【インタビュー】GACKTがここまで輝くのは何故か?GACKTがGACKTたるゆえんを紐解く

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■本来の音楽のありようってのは
■人前で演奏する/人に聴かせる/感動させる…これが基軸

──GACKTはアーティストですが、そんな現代社会においてミュージシャン志望の若者たちは何を頑張っていけばいいですか?

GACKT:“自分がどういうミュージシャンであるか”を知るべきじゃないかな。この前も、あるバンドで「メンバーがだらしなくて、時間を守らないから、あいつとやっていけない」ってリーダーが言ってたんだけど。「いやいやいや、そもそもミュージシャンを何だと思ってんだ?オマエは」と。ミュージシャンなんて、大半がそもそも社会生活に適合できないだらしない人たちの集まりで、“音楽をやったら、それがたまたま自分を表現できる唯一の場所だ”って演っている人たち。冷静に考えてみたら、音楽で成功できるなんてのは、ごくごく限りなく少ないパーセンテージで、かなり非現実的な活動なんだよ。

──統計上は、東京大学に入学するより狭き門ですからね。

GACKT:そういうところで生きることを選んだ、非常に稀有な人たちなわけで。その人たちに時間を守れだの約束守れだの、しっかり仕事しろなど、そこを求めていること自体がそもそも間違いだって話。ミュージシャンの本質をわかってない。ミュージシャンってのは、そういう人種であるにもかかわらず、ステージに上がったときに限りなく光を発するから凄いわけで。ある意味でアスペルガー症候群の人たちと非常に近いところにもあるかもしれない。だからミュージシャン同士で交流した時も、コミュニケーション力が異常に低い…いわゆるコミュ障の人たちも非常に多い。だからこそミュージシャンをやっている。「自分を表現する」というか「自分の生き場所はそこにしかない」という人たち。その人たちが、自分はそっちの部類なのか、それともその難しい世界でビジネスとして考えられる人間なのかどうか、まずこれがどっちなのか?ってことさ。

──ミュージシャンにも2種類ありますね。自分を使って音楽を放する音楽家タイプと、音楽を使って自分を発するアーティストタイプと。

GACKT:音楽しかないというのであれば、まず自分たちがどんな音楽ができるのかを突き詰めてやるしかない。その音楽を突き詰めて、クオリティの高いものにしていくということ。今の時代、CDなんか売れないし、配信なら売れるのかといえばそれもない。でもこれが本来の音楽家のありよう。あるべき姿に戻った。ショパンにしろドビュッシーにしろ、パトロンがいないとやっていけなかった。音楽で飛び抜けたものを生み出すしかパトロンを手にする方法はない。自分たちはその域にいるのか?って話。CDがたくさん売れていた時代でも、売れない人は売れない。


──本質だなあ。

GACKT:CDを売りまくるって時代が特殊だっただけ。CDやレコードを売るというのは、生産性の時代に入った一時期の話であって、長い音楽の歴史から見ればごく短い期間。むしろ今、あるべき姿に戻っていて、本来の音楽のありようってのは、人前で演奏する/人に聴かせる/感動させる…これが基軸。だったら「いい音楽作ってライブやれよ」って。

──江戸時代のミュージシャンもそうでしたもんね。

GACKT:そう。歴史上ほとんどのミュージシャンは生活できてない。その現実を受け入れた上で「まだミュージシャンやりますか?」ってことさ。でも「自分には音楽しかない」っていうんだったらいいんじゃないの?自分で選んだ道なのだから。

──むしろ、本質的にミュージシャンとして生まれてきた人だけがふるいに残される時代になった気もします。

GACKT:だと思う。

──中世は宮廷がパトロンでしたが、レコードが発明されてからは国民がパトロンになった。今は国民が「パトロンやーめた」といい出したわけで、これからは音楽は国民の共有財産として国家がパトロンになるべきとも思うけど。

GACKT:ほんとは音楽そのものを大切な文化だとするなら国が保護するべき。

──スポーツ選手のように、企業がミュージシャンをサポートして欲しいなあ。競技じゃないので評価が難しんですが。

GACKT:ボクもその考え方はある意味正しいと思っている。今の日本では、企業というパトロンをつける方法しかない。なんでこんなことになってしまったのか…、原因は明確。

──教えてください。

GACKT:例えば、歴史上何度もバンドブームって起こっているけど、そのときには自発的に自分たちの音楽をクリエイトして、その競争社会に飛び込んでいくミュージシャンが多かった。その渦にもまれ、自分たちの音楽を聞かせ他のバンドのファンを勝ち取っていく。そういう切磋琢磨がライブシーンで繰り返され淘汰され、最終的に残ってソリッドなミュージシャンになっていく。でもこれにはものすごく長い時間がかかる。

──その通りですね。

GACKT:CDを売るためにレコード会社が作られたけど、レコード会社はCDをたくさん生産するためにミュージシャンを育てなければいけなかった。でもミュージシャンを探して育つのを待つよりも、クリエイトできる人/宣伝できる人/ステージにあがるだけの人/歌えるだけの人という各役目が集まってプロジェクトを組んだほうが、本来5年かかるミュージシャン像がたった半年で作れる。どっちが生産性が高いかと言えば、もちろんこっち。あくまで生産性だけの話なんだけど、この生産性だけを取り出して、いわゆるプロデューサーがいろんな歌手を生産して、それでレコード会社は莫大な利益を上げた。

──ええ。

GACKT:淘汰されていくべき構造を無視して、いわばピラミッドの頂点部分だけを作った。これによって何が起きたか?本来広い底辺の部分…淘汰される前の競争に入ってくる人たち、ここが音楽を聴く層にもなるわけで、ここを無くして上だけを作るから、ピラミッド自体が縮小してしまって、音楽をやろうとする人たちも熱狂的に音楽を聴く人たちもドンドンいなくなってしまった。結果、マーケット自体が縮小してしまう。このことはその当時のレコード会社の連中はみんなわかってる。

──本当にわかっているのかな。

GACKT:わかってる。でも、底辺を広げる作業よりも上を作ってヒットを乱造するほうが圧倒的に出世できるわけで。これって今の政治と似てるよ。20年かけてやる政策ではなく、当選するための政治宣伝しか今の政治家はできない。20年ずっと政治家でい続けるってのは難しい。任期が短すぎて、長期政策を打ち出すことなんてできない。


──高度成長時代は全ての事象に成長と伸びしろがあったから、夢があり消費の時代でもあった。だけど、エコの今は、いかに消費を抑え無駄をしないかに立脚しているから、“いかに頑張らないで生きていくか”が正義に見える。音楽の持つ意味も役目も随分と変わっていると思う。

GACKT:20年前、ボクが東京出てきたとき、バブルがはじけた直後だったけど東京はすごかった。初めて六本木行ったときに「こんな町があるんだ!」って心から感動した。行くだけですごい夢があったし、やばかった。自分がなりたいものがそこにあったし、欲しいものもそこにあった。だから自分は「とにかく頑張ろう」と思えた。ところが今、日本は規制規制でエネルギーがどんどんなくなっていった。平均年齢は上がり、お金を持ってる人たちはお金を使わない。街は全然元気がなく若い人たちはいないという悪循環が続いてる。そんな日本で「頑張れ、エネルギー感じろ」って無理さ。

──…。

GACKT:なぜボクが東南アジアに住んでいるかって、東南アジアにはすさまじいエネルギーがあるからさ。街に出ると生命エネルギーの量が圧倒的に全然違う。あのとき東京で感じたエネルギーが東南アジアにはいっぱいある。今ボクが日本のミュージシャンにアドバイスできることがあるとしたら「最低限まず英語を勉強しろ」って。2050年には7000万人を切ると言われている日本という縮小マーケットに固執して音楽をやり続けるのか?それとも本当に音楽を求めているエネルギーみなぎる人たちに音楽を届けていくのか?その意味は結果が全然違う。

──なるほど。

GACKT:日本から出たことのない人たちは、その現実を知らない。今の東南アジアってものすごく飢えてる。東南アジアをまわってるけど、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン…みんなエンタメに飢えている。すさまじい若い子たちがいて、平均年齢が26〜28歳という国がいっぱいある。ヨーロッパやアメリカとは比にならないくらい、その子たちはみんな音楽を求めてる。だったらそこに、自分たちのアイデンティティを固めた音楽を届けるトライをしてみればいい。日本語でしか歌えてなかったものを、彼らが理解できる英語に変えたり。下手かどうかはいい、トライするかどうかの話。そこのマーケットに飛び込んで行く方がよっぽど意味があるんじゃないの?自分たちの音楽が日本人だけに受け入れられるとか言ってる時点で、そもそも違う。

──なんか、希望が出てきました。

GACKT:ボクはもうこの歳になってしまったから、若い人たちにできることがあるとすれば、その架け橋を作ることだとも思ってる。日本人のクリエイティビティって、実際すごい高い。でも、海外でやるっていう勇気がない。大陸がつながってる連中は、他の国に行って演奏することに抵抗がないんだ。YouTubeに投稿するだけでいいじゃんっていう意見もある。でもさ、本来人間が一番感動するのは人間力なわけだから、実際その人を前にして、その人の歌を生で聴いた瞬間に「うわーっ」て思うわけで。だったら自分がそこに飛び込まなきゃどうやってマーケットを獲れんのか?ってこと。

──ミュージシャン/アーティストにとって、たくさんのヒントと希望が聞けた気がします。ありがとうございました。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也


今回、「罪の継承 ~ORIGINAL SIN~」のリリースを記念してGACKTさんサイン入りチェキを抽選で一名様にプレゼント。ご希望の方は◆プレゼントフォームより、必要事項を記入してご応募ください。なお当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。応募締め切りは4月30日(日)23:59まで。


ニューシングル「罪の継承 ~ORIGINAL SIN~」

2017年3月22日(水)発売
TVアニメ『TRICKSTER-江戸川乱歩「少年探偵団」より-』エンディング主題歌

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CD+DVD XQMQ-91001 ¥1,800+tax
■通常盤
CD only XQMQ-1010 ¥1,200+tax

【収録内容】
(CD)
1. 罪の継承 ~ORIGINAL SIN~
2. 罪の継承 ~ORIGINAL SIN~(Orchestra Ver)
3. 罪の継承 ~ORIGINAL SIN~(-Instrumental-)
(DVD)
罪の継承 ~ORIGINAL SIN~MUSIC CLIP

■タイアップ情報
TV アニメ『TRICKSTER(トリックスター)- 江戸川乱歩「少年探偵団」より -』
番組オフィシャルサイト http://trickster-project.com/anime/
番組公式 Twitter @trickster_anime

■配信情報
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/id1205843185?app=itunes
レコチョク:http://recochoku.jp/song/S1004250086/
ドワンゴ:https://pc.dwango.jp/portals/music/2147334

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