【インタビュー】TETSUYA (L‘Arc〜en〜Ciel)、シングル2作同時発売「ラクなほうに逃げることを良しとしない」

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ソロデビュー15周年を迎え、約6年ぶりにソロプロジェクトを再始動したTETSUYA(L‘Arc〜en〜Ciel)が9月7日、ユニバーサルミュージック/EMI Records移籍第1弾となるニューシングル2タイトル「Make a Wish」「Time goes on ~泡のように~」をリリースした。「Meke a Wish」は痛快POPチューン、一方の「Time goes on ~泡のように~」はキャリア史上初となるL‘Arc〜en〜Cielの名曲のセルフカヴァーだ。

◆TETSUYA (L‘Arc〜en〜Ciel) 画像

旋律と歌詞はもとより、アレンジ、ヴォイシング、コーラスワークなどの仕上がりは絶妙。まるでポップアートのような肌触りを持つ2曲の制作風景に加え、収録されたリミックス、10月に行われる東名阪ツアー<TETSUYA LIVE TOUR 2016「THANK YOU」>について訊いたロングインタビューをお届けしたい。

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■想いが強いほうが勝つ
■それは事実だと思っているんです

──まず、「Make a Wish」はどういう構想のもとに作られた曲でしょう?

TETSUYA:ゲームソフト『イグジストアーカイヴ -The Other Side of the Sky-』のオープニングテーマのお話をいただいたところから始まりました。タイアップで曲を作る時はある程度作品とリンクした曲じゃないと僕自身がイヤなんですよね。なので、ゲームのイメージや、キーワードになる言葉をいろいろ教えていただいて、それから曲作りに取り掛かりました。歌メロから入って、あとはパワーコードでズンズンいっているシンプルなギターとキラキラしたアルペジオがあって、みたいなところから広げていった感じですね。

──メロディアスかつ煌びやかなロックチューンに仕上がっていることが印象的です。メインヴォーカルとカウンターコーラスの絡みを活かした華やかなサビパートも魅力的ですし。

TETSUYA:サビも同時に出来ました。頭の中で主旋律とコーラスが同時に鳴ったんです。それで、コーラスは上のハモリを足すことにして。そこからどんどん構築していって、最終的にサビは自分でも凄いなと思います(笑)。

──広がり方が凄く心地いいです。“夢を追って生きていこう”ということを詩的に綴っている歌詞についても話していただけますか。

TETSUYA:『イグジストアーカイヴ -The Other Side of the Sky-』の世界観を表現しつつ、その時の僕の気持ちも挟んで、みたいな感じで書きました。なんていうんだろう……思うようにならないことは、世の中にはいっぱいあって。でも、そういう中でも気持ちを強く持って、前に進んでほしいということを歌っています。よくサッカーでも言うじゃないですか、想いが強いほうが勝つと。僕は、それは事実だと思っているんですよ。そういうことを伝えたいという気持ちがありましたね。

──前向きな歌詞が多くのリスナーの共感を得ると思います。

TETSUYA:僕は常に前向きです。プラス思考だから転んでもタダでは起きないと思っているし。転んだり、立ち止まったり、遠回りしたりしたとしても、最終的には何とかしてやると思っている。この曲の歌詞には、そういうところが自然と出ている気がします。

──「Make a Wish」は、曲調にも歌詞にもTETSUYAさんの人となりが表れているといえますね。ベースに関してはいかがでしたか?

TETSUYA:ギターの室姫(深)君とアレンジを煮詰める中でベースラインを決めていきました。足したり引いたりして。引くことのほうが多かったかな。意識的に、シンプルであまり動かない方向に持っていったんです。歌メロとの絡みを考えると、そのほうが良いだろうというのがあったから。シンプルなベースということもあって、ちょっと弾いて、それをコピペしてコピペして、フレーズを作っていった(笑)。いかにベースを弾かずにフレーズを考えるかっていう(笑)。そうやって、あらかじめ全部のフレーズを決め込んでからレコーディングしました。

──ドライヴ感とうねりを併せ持ったグルーヴが凄く気持ち良いです。

TETSUYA:「Make a Wish」のベースは凄く機械的に弾いたと思いますね。

──えっ、機械的?

TETSUYA:そう。自分がマシンになったような感覚というか。そういう風に弾いた時の感触が良かったから。

──ライヴのノリで気持ちを上げて“ガー!”っと弾けば気持ち良いグルーヴが出るわけではないということですね。歌はいかがでしたか。ある程度歌い込んでからレコーディングしたんでしょうか?

TETSUYA:いつも自宅でそこそこ歌い込んでからスタジオで録るんですけど、歌詞が録りの直前になることが多いんですよ。なので、歌詞を書き終わって、レコーディングするまでの間の短い期間の中でできる限り練習して録音する。今回もそういう感じでした。

──ニュアンスなどは曲を作った時点で見えるタイプでしょうか?

TETSUYA:いや、実際に録ってから判断します。フラットな気持ちで歌ったものを録音して、それをプレイバックして、“ちょっとしつこいな”とか、“ここはもう少し感情を込めていいんだな”といったことをチェックする。それを意識してもう一度歌ってまた聴いて…ということを繰り返しながら落とし込んでいくんです。なるべくクセが出ないように、言葉がしっかり聴き取れるように歌うことを心がけていますね。ロックの場合は何を言っているのか分からないのがカッコいいみたいなところがあるけど、英語の歌詞を歌う場合はネイティヴの人に立ち会ってもらって、発音をチェックするでしょ。それと同じように、日本語なのに何を言っているのか分からないような歌はイヤなんですよ。だから、歌詞カードを見なくても、ちゃんと言葉が聴き取れる歌を歌いたいというのが僕の中にはあります。

──言葉がはっきり聴き取れる歌い方と耳触りの良さというのは、相反することがあると思うんですね。それを両立させているのはさすがです。

TETSUYA:ありがとうございます。歌の評価は低いんですけどね(笑)。

──えっ、そんなことはないと思いますけど……。

TETSUYA:リスナーにしてみると、どうしても僕=ベーシストということが頭にあると思うんですよ。“歌に関してはプロじゃない”という耳で聴く人が多いみたいで、「いいね」という声はあまり聞いたことがないんです。僕自身は自分の中のOKラインはクリアできているので、世に出しているんですけど。

──甘さと力強さを兼ね備えているという独自のスタイルを持たれていますし、ヴォーカリストとして魅力的だと思います。

TETSUYA:自分でも自分の歌は好きなんですよ。「声が細い」みたいなことを言う人もいるけど、僕はあまり太い声が好きじゃないんです。歌というのは、声が太いとか細いということではないと思っているし、自分がいいなと思うところで歌うと「細い」と言われてしまうんですよね。

──意識してやっていることなのに、細い声しか出ないと思われてしまうんでしょうか。

TETSUYA:そう。元々僕がヴォーカリストだったら、リスナーは意識的にそうしていると自然に思うんでしょうけど。

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