【インタビュー】エクリブリウム「俺たち?エピック・メタルだよ」

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ニュー・アルバム『アルマゲドン』をリリースするドイツのエピック・メタル・バンド、エクリブリウム。オリジナル・メンバーでリーダーというだけでなく、あらゆる楽器から作曲、レコーディングに至るまですべてを手掛けるルネ・ベルティオムに話を聞いてみた。

◆ニュー・アルバム画像

──まず最初に、あなたのお名前の読み方について教えてください。スペルを見た感じだとフランス系のお名前のようですが、これはフランス式にルネ・ベルティオムと読んで良いのでしょうか。

ルネ:そう、フランス語から来ているからルネだよ。父親がカナダ人なんだ。

──エクリブリウムというバンド名を選んだのは何故ですか。どのような意味を込めているのでしょう。

ルネ;エクリブリウムというのは、バランスというような意味なのだけど、バンドを始めてバンド名を決めるときに、方向性を限定するようなものにしたくなかったんだ。ああ、これはデス・メタル・バンドだな、とかブラック・メタル・バンドだな、パワー・メタルだな、とわかるようなものにしたくなかった。初期の頃はただそれだけで、それ以上の意味というものはなかったのだけど、最近はこの名前が非常に重要に思えるんだ。今はバランスというものを見つけるのが難しくなってきているだろう。自然や、人生で起きることなどを見ていてもそうだ。物事にはバランスが必要なのさ。だから今はこのバンド名をとても気に入っているよ。

──ニュー・アルバム『アルマゲドン』がリリースになりますが。

ルネ:今回の作品は、以前のアルバムに比べるとずっと暗い内容になっている。もちろんいつも通りのハッピーでポジティヴな面白い部分もあるけれども、全体的なムードはもっと暗い。『アルマゲドン』というタイトルが示す通り、歌詞が暗いものだしね。今回は人類が自分たち、あるいは地球や動物といった環境を破壊しているというような暗いトピックを扱っているんだ。

──以前のアルバムと比べて、一番進歩しているという点はどのあたりでしょう。


ルネ:うーん、良い質問だね。もちろん人それぞれ意見は違うかもしれないけど、俺としては音質がとても良くなっていると思う。とてもヘヴィだし、ドラムもパンチが効いている。すべての楽器がうまく溶け合って一体感があるしね。今回、ヴォーカリストのロプセにとっては3枚目のアルバムになるのだけど、彼が加入したことで曲の作り方に変化があったんだ。前のヴォーカリストはもっと高音でスクリームするタイプだったけれど、ロプセのスタイルはもっと暗いものだからね。それで俺の曲の書き方やギターなども、より深いものに変わったと思う。それに今回もとてもオリジナルな作風になっているよ。

──前回のアルバム『源祭壇 - Erdentempel』ではあなたが殆どすべての楽器を一人で演奏していますよね。

ルネ:そうだよ、ギター、ベース、キーボードすべて演奏した。

──ドラムは?

ルネ:ドラムは打ち込みだよ。ナチュラルに聞こえるようにプログラムするのは大変な作業だったけど、俺はそもそも打ち込みで曲を作るからね。エクリブリウムのメンバーは、色々な国にちらばっているから、集まるのが大変なんだよ。特にドラマーはイスラエル人だから。締め切りがある中で、皆が集まってアルバムを仕上げるというのは容易ではない。だからドラムは打ち込みでやるようにしているんだ。

──今回のアルバムも同じスタイルですか。

ルネ:そう、今回も同じだよ。ギターとベースは俺が弾いて、ヴォーカルはもちろんロプセがやった。それからフルート・プレイヤーが参加している。ドラムは今回も打ち込みだよ。

──なるほど。クレジットにはギタリストやベーシスト、ドラマーの名がありますが。

ルネ:彼らは皆ライヴ用のミュージシャンさ。俺にとってはスタジオでアルバムを制作するという作業とライヴは、まったく別物なんだ。バンドを始めた時から、俺は一人でほとんどのことをやってきた。こういうやり方の方が、俺にはやりやすいんだよね。ずっとこういうやり方でうまくいっているし。

──エクリブリウムの音楽を定義するとしたらどうなりますか。フォーク・メタル/ヴァイキング・メタル/ペイガン・メタルなど、様々な呼称が使われますが。

ルネ;バンドを始めた頃は、ヴァイキング・メタルとかペイガン・メタルと呼ばれることが多かった。北方ドイツの神話について歌っていたからね。今はそういうトピックではなく、もっとパーソナルな内容について歌っているから、俺たちとしてはもっとシンプルに「エピック・メタル」をやっていると考えている。音的には非常にシンフォニックだし、なるべくビッグなサウンドにしようと思っているから、エピック・メタルという呼び方がぴったりじゃないかな。


──北方ドイツの神話というのは、ヴァイキングとも直接的なつながりがあるのでしょうか。例えばヴァーグナーが北欧神話から影響を受けていたりとか、このあたりのつながりを理解するのが難しいのですが。


ルネ:確かに複雑というか、わかりにくい部分はあるよね。ドイツのバンドがヴァイキング・メタルをやったり、北欧神話について歌っていたり。時にヴァイキング・メタルというのは単にその音楽スタイルのみを意味することがあるし。ドイツの神話と北欧の神話は、多少のつながりはあるよ。もちろんドイツにはドイツ特有の神話があり、ノルウェーやスウェーデンにも彼ら特有の神話がある。ただ共通点はあるんだ。確かにファースト・アルバム(『神々の紋章 - Turis Fratyr』2005年)ではこのトピックについて歌っていたけれども、セカンド(『サーガス - Sagas』2008年)では激減し、サードではまったく触れていない。俺たちとしてはサード・アルバム(『再創神 - Rekreatur』2010年)こそがエクリブリウムの本当の始まり、第一章だと考えているんだ。サード・アルバム以降、俺たちはドイツの神話以外の、もっと広い世界に目を向けるようになったからね。

──今回の歌詞はパーソナルで暗い内容とのことでしたが、もう少し詳しい内容を教えてもらえますでしょうか。

ルネ;今回の歌詞は、現代社会における問題についてだよ。人類がこの星や自分たちを滅茶苦茶にしていることとか、今起こっている暗いことについてさ。もちろんそればかりではなくて、もっと軽い内容のものもある。我が家に帰ることについて、自然をどう感じるか、人間と動物との関係について、とかね。

──「ヘルデン」は何について歌っているのでしょう。ロールプレイングゲームですか?

ルネ:ハハ、あの曲は愉快だろ。あれは一般的なゲームについて歌っているんだ。俺はコンピューター・ゲームが大好きだからね。6歳のときに最初のニンテンドーを買ってもらったんだ。だからゲームから影響を受けることもあるんだ。この曲には8ビットのコンピューター・サウンドも入っているだろう。コンピューター・ゲームへのオマージュさ。

──つまり「赤いキノコの中を走れ!」という歌詞は、そういうことなのですね。

ルネ:もちろんそれは、マリオが赤いキノコをとってデカくなることについてだよ。

エピック・メタルだ、フォーク・メタルだと馴染みのない方には訳のわからない専門用語が出てきたが、何も心配はいらない。そのカテゴライズの難しさとは裏腹に、エクリブリウムの音楽は明快なもの。誰でも一度聴けば、すぐにそのメロディが頭に入ってしまう。今回は『アルマゲドン』というタイトルに表れているように、若干暗めの内容とのことだが、これも何も心配いらない。言われてみれば暗めのパートもあることはあるが、全体的な印象としては、やはりいつものエクリブリウム。運動会のBGMに今すぐ使えそうな、昂揚感を煽りまくる楽曲が目白押し。

次回、インタビューの後編では、ルネが影響を受けた音楽やドイツ語での曲作りなどを語ってもらおう。

取材・文:川嶋未来/SIGH


エクリブリウム『アルマゲドン』

2016年8月12日 世界同時発売
【通販限定/初回限定盤CD+ボーナスCD+Tシャツ】¥5,500+税
【初回限定盤CD+ボーナスCD】 ¥3,000+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ゼーンズフト
2.エアヴァッヘン
3.カタルシス
4.ハイマート
5.ボーン・トゥ・ビー・エピック
6.ツム・ホリツォント
7.ライズ・アゲイン
8.プレイ
9.ヘルデン
10.コヤニスカッツィ
11.エターナル・デスティネーション
【ボーナスCD】
インストゥルメンタル・ヴァージョン
1.ゼーンズフト
2.エアヴァッヘン
3.カタルシス
4.ハイマート
5.ボーン・トゥ・ビー・エピック
6.ツム・ホリツォント
7.ライズ・アゲイン
8.プレイ
9.ヘルデン
10.コヤニスカッツィ
11.エターナル・デスティネーション

【メンバー】
ロブ(ヴォーカル)
ルネ(ギター)
ドン(ギター)
ハティ(ドラムス)

◆エクリブリウム『アルマゲドン』オフィシャルページ
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