【インタビュー】exist†trace、“今”を貫いた作品に「戦ってこそ私たち」

ポスト

exist†traceが3月16日、前アルバム『WORLD MAKER』より約1年半ぶりの正式音源となるミニアルバム『THIS IS NOW』をリリースする。2015年のexist†traceは活動の中心をライヴに据え、音源面ではライヴ会場限定ワンコインCDを発表するなど、バンドの基礎体力をますます強固なものにしてきた。もちろん、その間も新曲制作は精力的に続け、ステージではいち早く彼女たちの新たな姿を披露している。

◆exist†trace 画像

男よりも男らしいロックバンドexist†traceは、その勇ましいど根性ライヴで、ジャンルや性別、国籍まで超えた活動で注目を集めてきた。メンバー5人は全員女性。ヴィジュアル系からバンドをスタートさせた彼女たちが、鋼鉄のような強い心で一丸となって戦い続けた結果、この5人がいれば何も怖くない、どこまでもいける、と高らかに歌い上げた作品が最新ミニアルバム『THIS IS NOW』だ。

“不器用に生きてきた”(「THIS IS IT」)という彼女たちの、ここに至るまでの信じられないようなバトルエピソード史と、それに反する可愛らしい素顔について、ヴォーカルのジョウとギター&ヴォーカルのmikoに訊いたロングインタビューをお届けしたい。なお、『THIS IS NOW』は、たくさんの人に気軽に手に取ってもらってもらいたいという気持ちから、また「絶対に惚れさせますから!」(ジョウ&miko)という意気込みから、CD音源のみのワンコインならぬ“ワン野口CD!限定トライアル盤”も発売される。サウンドに対して絶対の自信を持った意欲作の完成だ。

   ◆   ◆   ◆

■最初は“女だからってナメんなよ”と斜に構えていたんですけど
■表現するのであれば、もっと自然体でいけたらと気づいて

──日本のガールズバンドの歴史のなかで誰もやってなかった“ヴィジュアル系”をやろうと思ったのはなぜですか?

ジョウ:当時、自分たちが好きだったのがヴィジュアルシーンの音楽だったので、女性だけでやったらカッコいいだろうなっていう、そういう単純な理由だったんです。そのシーンに男しかいないことなんてまったく気にせず(笑)。

miko:意気揚々と始動してから、初めて女性のヴィジュアル系バンドは難しいものなんだと知るんです。まず、ライヴハウスでお客さんが戸惑うんですよ。

ジョウ:“男だろうな”と思っていたところが、歌声を聴いて“あれ?”って。

miko:女性だとわかるとお客さんが混乱するというか。やりだしてみて、“ああ、なるほど”と気づいたんですね。じゃあやり方を考えなきゃと。そこで男っぽい格好をして。

ジョウ:あえて低い音域で歌ったり、曲調も暗めだったり。

miko:“暗っ”“重っ”みたいな(笑)。活動すればするほどファンになってくれる人もいれば、“なにあれ!?”という反発もあって。当時のライヴの感想を書いてもらうアンケートには、赤ペンで大きく“死ね”と書かれたり。

▲ジョウ (Vo)

──えーっ! 本当ですか?

ジョウ:「そのうち男の黄色い声援とか増えるんだろ?」と嫌味を言われたり。

miko:今では笑い話ですけどね。でも、“なんなのそれ?”っていう反発があればあるほど、シュンとなるんじゃなくて「じゃあ、認めてもらうまでやる!」っていう負けず嫌い精神で、男性に負けない男性以上にカッコいいサウンドやステージングをしてやる、というところに燃えてた時期がありましたね。

ジョウ:そんなことを続けていく中で、女だってことを一番気にしてたのは自分たちなのかな?っていうことに気づいて。

miko:自分たちが何を表現したかったのかっていうところに立ち返ったときに、“このままじゃいけない”と。ジョウは女性で、女の声で歌うわけだし、私は私で歌詞を書いてきたけど“僕”という言葉はどうもリアルじゃない。そういうことを特にこの2人が感じていて。もっと自分たちの思いを表現するのであれば、女性であることをまず自分たちが認めて、それを生かせる部分は生かして、もっと自然体でいけたらということに気づいて。

──無理して男っぽくなるんじゃなくて、女性として戦い出す。それがいつ頃ですか?

miko:アルバム『Annunciation-the heretic elegy-』(2006年12月発表)を出した頃ですね。そこから私もスカートを履きだしたんです。それまではさらしで胸を……。

▲通常盤『THIS IS NOW』

▲ワン野口CD!限定トライアル盤『THIS IS NOW』

──えぇーー!

miko:全員男にしか見えない格好にこだわってましたから。でもライヴではさらしが苦しくて(笑)。

ジョウ:当時はひたすら激しい曲ばかりだったから、自分もゼェゼェなりながら歌ってました(笑)。

miko:ははは。“これ、おかしいよね”と思ってからは、アルバム『Annunciation-the heretic elegy-』でスカートを履き、歌詞の一人称にも“私”が出てきた。どんどん自分たちが表現したいものにシフトしていくのと並行して、自分たちの肩の力も抜けていったんですよね。

──お客さん側の意識も変わりました?

miko:はい。最初は私たちも“女だからってナメんなよ”って気持ちでどこか斜に構えていたんですけど、それが“見て”というステージングにどんどん変わっていったら、共鳴してくれる女性のお客さんがブワッと増えました。それはすごく嬉しかったですね。

──それと並行して、海外での人気もどんどん膨れ上がっていったんですよね?

ジョウ:そうですね。初めて作ったミュージックビデオが海外で話題になったみたいで。

miko:YouTubeを通して“なにこのバンド、カッコいい”という評価が届くようになって。“私たち、海外の人にも共感してもらえるんだ”ってすごく驚いたし、嬉しかった。

ジョウ:日本のライヴではヴィジュアルシーンのお客さんが多かったんですけど、海外ではB系ファッションの人が曲を口づさみながら楽しんでくれたり。exist†traceがカッコいいから、ということだけで評価してくれてて。そこでも改めて、“こうじゃなきゃダメだ”って決めつけてたのは自分たち自身だったんだなっていうことに気づかされましたね。

miko:そこからヴィジュアルシーンだけではなく、他のシーンに私たちの音楽を持っていったらどうなるんだろうっていう感じで踏み出してみたら、ジャンル関係なく「exist†trace、カッコいいね」と言ってくれる人がいっぱいいることがわかって。ラウドシーン、アイドルシーン、それこそガールズロックシーンにもどんどん踏み込んでいけちゃったんです。どこにいっても馴染めないのが私たちの普通なので(笑)、怖くはなかったですね。常にアウェイというのが私たちだから。

──アウェイだけど、いってみるとそこに新しい世界があった、と。

miko:はい。だから最初に“死ね”とか書かれたときに、折れなくてよかったと思います。そこで心が折れてたら、その先にこんなに広い世界が広がってたことにも気づけなかったし。

ジョウ:辞めないでよかった(笑)。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報