【インタビュー】早見沙織、圧巻の歌唱力とクリエイティブな才能も存分に発揮した1stアルバム『Live Love Laugh』

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声優としては10年のキャリアを持ち、高い演技力で評価されている早見沙織。キャラクターソングでも類稀な歌唱力を披露し、個人名義での音楽活動を熱望されてきた彼女だが、2015年8月にシングル「やさしい希望」でついにアーティストデビューを果たした。そして、5月25日には待望の1stアルバム『Live Love Laugh』をリリース。歌だけでなく、作詞や作曲でも才能を発揮した聴きどころ満載の今作について語ってもらった。

◆早見沙織~画像&映像~

■私自身が「フワッ」としているので歌詞もそういうのが多いんですが
■グッと力を入れて熱量多めで作詞しました


――アルバム『Live Love Laugh』が完成しましたね。早見さんは声優としてのキャリアも長いですし、キャラソンでも実力を発揮していたので、2015年デビューされるまで個人名義で音楽活動をしていなかったのがとても意外でした。

早見沙織(以下、早見):大学を卒業するまでは一つの道に集中しようと思っていたというのが理由なんです。

――なるほど。早見さんの歌を最初に聴いた時に、音楽大学で勉強していたのかなと思うくらい、歌の発声がしっかりしていて。声優さんは声のお仕事なので、演技のための発声はお勉強していると思うんですけど、歌とは少し違うと思うので、この歌唱力の秘密はなんだろうと思っていたら、ジャズヴォーカルのレッスンをしていたそうですね。

早見:ちょっとだけですけど(笑)。母がもともと歌がすごく好きで。プロではないですけど、小さい頃から持てる技をすべて教えてくれたんです。母がジャズヴォーカルのスクールに通いはじめた時も一緒について行って、ずっと見学していて。中学生くらいの時に、「よかったら、沙織ちゃんも一緒に歌ってみたら?」って言われて、そこから習いはじめたんですよ。


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――「門前の小僧、習わぬ経を読む」ということわざのような……。

早見:まさに(笑)。レッスンをいつも見てたというのは大きいと思います。それ以外に自分からヴォーカルレッスンの教室で習おうと思ったことがなかったんです。偶然そういう機会があって、母の付き添いで行って、その場所にも親しみがあったということでそこで習っていたので。ジャズは、学校で習う歌とは違うので難しさもありましたし、大人の歌詞が多い。英語の歌詞でしたけど、いわゆる深い恋愛とか(笑)。なので、スタンダードジャズの中でも可愛らしい楽曲を中心に歌っていました。

――その時の経験は、作品にも生かされていますよね。1stアルバム『Live Love Laugh』は、コンセプトは意識しないで制作したそうですが、映画やドラマを見ているように場面展開していく作品で。1枚目だからこそ、いろんな面を見せたいという思いが強かった?

早見:コンセプトを決めて作るのも楽しいと思うんですが、内容をどうするかという話し合いの時に、1枚目だから、逆にまっさらなところにいろんなものを乗せて行くようなイメージで作ったほうがいいんじゃないかということで。なので、挑戦した曲もあるし、カラフルな楽曲もあるし、よりどりみどり感のある作品になりました。

――挑戦した曲というと5曲目の「レンダン」ですか?

早見:そうですね。この5曲目は、アルバムを作る前にデモ楽曲の鑑賞会をしたんですけど、そこに含まれていた楽曲で。はじめに聴いた時は「かっこいいけど難しい楽曲ですね」って、そのまま通り過ぎていたんです。その後、アルバムを作ることになって、「例のあの曲、どう?」という話になり(笑)。まさか自分が歌うことになるとは思いませんでしたけど、ご縁があったことだし「歌ってみますか」ということで。原曲の段階では、スパニッシュテイストがもっと濃かったんです。カスタネットもたくさん入っていましたし。その状態だとこの曲のカラーがかなり強まってしまうので、アルバムの中でどう生きてくるのかなと考えて、アコーディオンを入れたり、ストリングスで色をつけて今の形になりました。

――作詞もされてますけど、すごくメランコリックな歌詞ですね。シアトリカルな曲だから、映像やライヴのイメージも浮かびます。難しいと思った曲に歌詞をつける作業はいかがでした?

早見:アレンジと歌詞を同時進行で作っていたので、原曲のイメージから受けたインスピレーションで書いた部分もありますし、編曲が上がったあとに「こんな色もあるの?」って考え直す部分もありました。私が作詞をしたときは、夕方くらいの時間帯で少し風が冷たくて……っていう、歌詞のままの状況で書いたので、そういう状況も言葉にも乗っているかもしれないですね。

――冷たい風を感じつつも、情熱的な心情が伝わります。

早見:楽曲が情熱的なので、そういう部分が言葉にも現れているのかもしれません。私自身は普段は「フワッ」としているので、歌詞を書く時も「フワッ」としたのが多いんですけど、グッと力を入れて、熱量多めで作詞しました。

――ヴォーカルの部分でもテクニックが必要ですよね。歌の最初からファルセットを駆使して。

早見:難しいですよね。この曲だけじゃなくてどの曲もそうなんですけど、楽曲をいただいたあとプリプロをして、そのあと本番なので、歌う回数が増えるごとにその楽曲に慣れていくのを感じながら歌っていいるんです。いつも試行錯誤なんですけどね。

――「レンダン」というタイトルもイメージが広がりますね。

早見:英字のタイトルも案としてはあったんですけど、カタカナにするのが一番含みを持たせることができるなと思って。漢字に変換することもできるし、カタカナだけのイメージもあるし、想像を掻き立てられたらいいなと。歌詞的にも想像して、いろいろイメージして聴いていただけたら嬉しいです。

――次の「あるゆらぐひ」もタイトルが全部ひらがなですよね。最初、呪文のようだなと思ったんですけど、漢字を当ててみると「或る揺らぐ日」なんだなと。

早見:これはあえてひらがなにして、固まっていない感じとかフワフワした感じを出したかったんです。楽曲自体も意思が強いという風でもないので、その不安定感みたいな雰囲気がちょっとでも乗ったらいいなという気持ちから、ひらがながいいなと。

――気持ちが落ち込んでモヤモヤっとした心境を表すのにピッタリですね。最後は前向きになっていますけど、早見さん自身もこんな心境になったことがあるからこそ書いた歌詞ですか?

早見:はい、私自身もこういう心境になったことはありますし、聴いてくださる方の中にも、思い当たる方がいらっしゃるかもしれないなと。もしかしたらこの先、こういう心境になって、ふと思い出してくれる曲かもしれないですよね。こういう心境になるのって、一瞬だと思うんです。その一瞬にスッと入って、隣り合えるような曲になったらいいなと思います。

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