【インタビュー】OLDCODEXが今だからこそ笑って話せる“あの時”、そして未来…シングル集『Fixed Engine』
秋に史上最大規模の全国ツアーを控えているOLDCODEXが、過去にリリースしたシングルに書き下ろしの新曲2曲を加えたSingle Collection『Fixed Engine』を6月8日にリリースした。
◆OLDCODEX 画像
Ta_2とYORKE.は今回のアルバムをOLDCODEXとして、ひとつのピリオドを打つ作品と定義づけた。それはいったい、何を意味しているのか──? これまで以上の熱量と激しさ、未来への乾きを感じさせる強力な新曲「Anthem」に2人が込めたものとは──? 話を聞けば聞くほど、今回のアルバムがただのシングル集ではないことを実感させられた。OLDCODEX初期のギタリストであり、ソングライターだったR・O・Nの脱退という危機を乗り越え、ヴォーカリストとペインターという異色のバンドとして凜として立った時期を抜きには本作は語れない。今だからこそ笑いながら話せるあの時の葛藤や痛み、新たな未来に向かって加速していこうとするOLDCODEXの混じり気のない想いをロングインタビューでお伝えしたい。
なお、『Fixed Engine』はOLDCODEX初の3形態仕様。YORKE.のアートワークによる特製ボックス仕様の「BLUE LABEL」(CD+DVD)、「RED LABEL」(CD+BD)、通常盤の「GREEN LABEL」が同時発売される。
■最初のチャプターは、ここで終わりみたいな。(Ta_2)
■OLDCODEXっていう見えないタトゥーが自分の中に刻まれてる感覚があった。(YORKE.)
▲『Fixed Engine』RED LABEL |
Ta_2:最初は「Dried Up Youthful Fame」以降、シングルのリリースが多かったから、「いつか1枚のアルバムにまとめなきゃね」って話をしたところから始まったんだけど、音楽性を掘り下げていくにつれて、自分たちの曲もよりディープにヘヴィに変化していったから、1枚にまとめるのは難しいかもしれないとも思っていたんですよね。そんな時に「アルバムに入っていないシングルもあるんだから、それもアリなんじゃない」っていう意見が出て「じゃあ、シングルだけでまとめてみようか」って。新曲に関しては頭と終わりに入れたいねっていう話はしてましたね。
──新曲の「Milestone」と「Anthem」は今まで発表したシングルと密接な繋がりを持つ曲にしようと?
Ta_2:そういう曲にしようと話していたわけではないけれど、今までリリースした曲を聴き直すことによって、強制的に自分たちの今までの足跡を振り返ることになったのは大きかった。今までは脱退したメンバーの音楽性は俺が受け継いでいるんだろうと思いながら曲を書いていたけど、そういうことも1回、ここで終わりにしようと。自分の中で禊みたいなものは済んだなという想いもあったし、このタイミングでシングルコレクションを出すのは良い機会だと思ったんだよね。過去と現在と未来に1本の線をビーッと引いて境界線上にあるような未来に繋げる曲にしたいと思って書いたのが「Anthem」で、その流れを少し汲みつつ書いたのが「Milestone」。最初と最後に新曲が入っていて、でも2曲目にはOLDCODEXのファーストシングル「〔Blue〕」が来るわけだから、メビウスの輪みたいに繰り返し聴ける内容になったらいいなというのはありましたね。
──じゃあ、『Fixed Engine』はOLDCODEXにとって一区切りの意味を持つ1枚なんですか?
Ta_2:最初のチャプターは、ここで終わりみたいな。
──なるほど。ではYORKE.はリリースしてきた曲を聴いて、どんなことを感じましたか?
YORKE.:当然2人にしかわからないドラマを感じたよね。いつの間にか全曲、歌える様になってたりして、OLDCODEXっていう見えないタトゥーが自分の中に刻まれてる感覚があった。それと『Fixed Engine』は過去の曲たちに新しい表情をつける意味でもジャケットは大事だと思ったんですよね。で、「このシングルではこういうジャケットを作ったな」ってリアルに思い出したし、過去の素材をコラージュする方法論も考えたけど、この6年間をもう1回、俺の身体の中に入れた上で今の自分のフィルターを通した新しいものにしたかったから、収録されている曲のセットリストを流しながらライヴ感覚で1枚の絵を描いた。もちろん、いろいろ思い出したけど、変なこだわりは捨ててスッキリした気分でキャンバスに向かっていった。だから、デザインの組み方は繊細で複雑になっているけど、ベースはOLDCODEXの最初のミニアルバムのジャケットを描いた時と何にも変わってないなって。使っている道具も同じ。スピード感とか熱量が上がっているのは確かだけれど。
▲『Fixed Engine』BLUE LABEL |
YORKE.:いや、「Anthem」が出来た後だよ。
Ta_2:そう、そう。
──OLDCODEX備え付けのエンジンみたいな意味ですか?
YORKE.:「Anthem」の歌詞を書いている時に“Fixed”という言葉を思いついて──。車に例えたらボンネットを開けてエンジンを確認するとたくさんの部品があって、6年前と何も変わらないんだけど、そういうものに支えられてここまで来たと感じたし、シングルの曲やファンの存在に再度スポットライトを当ててみたら自ずと『Fixed Engine』という言葉が出てきた。
Ta_2:「タイトル最高じゃん。まさに!」って。俺ららしいとも思ったし。
──では新曲について。まず1曲目の「Milestone」はどんな過程の中で生まれましたか?
Ta_2:「Milestone」は最初インストにする予定だったんだけど、途中からメロディをつけたくなった曲。2曲目の「〔Blue〕」との繋がりも意識しつつ、ライヴでYORKE.が絵を描くことをイメージして書いたかな。CDに収録されているのが最終形ではなくてライヴで完成するような曲にしたかった。アートって無作為に置いたものがキレイに見える瞬間があるけれど、そういうメロディになったらいいなって。例えばYORKE.はペンキを扱うから靴やパンツに絵の具が付いているんだけど、それがカッコよく見える。意図しているものではなく、飛び散った絵の具が重なってそう見えるわけで、そういう在り方の曲にしたかった。自分の中のイメージでは波の上にパーツが乗っかっていて、揺らいでいるんだけど、それがキレイに見えるみたいな曲。楽器隊には曲の空気感や歌った時に感じる心地よさを大事にしてほしいっていう話をしましたね。
──歌詞はもう交わることがない君に宛てているように響いてきました。
YORKE.:自分の中ではアルバムの最後というイメージで書いたんですよね。「Anthem」の先にあるもの。実際には1曲目なので、この曲はTa_2視点で、もしも俺がTa_2だとしたら違う道を選んだヤツにどんなことを感じているのか想像しながら書いていった。Ta_2は彼に出会って音楽が素敵なものだと知って一緒にバンドを組んだんだけど、離れていって……みたいな。“君の描いた色が泣いた”っていう訳詞の部分はTa_2がYORKE.の絵を見て「YORKE.は泣いてるんじゃないか?」って思ったっていうニュアンス。だから、「Milestone」のリリックはOLDCODEXに起きたリアルな出来事を想像しながら、そのことを淡々と書いた感じ。2年前だったら、こんな歌詞は書けなかったかなあ。俺たちは色々起こる出来事と向き合ってきたし、2人になってずっと歩いてきたから、ここでちゃんと歌詞で表現すべきだなって。タイトルを決めてから書いていった。
▲『Fixed Engine』GREEN LABEL |
YORKE.:というより、もう少し大きく捉えてもらったほうがいいかな。自分の人生に影響を与えた出会いってみんなにもあるだろうし、うまくいくこともあれば、うまくいかなくなることもある。だけど、出会ったことによって何かが自分の中で変わったかな? って再確認するような歌詞にしたかった。だから、決してネガティブには捉えてなくて、こういうことがあったから今があるよねっていう。OLDCODEXのことで言ったらいろいろあったけど、時間がたって少し美化できるところまで歩いてきたなっていう。Ta_2と共有してきた時間があったから書けた歌詞だし、でも、それを作品にして外に出す時には余白があったほうがいいと思ったから、誰が聴いても「こういうことってあるよな」って感じるメッセージにしてる。
──乗り超えてきたからこそ書ける歌詞ですね。
YORKE.:かもしれない。リリックに関しては「カタルリズム」(2012年)をキッカケにYORKE.になるけど、それ以前の歌詞を読んでも、大元のメッセージはブレてないと思うんだよね。
──確かに。そのことは歌詞をあらためて読み返して感じました。
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