【インタビュー】LUNKHEAD、「決戦前夜」に注いだ『うしおととら』への愛と自分たちらしさ

▲合田悟（B）

■10年前だったら、ここのブロックはきっとなかったですね
■何か面白いことができないかなとは企んでます

――「ユキシズク」はいつ頃作っていたんですか？　「決戦前夜」の制作を進めながら？

小高：去年の秋にタイアップが正式に決まってからが急展開で、年明けから本チャンのレコーディングに入らなきゃで。カップリング曲も入れなきゃいけないってなった時に、作りためてた曲の中で、「決戦前夜」と並んだときに、どれが一番勝負できるかと。そこで選んだのがこれだったんですね。

――Aメロの感じがLUNKHEADっぽくなくていいなと思いましたよ（笑）。

小高：最近ね、Aメロで頑張ってみるっていうのが流行りなんですよ（笑）。ずっとサビみたいな曲を作りたいなと頑張ってみました（笑）。曲ができた段階で、自分の中でも新しさがあったんですよね。すごくメロディがいい、これはいけるんじゃないかなって。純度100％のLUNKHEADな分、「ユキシズク」のほうが、何かニュートラルにアレンジしていってましたね。タイプ的には今までありそうでなかったような曲だから、各々がどう料理すればいいかなという迷いはあったんだけど、その迷い方もニュートラルというか。その意味でも「決戦前夜」とは両極端で面白かったですね。

――歌詞もその両極端さがありながら、先ほどの話のように、根底にあるものは同じなわけですね。

小高：うん。俺らがデビューしたときから聴いてくれてるお客さんからの手紙に、いまだに「白い声」の1番の歌詞から自分は抜け出せないでいるんですって書かれてたんですよ。＜本当は誰かに伝えたくて　叫びたくて　わかってほしくて　そういう気持ちを隠すことが　強さだとずっと思っていたんだ＞っていうところですね。10年経って、それを強さだと思うのは、本当は甘えてるというのもわかってるんだけど、やっぱり抜け出せないっていう。同じように感じている子はすごくいるんだろうなと思うんですよ。とはいえ、俺が何かを直接その子にできるわけではないんだけど、LUNKHEADを好きで聴いてくれている人たちには幸せになって欲しいと思うしね、無力ながらも。そんな気持ちから、何を歌えるかなと思って歌詞を書いたんですよ。その意味では、「ユキシズク」は「白い声」の続編というかね。ここからまたLUNKHEADが始まるっていう1曲になったなとも思うし。だから「白い声」の歌詞もここには入ってるんですよね。

――最後のサビ前に置かれた、＜分かち合うことの～＞以降の展開部が、ものすごく意味深いなと思うんですよ。

小高：結局、ここなんだなと思うんですよ。ここは歌も最後に録りましたからね。思う存分、これで声が枯れても大丈夫なように（笑）。どういう歌詞が来るかは、構成を練っているときはまだわからなかったけど、一番キーになるものが入ってくる部分だなとは思ってましたね、曲の中で最もエモいところだから。その子のしんどさを分かち合ってあげることも、救ってあげることもできないっていう気持ちはずっとあるんですけど、それでもやっぱり、笑って欲しいし、また前を向いて欲しいなと思うんですよ。そう思い続けることだけが、俺に許してもらえたことだと思って。それって多分、何もないのとは違うと思うんですよ。10年前だったら、ここのブロックはきっとなかったですね。

――ええ。それほどの重みがありますし、この曲の説得力が幾重にも増したんじゃないかと思います。

小高：ありがとうございます。ここはねぇ、女の子はキュンキュンするんじゃないかな（笑）。でもね、ライヴでやったときも、歌詞なんてろくに聞こえないだろうに、反応はすごくよかったですよ。

――“ユキシズク”というタイトルはどこから？

小高：ほぼほぼ歌詞が書けてから、タイトルはどうしようかなと思ってるときに、希望とか、慰めっていう意味の花言葉の花はないかなぁと思って調べたんですね。そこでスノードロップって花を知ったんですけど、日本で言う彼岸花とか菊みたいな、死を象徴する花らしいんですよ。そういうのもLUNKHEADっぽいなと思って。でも、“スノードロップ”だとかわいすぎるし、「決戦前夜」と並んだときのギャップも凄いので、そのまま直訳してみたら、“ユキシズク”っていうのが、何かすごくキレイな言葉に感じたんですよね。でも、調べてみたら、雪雫って言葉もあるんですよ。俳句では春の季語で、雪解けを表す言葉なんですけど、めっちゃ意味があるなと思って、そこから歌詞をまた変えました。最後１行の＜春がまたやってきますように＞というところも、違う歌詞だったんですけど、今の表現になったことで、そこでも芯が通ったなぁと思いますね。

▲桜井雄一（Dr）

――さて、6月には東名阪のツアー＜LUNKHEAD ONEMAN TOUR～決戦前夜～＞が決まっていますね。

小高：願わくは、この「決戦前夜」で初めて知った人にはぜひ来て欲しいですね。それと、こういう大きいタイアップだと、「LUNKHEADってまだやってたんだ？」って人がすごく出てくるんですよね。そういう人たちにも今の俺らを見て欲しいし。もちろん、いつも来てくれる子たちは来てくれると信じてますけどね。でも、そういう人たちがみんな一人ぼっちにならないようなライヴにしたいなと思いますね。

――一人ぼっちにならないようなライヴ、ですか？

小高：そう。俺もあるんですよ。他の人のライヴを観に行って、「みんな楽しそうでいいな、でも、俺には歌われてないな」って、寂しくなるときがあるんですよ。何か空気がハッピー過ぎて、疎外感を覚えるというか……それは俺のせいなんですけど（笑）。いろんな人が来ると思うんですけど、みんなが楽しかったと思えるような、一人一人にちゃんと歌いたいですね。伝わるライヴにしたい。あとね、長いツアーでも一回きりのイベントでもなく、東名阪だけを廻るのも久々なので、いつものセオリーと違ったことにも挑戦したいなとは、この間、桜井さんとも話してたんですよ。何か面白いことができないかなとは企んでます。

――その頃には次の展開も何か明らかにされそうですよね。今回のシングルを聴けば、『家』に続くアルバムなどを期待してしまうのが、ファンの心理だと思うんですよ。

小高：そうですね。どういう形になるかわからないけど、めちゃめちゃ期待しといてください。今、もう半分ぐらい録れてるんですけど、カッコよすぎて、自分でもびっくりしちゃってるんですよ。

取材・文◎土屋京輔