【インタビュー】TAKURO、ギタリスト人生を支える“愛機”ヴィンテージ・ギターの世界
GLAYのTAKUROが、初となるソロ・アルバムをリリースする。『Journey without a map』と名付けられたそのインスト・アルバムは、GLAYのリーダーとして見せてきた顔つきとは全く異なる、ギタリストTAKUROのアイデンティティを真っ向から見せつける極めてピュアな作品にまとまっていた。
◆TAKURO~画像&映像~
12月14日に発売される『Journey without a map』には、これまで多くのヒット作を生み続けてきたソングライター/コンポーザーが温め続けてきた、極めてパーソナルなギターに対する思いが濃密に渦巻いている。
11月某日、ダメ元でTAKUROの愛機の撮影をリクエストしてみたところ2つ返事でOK、レコーディングで使用されたヴィンテージ・ギターたちが次々とスタジオに持ち込まれた。もはや実物を見ることすら稀有になってしまった貴重極まりないギターを、さらっと気軽に持ってくるTAKUROという男は何を考えているのか。
ちなみにこの日持ち込まれたギターは4本。1955年製レスポール・スタンダード(スタッドブリッジの激レア・オールゴールド)、1957年製レスポール・スタンダード(ゴールドトップ)、1959年製レスポール・スタンダード、そして1954年製ストラトキャスターである。これらは言わば“ギター界のストラディヴァリウス”と表現したい。
この4本がさらっと持ち込まれた都内スタジオで、インタビューが行われた。
■“自分の将来なりたい像”だけは明確にある
──さきほどギターを見まして、腰が抜けました。
TAKURO:あれ、ステージで使っていますよ。
──え? な、なんで?
TAKURO:使命感に燃えて。
──どういうことですか?
TAKURO:例えばジミー・ペイジの音はCDで聴けるけど、今やヴィンテージ・ギターはステージでは誰も使わない。生の音圧はCDと全然違うのに、その生音を聴く機会がないなんて、キッズにとってもったいないでしょう?
──…だけど、気軽に使えるギターじゃないから。
TAKURO:値段がどうたらっていうのであれば、当時1ドル=360円だから十万円前後ぐらいだったギターですよ。これを家で眺めているだけとか、倉庫で眠ってるだけとかは、楽器に対してちょっと失礼かなと思って。だから弾いてやろうと。
──その通りだけど…でも無理。価格だって数千万円、壊れたら代わりが世の中にないものだから。
TAKURO:でもまあ、盗まれた・壊れた・何した…これはもう縁です。もちろん最大限の注意は払うけれども、やっぱり楽器が嬉しそうだっていうのを感じます。そりゃそうでしょ、鳴るために生まれてきたんですもん。
▲左:Gibson Les Paul Standard 1955年製/右:Gibson Les Paul Standard 1957年製(共にTAKURO私物)
──どのギターもコンディションが驚異的に素晴らしいですね。
TAKURO:先人たちの愛情のかけ具合が素晴らしいので。俺のところに来たんだったら、久保家なりの愛情を持って先人たちをリスペクトして、ちゃんといい病院/いいお医者さんを探して、長いこと使えるように、その日が来るまでという気持ちで使っています。あとね、やっぱり背筋が伸びます。
──分かります。
TAKURO:今まで弾き飛ばしていた音を、一音一音の切れ際までちゃんと丁寧に演ろうって。他の楽器でもそうしろよと思うんですけど、鳴らないやつは鳴らないですもん。不思議なもんで、マインド的なもので音も変わっていきます。最終的には右手と左手だけで歪みから優しい音まで出したいと思っているんですけど、そこに近づきますよ。
──ギターが持っている本来の表情を、いかに引き出すか。
TAKURO:自分がこんな風になるとは思っていなかったんですけど、自分を見つめてたら、そういう人間だったことがすごくよくわかりました。アイディア豊富で器材にも詳しいHISASHIが隣にいると、俺もそうならなきゃいけないんじゃないか?って、HISASHIに追いつけ追い越せみたいな格闘の時期もあったんですけどね。
──でも違うことに気付いた?
TAKURO:自分が60歳、70歳になったとき、ギタリストとしての生き方を考えたらレス・ポールさんのように毎週月曜日に2回ステージに立っちゃうようなギタリストでありたいなあって思ったんです。あれだけ偉大な功績を残した人だけれど、聴きたい人がいて演りたい自分がいるから、いつまでも現役で自分の表現を止めず、世の中にメッセージを出していく。それであれば、それの基となるアルバムがあったらいいなあと考えていて、50歳になったらやろうと思っていたわけです。今45歳なんですけど、そんな話を夜な夜な松本(孝弘)さんといつも話をしていたんですよね。
──昔からの知り合いなんですね。
TAKURO:1997年くらいに対談がきっかけで知り合って、そこからずっとギタリストとしての松本さんの生き様を見せてもらってきた。勉強になること/刺激になること…驚きの連続ですよ。いろんな話をしてね、「ギターに感謝してるし、今こうやってTAKUROといい酒飲めて飯食えるのもギターのおかげだよね」って。「ギターだよね」「そうですよねえ」って。家でテレビの音に合わせてジャムったりして、それでこんな幸せなんだから、そのメロディをまとめてみたいなあなんてことを言ってたら「50歳と言わず今やりなさい」と言われまして。
──松本さん、ナイス!
TAKURO:俺は「無理っす。求められてもいないし、そんな実力も無いし」って言ったんですけど、「演ってみたら絶対何か変わるから」と言ってくれたのが去年の夏だったんです。
──自身の経験則なんでしょうね。
TAKURO:僕は20代から30代前半という大事な時期をGLAYの作詞/作曲とリーダー業務に費やしたので、ギターに向き合ってこなかったんです。そこにものすごい後悔もあるしコンプレックスもある。HISASHIという天才を抱えたバンドだと、ギタリストとしては挫折だらけなんですよ。
──打ちひしがれる?
TAKURO:打ちひしがれるなんてもんじゃないですよ、「俺が考えたフレーズ、こんなのどう?」って言っても(HISASHIが)「俺も考えた」って出してきて明らかにそっちの方がいいんですもん。だけどリーダーとしては「お、でかした。これでまたGLAYの代表曲完成だ」って。それの繰り返しの20年だったんです。だけどまあ、45歳になった今、これから何年ギターを弾けるかわからないけれども、“自分の将来なりたい像”だけは明確にあるんですよね。「俺はこういう男になりたいんだ」「こういうギタリストになりたいんだ」っていう。GLAYの活動も落ち着いて50歳になったら…なんて考えていたけど、そこでTAK MATSUMOTO兄貴の一喝「今やんなさい」がありまして。
──「わかりました、先輩」と(笑)?
TAKURO:「そこまで言うなら手伝ってください」と(笑)。松本さんのソロアルバムってめっちゃ音いいから、松本さんとこのエンジニア使いたいとか、松本人脈全部使って(笑)。「特別だぞ」って言われながらね(笑)。
──いいですねぇ。
TAKURO:そこに永井さん(Dr)という協力者を得てね。永井さんはGLAYのライブの後に街のジャズクラブに飛び込んでいってセッションとかしちゃうようなジャズ好きな面もあるから。めっちゃくちゃうまいんですよ。基本的に“地球が幸せになればいい”と思っている人が叩くドラムって、何やってもいいんです。その人しかできない愛情溢れるグルーヴがある。そういった仲間が集まって、そこに俺混ぜてもらって、5~6年前から70歳超えの往年のジャズメンたちとスタンダードとかをやってたんです。
──楽しかった?
TAKURO:楽しいですねえ。何が楽しかったって、ポップスの中ではアウトだった音も、ジャズやブルースでは感情が先だからいいんですよね。経過音だって濁った響きもバンバン使っていいし、GLAYの中ではアウトなことでも広い海に出てみればOKな世界もあるんだって学んだ。ダメなこととして捉えていたけれど、自由でいいんだって。テーマをテーマ通りに弾かない…弾きたくないときは好きにいっていいんだってことをジャズメンたちから習びました。人がソロ演ってるとき、ピアノの市川さんなんていなくなっちゃうんですよ(笑)。外で煙草吸ってるんです。こっちはもうネタもないのに帰ってきてくれない。これがジャズメン特有のかわいがりか?って。切羽詰まって何とかしようとひねり出すと、帰ってくるんですよね。
──面白いですね。
TAKURO:スパルタ過ぎるよって(笑)。もう最後は「誘惑」のイントロとかやってましたからね(笑)。
──あははは(笑)。
TAKURO:けど、その姿勢はジャズだなあって。
──そういう世界の楽しさを通って、今回のソロ作品へつながるわけですね。
TAKURO:そもそもジャズやブルースの要素は、GLAYで煮詰まったときの新機軸として用意しておいたものだったんですけど、そういうアプローチもGLAYではまだ全然必要とされていなくてね。ソロでは見事にこうなった。
◆インタビュー(2)へ
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