【インタビュー】ZYUN.『混合シナプス』大丈夫って言いたいし自分自身も言ってもらいたい。こういう音楽があってもいいと思う
――2曲目「I.D」までロックサウンドが続いたら「My Star」からはテンポが少し落ちますよね。次の「She」もバラードなんですが、この中盤の流れはテンポが落ちてもすごい盛り上がりで。
ZYUN.:実は「She」だけはレコーディングの方法が他と違うんです。ほぼ一発どりで、最初から一息で歌うというやり方をしているんです。
――どうして?
ZYUN.:僕、ライヴだと意識がなくなるんですよ(笑)。それくらいライヴだと無心で入り込んでいるんですね。そんな感じだから、何度もみんなが聴いてくれるCDはライヴの時とは違って、感情を少し抑えて、聴きやすく、ちゃんと歌詞が届きやすい歌を歌おうって意識しているんです。でも「She」だけは、それを意識せずに歌いたかった。この曲だけある意味別格。歌い方もレコーディングの仕方も違って感情がそのまま。ライヴに近い形なんです。
――なぜ、そういう風に歌おうとしたの?
ZYUN.:これを書いた時の感覚が、自分の中でのベストに近かったからだと思います。その状態を、聴いてくれる人にそのまま伝えたかった。それをやめてしまったら「She」という楽曲がかわいそう。曲が死んでしまうので、聴く人に対してとても失礼な楽曲になって、時間を無駄にしてしまう感じがしたので。だからやっぱり自分が一番ベストだと思う状態で伝えたくて、感情にフタをせず、モニターも切って、照明も全部消して歌ったんです。
――へぇ~。
ZYUN.:この曲は初めてピアノで作ったんですよ。僕、ピアノ弾けないのに。すごく不思議な感覚だったんですけど、作りながら、「このまま僕はどこへ行くんだろう?」って、ちょっと意識がありつつ、そのまま歌いきった曲なんです。だから、楽曲自体の構成も変わってるんですよ。でもこういう音楽があってもいいかなと思って。
――「My Star」の最後に「君に出逢えて良かった」ってフレーズがあって、「She」に続いていくからより感動的ですし、すごく伝わってきました。深い愛の歌ですけど、どうしてこんな歌詞が生まれたんだと思いますか?
ZYUN.:どうしてですかね(笑)。僕、みんなに変わってるって言われるんですけど、基本的に一曲に対してベースを作っていく作業って15分以内なんです。それ以上時間をかけて作ると頭が動いてしまうので。一度、自分でヘッドホンをつけて歌いながら曲を作りきったあとに、もう一回ヘッドホンをつけて聴きながら歌詞を書き起こすんです。何を歌ってたんだろうなって。だから、そこで初めてこの曲を聴く第三者の気持ちになるんです。「こういうことを今の俺は感じているんだ」って思いながら歌詞を起こしていって。
――すごい作り方ですね。
ZYUN.:だから僕自身、どうしてこういう歌詞になったのかというのは後から知ることの方が多いかもしれない。きっと、聴いてくれる人にとっての音楽もそうだと思うんですよ。自分が今こうだからこういう曲が聴きたいっていうピッタリの曲もあると思うんですけど、思い出って、その人と一緒に生きていくものだから、変わっていきますよね。
――確かに。
ZYUN.:僕が歌ったこの4分間の歌が、聴き手に渡ることでその人の4分間になっていって。そういうところが音楽の素敵なところ。好き勝手に一緒にいられるんですよね。だから、その人がこの曲を聴いた状況によって、曲の意味も変わるし、後から気づくことがある。この歌詞も、僕自身、「ここにはこういう意味合いがあったんだ」って、後から気づくことがきっとあると思うんです。出来た今だから言うと、この曲は、生涯の伴侶と巡り合った方に響いたらいいなって思っていて。ある意味、あきらめることも愛情だったりするじゃないですか。あきらめることって許すことでもあって、ちょっと際どいところで同じですよね?
――そうですね。
ZYUN.:誰かと一緒にいることや、何かをするって決めてから、自分の中で「ずっと」という言葉を信じて、例えば結婚を決めたりする。でも、いつか絶対にどっちかが先にいなくなる。「She」は、大切な何かと寄り添った人……それが人ではなく夢や自分自身でもいいんですけど……そういう存在と最後まで寄り添った時に聴いてもらいたい。口づさんでもらいたいな。今、ずっと一緒にいたいと思える人がいたり、夢を持っていたりする人を包んであげられるような壮大なバラードになったらいいなと思います。
――7曲目の「D.C.T」は「Dream come true」の意味ですよね?
ZYUN.:その通りです。
――「叶うよ。信じれるなら」がすべてを物語っていますよね。英語の歌詞が多いからこそ日本語が浮きたつ曲だなと。
ZYUN.:もう本当にそうなんです。「叶うよ。信じれるなら」が伝わればこの曲はそれで良くて。「信じるものは救われる」って本当にそうだと思うんです。信じるだけで、叶うわけじゃないけど、努力しても、それが反映されるとは限らない。現実的にいえば、やった分だけ返ってくるなんていうのはありえない。でも、僕は、音楽をやっている以上はそう言いたいんです。「そんなに夢ばかり語っていても無理じゃね?」って笑われても夢を見て生きていたいタイプなので。無理して音楽は出来ないですから。だから、君が信じるって言うならきっと叶うよって永久に言ってあげられる音楽がやりたい。で、このアルバムの最後をそれで〆たんです。
――この作品って、全曲を通して「大丈夫」って言われてる気がするんですよ。特に「かげおくり」の歌詞にも直接的に「ダイジョーブ」っていう歌詞が出てきますし。今って、未来が見えないからみんな不安を抱えてるようなところがあるじゃないですか。だから、根拠がなくとも大丈夫って言われたいと思うんですよね。
ZYUN.:根拠はないです。でも、大丈夫って言いたい。自分自身も言ってもらいたいのかもしれない。「かげおくり」はファンの子に思うことがすべて書かれているんです。3月14日にライヴをやった時に、この曲を1曲入りで、ただ「かげおくり」ってタイトルだけを書いた真っ白なCDを初ライヴ記念で販売したんです。ひっくり返すと「DEAREST LOVEIST」って書いてあって。僕はファンのことを「愛の最上級」という意味を込めて「LOVEIST」と呼んでいるんです。まさにあの時歌った「かげおくり」はファンのためでしかなかった。今回は自分のファンだけではなく、たくさんの人にメジャーデビューということで聴いていただけるっていうことで、もっと広いところに目を向けた時に、嘘偽りなく歌えるサウンドにしたんですが、これがまさに僕の音楽を今後好きだと言ってくださるすべての方に思うことなんです。
──なるほど。
ZYUN.:こういう音楽があってもいいと思うんですよ。本来、自分の中では、ちゃんと「大丈夫」って言ってあげられる、そういうものが音楽だったらいいなと思っているのんです。僕、ディズニーがすごく好きなんです。ディズニーが好きな理由と僕の音楽がこうありたいという理由は一緒なのかもしれない。ハッピーエンドっていいじゃないですか。やっぱりみんな笑いたいですよね。
――絶望的なものを見せられるより絶対にそっちのほうがいいですね。
ZYUN.:ですよね。だって、きっと生きている中で、みんな絶望や、孤独を感じる時もあるし、もしかしたら生きる事をやめたいと思うときもあるのかもしれない。大切な誰かを思えば思う程空回りしたり。費やして買ったCDでは「人生って信じても無理なんだよ」ではなく、最終的にその逆を伝えていきたい。勿論、そういう音楽も必要だし素敵だけど僕は違いました。みんな、十分、生きているだけで頑張ってるから。せめて……って思うんです。
取材・文●大橋美貴子
『混合シナプス』
初回限定盤 MUCD-8074/5 CD+DVD ¥2,800(税込)
通常盤 MUCD-1354 ¥2,000(税込)
1.Wake Up and “D”
2.I.D
3.My Star
4.She
5.勾玉
6.かげおくり
7.D.C.T
ライブ・イベント情報
2016年5月13日(金)渋谷eggman
・e+ 4/13 10時~発売
【出演】ZYUN./アマオト/TIMELINE/naco/Yeti/and more.
<ZYUN.Live at TOWER RECORDS SHIBUYA Vol.0>
2016年5月26日(木)20:00~
@タワーレコード渋谷店B1F「CUTUP STUDIO」
<Advent ~baptism~>
2016年6月24日(金)Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
[問]SOGO TOKYO 03-3405-9999 http://sogotokyo.com/
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