【インタビュー:中編】フルカワユタカ、Base Ball Bearを語る「兄気心というか親心」

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■「フルカワユタカに申し訳ない」って
■矢沢永吉さんみたいなことを言ってました

──ギタリストの脱退劇があり、しかもそのギタリストは相談事も聞くようになっていた後輩でもあるわけで。サポートとしてフルカワさんが参加するに際して、Base Ball Bearメンバーとの顔合わせなり、初リハーサルはどういう空気だったんでしょう。

フルカワ:結論から言えば、僕が想像していたような、そういう空気はなかったんです。もちろんバンドの15周年に……言ってしまえば、投げ出してしまった湯浅に対する悔しさとか怒りとか、そういうものは3人とも持っているんです、Base Ball Bearを続けると決めた以上は。そういう話は出るんだけど、湯浅を馬鹿にするような話は一切ない。それ以前に、3人が音楽に対して真摯なんですよね。こっちが恥ずかしくなるくらい、音楽に真面目なんですよ。東京の人たちだから、3人とも人柄はクールなんだけど。

──なるほど。では、フルカワさんが当初抱いていた疑心の気持ちは、そこで変わったわけですね。

フルカワ:僕は全然心を許すタイプじゃないので(笑)、簡単には許してなかったにせよ、一番最初にリハに入った段階で、何かひとつ剝がれ落ちたのは間違いないです。初ライブまで4回リハーサルに入って仙台初日を迎えたんですけど、その段階でうっすらメンバーとバカ話もしていたと思うし。

──ライブ本番まで、全体リハが4回しかなかったということも驚きなんですが(笑)。

フルカワ:最初のリハーサルまで10日もないような状態で、リハまでに15曲を覚えなければならない。しかも4回のリハのなかでは「セットリストを変えたい」っていう話にもなってくるから、覚えた曲を2曲カットして、さらに2曲追加とか(笑)。で、最初のリハから1週間後にはもう仙台初日でした。

──それは百戦錬磨のスタジオミュージシャン並みのスケジュールですね、すごい。

フルカワ:仙台が終わった後に、みんなから“さすがですね!”とは言われましたけどね(笑)。俺としては、もうフルカワユタカの名に恥じぬようにというか。でも、仙台終演後に、「フルカワユタカに申し訳ない」って矢沢永吉さんみたいなことを言ってましたけど。(笑)。


──ギタリストとしての話は、また後ほどうかがいたいのですが、野音を含めて約2ヶ月間、全8本のステージに参加するにあたって、BARKSの連載コラムでは、「3人の発想やら想いやらのみでステージが作られるべきだと僕は信じている。それは演出のみならず、音楽的なことも同様、アイツのギターではないというだけで相当な違和感や変化があるわけで、それ以上の影響は与えないよう細心の注意を払ってきた。大袈裟に言うと3人と“あまり仲良くならない”ようにさえしてきた」と、自身の立ち位置を明確化していましたね。

フルカワ:その気持ちは最後まで持っていましたね。今回のツアーに関してはセットリストに口出ししないどころか、「この曲をやりたい」という話になれば、僕はそれをすぐにコピーしたし、まったく3人の意志に任せましたから。ただ、一点だけ。小出くんの頭の中がすべてクリアになっていたというか、Base Ball Bearを前に進めることだけに一所懸命だったんですよ。

──湯浅さんが居ない、ある種特別なツアーだったわけで。フルカワさんがファンに配慮しつつ、その部分に目を光らせていたという。ギタリストとしての技量はもちろん、ベボベのマネージャーは、そういう人間的な部分も経験豊かなフルカワさんに期待していたのかもしれないですね。

フルカワ:ベボベのマネージャーに頼まれて、湯浅と友だちの僕が、ステージに立っている意味は……考えすぎかもしれないですけど、それも込みで立っていたつもりです。まぁ、それくらいですかね、ショウに影響を及ぼすようなことをしたと言えば。

──とはいえ、ギターバンドのギタリストが代わるわけですから、そのサウンドやプレイスタイルが楽曲やライブに影響する部分も少なくないと思うんですね。以前、連載コラムでは小出さんに「1回のダウンストロークで2回音を出す方法」を伝授するような場面も記されてましたが、ツアー中にはメンバーと音楽的なコミュニケーションも?

フルカワ:それはごくごく自然にという感じでしたね。詰まるところ、そういう関わり方がミュージシャン同士だなっていう話ですけど。彼はとてもギターが上手かったんですよ、僕はそれにビックリしちゃって。どうやら彼も言ってるみたいなんですけどね、「俺はギターが上手い」って(笑)。

──くくく。フルカワさんとは似たもの同士的な(笑)。

フルカワ:でも、ギターが上手いとか、そういうイメージが彼にあまりないじゃないですか。ところが一緒にやってみると、音もいいし、右手がしっかりしてる。それはリハーサルに入ったときの一発目の音で分かったので。影響を与えないようにとは思ってたんですけど、結局、我慢しきれなくなってしゃべっちゃったというのが、あのコラム。多少のデフォルメはありつつも、大ざっぱにあのノリでした(笑)。

──先日、別現場でフルカワユタカのサポートギターを務める新井弘毅さんにお会いましたが、「フルカワさんのギターは勉強になる」とおっしゃってました。年下ギタリストキラーですね。

フルカワ:嬉しいですね、それは。あのコラムの次の次くらいのライブのときに、小出くんが「あれから、親指と中指でピックを持ってるんですけど、この持ち方のほうが全然いいです」って話かけてきたんですよ。そうしたら、その日の打ち上げでドラムの堀之内くんが、「今日、小出からフルカワさんにピックの話をしたじゃないですか。あんなシーン見るとキャッ!ってなるんですよ。他のアーティストとそういう話をしているところなんて見たことないですから。あれはホント、フルカワさんのこと好きですよ」って言ってくれたりね(笑)。

──教えずとも、門下生増えるみたいな(笑)。

フルカワ:こんな話を載せたら、「いや、好きじゃない」ってなるかもしれないですけどね、僕もそういうタイプだから(笑)。まぁ、それはツアー中盤から後半に掛けての出来事で、音楽を介してメンバーとは自然と、本当に仲良くなりましたね。

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