。いつかまたやりたいとずっと思っていたんですけど、なかなかできなかったんですよ。それで、この機会にと思い、誘わせていただいたんです。6〜7年ぶりなんで、少しは不安定じゃないところも見せて、大人になったところも見てほしい(笑)。緊張してしまうっていうのは、そういう気負いがあるからなんでしょうね。
取材・文◎山口智男
撮影◎杉田 真
■ライブご招待<-10th Anniversary Anthology-
「Nagasawa Tomoyuki Band Tour 'Kumo No Ito' 2017」>
2017年4月18日(火)大阪府 BIGCAT
2017年4月20日(木)福岡県 DRUM Be-1
2017年4月24日(月)東京都 LIQUIDROOM
※全会場 開場18:00/開演19:00
【応募締切】
大阪公演:4月13日(木)23:59
福岡公演:4月15日(土)23:59
東京公演:4月19日(水)23:59
【注意事項】
※大阪公演、福岡公演、東京公演の中から1公演をお選びください(※応募フォームの「ご意見・ご感想欄」に明記ください)。
※当選者には各公演の3日前までにメールをお送りいたします。
※ライブ会場には、当選メールとご氏名が明記されている身分証をご持参頂き、関係者受付にお越しください。チケット実券は発行いたしません。
※会場までの交通費・宿泊費等は当選者様にご負担いただきます。
◆ライブご招待応募ページへ
■アンソロジーアルバム『Archives #1』
POCS-1552/3 ¥3,056+税
[DISC 1]
01. あんまり素敵じゃない世界
02. フラッシュバック瞬き
03. 夢先案内人
04. バベル
05. センチメンタルフリーク
06. スーパーマーケット・ブルース
07. STOP THE MUSIC
08. バニラ(2014 Acoustic)
09. MEDAMAYAKI
10. 誰より愛を込めて
11. 消防車
12. R.I.P.(新曲)
13. マンドラゴラの花
14. 犬の瞳
15. 享楽列車(2014 Live)
16. 三年間
17. 蜘蛛の糸(新曲)
[DISC 2]
01. P.S.S.O.S.
02. THE ROLE
03. JUNKLIFE
04. 狼青年
05. 片思い
06. 零
07. RED
08. ねぇ、アリス
09. 風を待つカーテン(2007 Demo)
10. EXISTAR
11. スリーフィンガー
12. 茜ヶ空
13. 明日のラストナイト
14. はぐれ雲けもの道ひとり旅
15. 回送
16. ベテルギウス
17. 僕らの輝き
◆長澤知之 オフィシャルサイト
◆長澤知之 オフィシャルfacebook
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