【インタビュー】メトロノーム、7年の時を経て完全復活を宣言したフル・アルバム『CONTINUE』
■「東京ロマンチカ」のBメロとかは気持ち良さを優先してしまいました(笑)
■メトロノームのシャラクとしては「東京ロマンチカ」の歌は新境地なんです
――シャラクさん、フクスケさんは自身の内面を曝け出すことに、ツラさを感じることはありませんか?
シャラク:ツラくはないです。僕の場合、本当に自分への怒りが原動力になっているので。理想の自分と実際の自分との違いだったり、お客さんがイメージする自分に対する違和感……それを書いているのが今回の「自分コンプレックス」ですけど、そういうものが常にテーマになっていて。しかも、自己批判しつつ、そこから脱却するためにこうします…みたいなことは書かない。僕は、そういう努力をする人間ではないので(笑)。そんな風に、あけすけに自分を出している感じです。
フクスケ:僕の場合は普通に考えていることが暗めなんですけど、基本的には明るく生きているんですよ。外向けに生きているというか。全く悪い意味じゃなくて、シャラクは生まれつき外面的にも内面的にも暗めに設定されているんです。だから、自分のことを歌詞に書くと、すごく説得力がある。僕は人に明るい印象を与えるので、歌詞を見て心配する人が多いんですよ(笑)。「フクスケ、大丈夫か?」「何かあったのか?」と(笑)。
――こうして話をしていても、周りの人がそう思うのは分かります(笑)。ただ、人というのは誰しもが内面に闇を抱えていますよね。
フクスケ:そう。僕の場合は、ちょっと闇が深めですけど(笑)。
――な、なるほど(笑)。でも、アッパーなサウンドと暗い歌詞のギャップもメトロノームの魅力になっています。では、続いてプレイに関する話をしましょう。それぞれ『CONTINUE』を録るにあたって、プレイ面や音作りなどでこだわったことは?
リウ:ベースに関しては自分で録っているので、本当に自分の大好きな音で録れているというのがあって。今回はもう一切妥協せずに音作りをして、イメージ通りの音が出せたことに満足しています。
――ゴリッとした質感でいながらきれいにロー・ミッドも出ていて、ベースの音はすごくカッコいいです。それに、「豆腐メンタル」だけ、ビンテージ感のあるファットな音で弾いているのも良いですね。
リウ:この曲は、さっき話が出ていた“ガレージ感”というのがあって、ベースもそこに寄せました。「豆腐メンタル」を、ああいう音で弾くのは、すごく気持ち良かったですね。プレイ的には、すごく丁寧にアレンジしていったので、どの曲のどのフレーズを聴いても意味があるものになっていて。そういう風に、しっかり考えて作れたのが良かったです。あとは、昔ほどではないけど、僕はスラップにこだわっていて。効果的なスラップの入れ方というのを常に考えていて、今回のアルバムでだいぶ完成形に近づけたんじゃないかなと思います。
――スラップで埋めるのではなくて、フレーズの合間や、“ここぞ!”というところで決めるアプローチがすごくクールです。それに、シンベを使っている曲があることからは、柔軟なスタンスもうかがえます。
リウ:メトロノームは、打ち込みを活かして、楽器陣が楽器を弾かないパートが結構あって。絶対に生で弾きたい…みたいな気持ちはなくて、打ち込みのほうがカッコ良ければ、それで良いと思っています。そういえば、マスタリングの時にエンジニアさんに、「こういう時、ライブではどうしてるの?」と聞かれて(笑)。「いや、こういう時こそパフォーマンスですよ」と応えたら驚いていました(笑)。
フクスケ:ウケてたね(笑)。ギターは、激しい曲はなるべく今っぽい音にしたいというのがあるけど、僕はダウン・チューニングは使いたくないんです。なので、レギュラー・チューニングで、できるだけ今どきの音や質感に近づけることを心がけました。
――リッチな質感のドライブ・トーンに仕上がっています。メトロノームはシーケンスを多用しているので、ギターの居場所を見つけるのが難しかったりしませんか。
フクスケ:難しいです。基本的に、打ち込みとギターはぶつかってしまうので。ただ、みんなもギターのことを考えて、できるだけ居場所を作るようにしてくれるから、隙間がなさそうで意外とあったりするんです。それに、僕はそこまで弾きたいタイプではないので。ヘタにギターが主張してゴチャゴチャした感じになってしまうなら、ギターはシンプルで良いか…みたいな。そういう人間なので、僕にとってはメトロノームのギターの役割は、ちょうど良いです。
――とはいえ、カッコいいリフが多いですし、クランチ・トーンでコード感を出しているコードワークや「暗いbaby」のカッティング、「東京ロマンチカ」の符点8分ディレイを使ったアプローチなど、ギターの聴きどころは多いです。
フクスケ:昔はもっとギターを弾かなかったけど、今回はいろいろやっています。休んでいる間にちょっとギターを弾こうという心になって、ちょっと練習したりして、今回の録りに挑んでしまったので(笑)。自分の中では、ちょっと弾き過ぎたかなという(笑)。僕は、人に言われないとギター・ソロも弾かないんですよ。
――そうなんですか? でも、「強くてNEW GAME」のテクニカルなソロを筆頭に、幅広さを出しているギター・ソロも楽しめます。
フクスケ:「強くてNEW GAME」は、がんばりました(笑)。細かいことを言うと、「強くてNEW GAME」のMVはタルボで弾いてるけど、実はタルボだとフレット数が足りなくて。レコーディングでは24フレット仕様のEVOというギターを使ったんですよ。だから、MVではちゃんと弾けていません(笑)。
シャラク:歌は、歌というよりも打ち込みとかと同じ音の一つみたいな歌い方をする曲があったり、逆に抒情的に歌う曲があったりして。あとは、他のバンドはあまりやらない、アホっぽい声というのがあって、それが自分の得意な歌い方でずっとやって来ているんです。そういういろんな歌い方を、出来るだけ満遍なく入れるようにしました。
――抒情的な歌というのは、「東京ロマンチカ」ですね。
シャラク:そう。ほとんどの曲でオートチューンを掛けたりしているんですけど、オートチューンを掛ける前提の歌い方というのがあって。ヘタにビブラートとかを掛けると気持ち悪い歌になってしまうので、真っすぐ歌ったりするんです。そういう中で、「東京ロマンチカ」はスタジオで一度歌って、それを持ち帰って聴いた時に、もっと感情的に歌ったほうが曲に合うんじゃないかなと思って。メトロノームとビブラートはあまり相性が良くないけど、「東京ロマンチカ」はそういう歌い方がしたくなった。それで、リウさんに、こういう歌い方でも大丈夫ですかと聞いたら、大丈夫だよという返事をいただいて。やり過ぎないようにしようと思いつつ、Bメロとかは気持ち良さを優先してしまいました(笑)。メトロノームのシャラクとしては、「東京ロマンチカ」の歌は新境地です。
――「東京ロマンチカ」の歌は本当に心地好くて、こういう歌ももっと聴きたいです。
シャラク:ヴィジュアル系って抒情的にドラマチックに歌う人が多いと思うんですけど、僕の場合はあまりやって来なかったんですね。でも、人は歳を取ると、良い歌を、こぶしを利かせて歌いたくなるという(笑)。なので、今後はこういう曲も出て来ると思います。
――楽しみです。楽しみといえば、『CONTINUE』のリリースに伴って、3月から4月にかけて全国ツアーも行われます。
フクスケ:メトロノームの再起動という話が出た時に最初に決めたのが、楽しいことだけをしようということだったんです。『CONTINUE』に全員の曲をバランス良く入れて、メトロノームらしいことをやったのも、その現れなんですよね。人の都合ばかりに合わせて活動すると、どうしてもいろんなことが詰まっていくというのがあって。制作やライブが詰まっていって、さらにやらされてる気持ちでやるようなことが増えたりするとだんだん嫌になっていくかもしれない。それは避けたいし、一本一本のライブを大事にしようという思いで、春のツアーも一週間に一本ずつライブをするというスケジュールにしました。“贅沢大人ツアー”(笑)。でも、どうしても最後のほうの福岡と岡山だけは遠いから、2本入れよう…みたいな(笑)。毎回観応えのある、良いライブが見せられると思うので、期待していてください。あと、『CONTINUE』には、メトロノームが再起動してZepp Tokyoでやったライブがまるっと収録されているDVDも付いているんです。このライブには再起動してやりたいと思っていることが凝縮されているし、メトロノームのライブの楽しさがよく伝わるので、できる限りデカい画面で観て欲しいです。
リウ:本当にすごく良いアルバムが出来たので沢山の人に聴いてもらいたいし、春のツアーではそれに繋がるようなライブをすることを目指します。それに、昔の曲がいっぱいあるし、まだライブでやれていない曲とかもあるんですよ。なので、新旧織り交ぜたセットリストを組んで、昔から応援してくれている人も、『CONTINUE』から入った人も楽しんでもらえるライブをしたいと思っています。
シャラク:7年休んでいたので、その間にメトロノームを知った人とかもいるんですね。それに、今回は初めてのメジャーだし、ここ数年のSNSとかの更なる進歩とかもあって、今までにない規模や細やかさで、いろんな告知ができるというのがあって。宣伝力が格段に高まっているから、『CONTINUE』のタイミングでメトロノームのことを初めて知る人も出て来ると思う。昔からのファンの人はもちろん、そういう人にも楽しんでもらえるライブをする自信があるので、少しでもメトロノームに興味を持ったら、ぜひ生のメトロノームを体感しに来て欲しいです。
取材・文●村上孝之
『CONTINUE』
2017/03/15発売
KICS-93471 ¥6,000 + 税
【通常盤】(CD)
KICS-3471 ¥3,000 + 税
[CD]
01.CONTINUE
02.強くてNEW GAME
03.ボク募集中
04.自分コンプレックス
05.東京ロマンチカ
06.暗いbaby
07.空想ヒーロー
08.豆腐メンタル
09.千年世界
10.惨敗生活
11.形而上気分でRock’n Roll
12.解離性同一人物
[DVD]
第10期 起動 Zepp Tokyo
「Please Push Play」
01.残念僕の人生
02.プチ天変地異
03.ねじ式
04.世界はみんな僕の敵
05.僕の右脳 猿の左脳
06.アクアリウム
07.プラネット
08.不機嫌なアンドロイド
09.thank you for my everyday
10.ハロー
11.コンピュータ
12.解離性同一人物
13.三つ数えろ
14.めんどくさい
15.MATSURI
16.PSYCHO-ENEMY
17.絶望さん
EN-1
18.メタリア~ノ?ピコリアーノ!
19.φD-SANSKLIT
20.ボク偉人伝
EN-2
21.アリガト
Recorded at Zepp Tokyo, Japan September 19th, 2016
解離性同一人物 [MUSIC VIDEO]
強くてNEW GAME [MUSIC VIDEO]
ライブ・イベント情報
<現代MONO/POLY>
2017年3月25日(土)
仙台CLUB JUNK BOX
2017年4月9日(日)
名古屋Electric Lady Land
2017年4月16日(日)
心斎橋BIGCAT
2017年4月21日(金)
福岡DRUM Be-1
2017年4月23日(日)
岡山CRAZYMAMA KINGD0M
2017年4月29日(土)
TSUTAYA O-EAST
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