【インタビュー】オワリカラ、メジャーデビュー作のテーマは「“変化”かなと思っているんです」

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■“イケてるぞイケてるぞ!”と言いながら録っていましたね(笑)
■メッセージは投げかけるものではなく、気付いたら残っているものだと思う

――アナログレコーディングの音は、密度が高いと思いました。

タカハシ:すごくいいんですよね。やっぱりドラムとベースをテープに通すとすごくあたたかい、存在感のある音になるんです。デジタルとアナログの違いは、無音状態があるかないかなんですよね。デジタルだとゼロという無音を作れるけど、アナログは音をしっかり止めたとしてもテープが回る音が入るわけだし、磁気で録っているものだから完全に消すことができない。それは人間が普通に生きてるこの状態と一緒だなと思うんです。僕らが一切音を発さなかったとしても、その音が鳴っていた空気はそこに存在している。だからテープはその場のムードを捉えることができると思うんですよね。だから演奏のテンションがそのまま音になるのかな。

――独自の新しい音楽を追求しているバンドは、やはり音源へのポリシーもどんどん細部まで突き詰めるようになるんだなと。

タカハシ:やっぱり何よりも自分が聴いていて楽しみたいから(笑)。…自分を奮い立たせるために言っていますけど、やっぱりドアーズとかピンク・フロイドとかクーラ・シェイカーみたいな、世界的にすごいロックバンドのアルバムと比べても戦えるものにしたいというのがずっとあるんですよね。今回もレコーディングのときにドアーズやデヴィッド・ボウイのアルバムをかけたあとに自分たちの曲をかけて、負けていないかどうかを確認するというか。“イケてるぞイケてるぞ!”と言いながら録っていましたね(笑)。「装備解除 in BED」とかはもろデヴィッド・ボウイの『レッツ・ダンス』というアルバムがすごく好きで、ああいうタイトな感じのソウルな音にしたくて。かなりこれはうまくいった。

――サックスもムーディーで、これは内にこもっているからこそ生まれた曲ですよね。

タカハシ:そうですね。趣味全開(笑)。この曲に限らず、それを1曲1曲でやることができた。曲のバランスを取らずに、周りのことを考えずに(笑)、やりきった感がありますね。「装備解除~」はパーカッションもいろいろ入れてます。あの時代の音楽はそういうものが結構入っていて、僕コンガやボンゴとかがポコポコ入っているの好きなんですよね。だから今回はいろいろ試していて。よーく聴かないとわからないものも結構入っていると思います。

――後半6曲はそういうものが多くて、前半6曲にはバンドのダイナミズムが前面に出たものが多くて。「すごいコンサート」はベースとドラムのインパクトが大きかったです。

タカハシ:オワリカラはベースが変なフレーズを弾いていて、ドラムはタイトというのがバンドとしての特徴でとてもいいなと思っていて。この曲はその部分がどーんと出ている。この曲、ベースが常識はずれに音がでかいんで(笑)。…今回はそういう常識と戦おう!というところはかなり大きかったんですよね。レコーディングには“この音はそんなに大きくしない”みたいな常識があるんです。それは長い間音楽が作られてきた結果生まれてきたものなんだけど、本当にそれがオワリカラにとっていいのかもう1回考えてみようという時間があった。それで“常識はずれでもいいじゃん! ライブではこれだけベースでかいんだから(笑)”みたいなところはありましたね。

――監督としてのヒョウリさんの意識がはたらいてこうなったと。

タカハシ:監督もだいぶ成長したみたいで(笑)。

――(笑)。パフォーマーであり、ものを作っているご自分と、監督をしているご自分は常にふたりいらっしゃるんですか?

タカハシ:常にふたりいるとだめなんですよ。それだと大体ものづくりはだめで、中途半端なものになっちゃう。ものづくりのときは100%パフォーマーが作っていて、編集するときは100%監督が出てくるというのが理想ですね。でも同じ人間なのでなかなかそこまでできないんですけど(笑)、でも出来る限り、リフやアイディアを出すとき、曲を作るときはやりたいだけやりたいようにやる。それを伝える段階になったときに監督に出てきてもらう、というところはあるかな。


――「どうくつぐらしのススメ」は4人の必殺技が炸裂している、ロック色の強い曲だと思いました。ラストのタメのところのドラムの音鳴りもいい。

タカハシ:この曲はセッションでリフを作って、そこから曲を作っていったので、すごくバンドらしさは出ているかなと思います。そのドラムは僕も気に入っていますね。アナログテープでレコーディングしたものをPro Toolsに全部流し込んで、そこで編集をする…というアナログとデジタルを5分5分の感じでやったんですよね。アナログとデジタルは別々のエンジニアさんにお願いして、僕もミックスをするので、3人で投げ合ってだんだんかたちにしていく。

――そのいい落としどころの結果が今回のアルバムであると。今後もこの方法を続けていくと。

タカハシ:そうですね。これをよりパワーアップさせていこうと考えています。ダフト・パンクもアナログレコーディングで、『レッツ・ダンス』のプロデューサーのナイル・ロジャースを迎えて制作していて。やっぱり70年代~80年代の音は密度が高いと思うんですよね。でも70年代の音をただ再現したいわけじゃなくて、それを要素として吸収しながら、いま鳴らしていちばんかっこいい音にしたい。もっと新しいものにする――それは世界中のミュージシャンが目指していることなのかもしれないですね。

――やはり70年代の音楽は独特の魅力がありますよね。

タカハシ:音楽に限らず映画でも漫画でも、自分たちはパイオニアなんだ! 新しい表現を切り開いていくんだ! という気合いがすごいから、悔しいけど濃いですよね。映画もモブシーンに出てくる名前のない役者も“俺が俺が”みたいな感じのギラギラしたものが出ている。役者だけでなく監督も脚本もみんなエネルギーがあるんですよね。だからオワリカラもエネルギーを発してリスナーに対して“こういう道もあるんだ”“こういう物事の見方があるんだ”ということを示していきたいなと。

――それが最もリスナーに伝えたいメッセージですか?

タカハシ:んー…当然とされていることが実は当然のことじゃないというのはあると思います。でも簡単に答えが見つかる時代だから、自分も含めて掘る能力や疑う力がなくなってきているのかなと思いますね。それは正しい正しくないではなく、「楽しくない」と思うんですよ。ちょっと疑ってみたり、物事の見方を変えるだけで景色がすごくカラフルになったりすること、それが生きていくことを楽しむ秘訣なんじゃないかなと思う。そういうメッセージが音楽のなかにちょっと忍び込んでいる――僕はそういうのがいいかなと思うんですよね。メッセージは投げかけるものではなく、気付いたら残っているものだと思う。子供の頃に見たアニメや特撮がなんとなく自分の中に残ってるみたいに、それが生きていくうえの指針になっている、そういうところがいいなと。オワリカラの音楽もそういうふうに、聴いてくれた人の中に何か残ってくれたらと思いますね。

――ではヒョウリさんがやりたいことがだいぶ実現できてきていますね。

タカハシ:まだまだやりたいことは無限にありますけど、オワリカラの1個勝負作は出来たかなと思っています。

――レコ発ワンマンが5月22日に渋谷Star Loungeで開催され、6月から7月にかけてリリースツアーもスタートします。

タカハシ:ライブのことを意識した曲も結構あるし、ライブだと印象が変わる曲もあると思うので、より振り切ってやりたい。これを完全再現しても面白くないと思うので、ライブではライブの良さを出していきたいし。ここ1、2年バンドの状態がとてもいいというか、自分的に“あ、このバンド演奏かっこいいじゃん”と思っているんで、それをバン!とできたら、いままで以上のライブになるんじゃないかなと思っています。

取材・文◎沖 さやこ

New Album『ついに秘密はあばかれた』

2016年5月18日(水)発売
■初回生産限定盤 CD+DVD ¥3,400+税 / TKCA-74355
■通常盤CD ¥2,900+税/ TKCA-74359
[CD]
1. へんげの時間
2. 今夜のまもの
3. 世界灯(ワールドライト)
4. すごいコンサート 
5. どうくつぐらしのススメ
6. ホモサピエンスは踊る
7. sign! sign! sign! sign!
8. 装備解除 in BED 
9. ペヨーテ
10. もっかいさいしょから考えてみよう。 
11. 裏の裏の裏の裏 
12. new music from big pink

[DVD]※限定盤のみ
・今夜のまもの MUSIC VIDEO
・シルバーの世界(Live on Dec. 5, 2015 ) 
・swing(Live on Dec. 5, 2015) 
・踊るロールシャッハ(Live on Dec. 5, 2015)
・ドアたち(Live on Dec. 5, 2015)
・Q&A(Live on Dec. 5, 2015)

<オワリカラ“ついに秘密はあばかれた”レコ発ワンマン>

5月22日(日) 渋谷Star lounge

<オワリカラ Major 1st Album『ついに秘密はあばかれた』リリースツアー>

6月6日(月) 広島4.14
6月23日(木) 千葉LOOK
6月28日(火) 埼玉 HEAVE'S ROCK さいたま新都心VJ-3
7月3日(日) 岡山 PEPPER LAND
7月4日(月) 福岡 Queblick
7月8日(金) 札幌 COLONY
7月11日(月) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd

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