名曲「True Colors」をゴスペラーズがカバー。映画『彼らが本気で編むときは、』荻上作品の心掴む音楽術

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生田斗真主演、荻上直子監督の最新作『彼らが本気で編むときは、』が、2月25日(土)より劇場公開となる。オフィシャルサイトではゴスペラーズによるイメージソング付き予告編映像が公開中だ。

◆『彼らが本気で編むときは、』 関連画像

荻上直子といえば、ヒット作となった『かもめ食堂』や『めがね』など心温まる人間ドラマに定評のある監督だ。そんな荻上作品の世界観を支えている要素の一つが、映画を彩る音楽。今回は5年振りとなる最新作から過去作まで、荻上作品のフックの一つである音楽に注目してみた。

まずは2006年に公開された映画『かもめ食堂』。エンディングテーマに起用された井上陽水の「クレイジーラブ」を耳にした方も多いのではないだろうか。本作ではフィンランドの首都ヘルシンキの街角でオープンした「かもめ食堂」を舞台に、3人の日本人女性が繰り広げる穏やかな日常を綴る。「かもめ食堂」の店主・サチエ役に小林聡美、劇中で出会うちょっと風変わりでユニークな日本人観光客を片桐はいり、もたいまさこらが演じた。さらに劇中ではサチエ演じる小林聡美本人が歌う劇中歌が流れるシーンも。歌っている楽曲は、井上陽水の「白いカーネーション」。サチエが一人のんびりプールで泳いでいるシーンの中流れる小林の歌声は、一度聞いたらなぜか耳から離れない(?)ような、温かくもどこか不思議な魅力を放っている。

そんな『かもめ食堂』のキャスト・スタッフを多く引き継ぐ形で翌2007年に公開されたのが、映画『めがね』。本作は、海辺の町を訪れた主人公の女性・タエコ(小林聡美)を中心に、そこで旅館を営む宿の主人・ユージ(光石研)や、いつもぶらぶらしている高校教師・ハルナ(市川実日子)、笑顔で皆にカキ氷をふるまうサクラ(もたいまさこ)など、旅館に集う人々などの穏やかな人間模様をつづったヒューマンドラマを描く。そんな本作で強烈な印象を放っているのが、朝、どこからともなく音楽が流れてきて、宿の面々が毎日、町の人々と一緒に浜で行っている”メルシー体操”という、見たこともないちょっぴり謎めいた体操をするシーンだ。優しく爽やかなピアノの音色とは裏腹に、簡単そうに見えて『「ビリーズブートキャンプ」より難しい!』とキャストが語るほどのメルシー体操。あの振り付けがそんなに難しいなんて……と、つい記憶に残ってしまう。

そして2017年、荻上直子監督による最新作『彼らが本気で編むときは、』が2月25日(土)に公開となる。キャストには生田斗真や桐谷健太、ミムラ、小池栄子、門脇麦、りりィ、田中美佐子ら豪華な布陣が揃った。本作では優しさに満ちたトランスジェンダーの女性リンコ(生田斗真)と、彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ(桐谷健太)、愛を知らない孤独な少女トモ(柿原りんか)の3人が、それぞれの幸せを見つけるまでの物語が描かれていく。

そんな本作のイメージソングとなった曲が、シンディ・ローパーの名曲「True Colors」だ。彼女が1986年にリリースした2ndアルバム『True Colors』からの同名1stシングルとして発表されたこの曲はビルボード・HOT100で2週間1位を記録し、その歌詞の内容からセクシュアル・マイノリティをはじめとする多くの人たちの心を打った。映画『彼らが本気で編むときは、』においては、この名曲がゴスペラーズによるカバーで届けられる。

▲ゴスペラーズ

ゴスペラーズのリーダー村上てつやは「True Colors」について、「今まで一体どれぐらいの人がこの曲にそっと背中を押してもらったのでしょうか?」と語っている。荻上作品の温かなタッチの中に、このナンバーが入ってくることでどんな化学変化が起こるのか。念のためにハンカチぐらいは持っておいたほうがいいかもしれない。

セクシュアル・マイノリティをはじめ、様々な社会的なテーマを盛り込みつつも、親子、家族、人間同士の愛情の在り方を、温かく、爽やかな世界観で描いた本作。一度観た後には「True Colors」を始めとした音楽にも耳を傾けてほしい。観方や聴き方を変えて二度三度と世界観を楽しめるのも、荻上映画の醍醐味だ。

映画『彼らが本気で編むときは、』

2017年2月25日(土)
新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
公式サイト:http://kareamu.com/

【STORY】 小学5年生のトモ(柿原りんか)は、母ヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、叔父であるマキオ(桐谷健太)の家に向かう。母の家出は初めてではない。ただ以前と違うのは、マキオはリンコ(生田斗真)という美しい恋人と一緒に暮らしていた。食卓を彩るリンコの美味しい手料理に、安らぎを感じる団らんのひととき。母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、人生のかけがえのないもの、本当の幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。リンコのある目標に向かって、トモもマキオも一緒に編み物をすることに。嬉しいことも、悲しいことも、どうしようもないことも、それぞれの気持ちを編み物に託して、3人が本気で編んだ先にあるものは・・・

◆『彼らが本気で編むときは、』オフィシャルサイト
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