【対談】沖ちづる × 藤枝憲 (Coa Graphics)、「ガケから突き落とされても歌い続けたい」
■この緊張感も、この時にしか出せないもの
■このアルバムを聴けば、19歳の自分がいつでもいる──沖ちづる
▲1stミニアルバム『景色』 |
沖:「光」のビジュアルイメージを考えている時にも、モノクロというアイディアがあったんですが、「景色」という曲ができた時に、今度はモノクロでと思って。街中のロケーションで風景写真を撮るという話も出たんですが、最終的には自分という被写体をパキッとモノクロでみせようと思いました。
藤枝:“私”という人物にフォーカスした方が強いビジュアルになるかも。そんな意見を客観的に話してくれたので、なるほど、と。
沖:「景色」は、この先、どんな場所が待っていたとしても歩みを進めていこうという決意をこめた曲だったので、私を出した方がいいかなと。
藤枝:このジャケットに写っている沖さんの視線の先には、景色があるように見えるよね。「光」はふわっとした写真だったけど、この『景色』でパシっと沖さんに焦点を合わせた。これは沖さんのポートレート。“沖ちづる”っていう存在を感じる、すごく不思議なテンションの写真になりましたね。
沖:シリアスにしようって話が出てたかな……。
藤枝:でも、シリアスなのにユーモアもある。何だろう、この感じは。
沖:本当に、すごく不思議な写真ですよね。
藤枝:うん。表情も不思議。なかなかこれは撮れない。こういう言語化できない感じが、意外といいんだよなあ。
沖:シルエットも面白いなって思います。
藤枝:それにしても根性の座った顔をしてるなあ(笑)。
沖:この写真も、どういう歌を歌う人かわからない感じがありますよね(笑)。
藤枝:被写体として“私、曲げません”みたいな強さも出てる。
沖:このジャケットがCDショップに並んでいて“何だ、こりゃ”って思ってもらえれば面白いなって思いました。
藤枝:ねえ。でも、独特の可愛らしさは相変わらず残ってるんだよなあ。
沖:肌の質感も独特ですよね。人形っぽさもあるし。
藤枝:この『景色』も笹原君が撮影してくれたけど、笹原君はモノクロや夜の写真も、すごくいいんですよ。シルバーっぽい感触も、モノクロならではの印象だよね。
沖:このミニアルバムは「景色」も、それ以外の収録曲も共通して持っているのは寂しさ。冷たいとは、また違う感じの。その空気感を表現できた写真にもなりました。これが撮れた時に“ジャケットはこれだな”って思いましたし。
藤枝:うん。この撮影は他にも“使いたい!”と思う写真がいっぱい撮れたけど、現場でもこの写真が一番評判よかった。あと、僕のなかでは、このジャケットの印象は“ソリッド”。ちょっと突き放している感じ。無機質さのなかにある有機物みたいな、そんなクールさがあるジャケットなんですよね。
◆ ◆ ◆
▲1stフルアルバム『わたしのこえ』 |
▲1st DVD『わたしのこえ』 |
藤枝:リリースペースを考えても、濃密です(笑)。一昨年の秋に初めて観たライブから半年くらいしか経ってないのに、ライブ録音なんて。当日のライブは観ているこっちがドキドキしましたね。
沖:ライブ中は“今、お客さんに歌を届けなきゃ”という思いの方が強くて、歌うことでいっぱいいっぱいでした。録音されているんだって考える余裕もなかった。ただ、ライブ録音は面白いなって思っていて。しかもフルアルバムだし。
藤枝:恐ろしいなあ(笑)。
沖:十代最後のライブ盤は、一生でこの時にしか出せないものだし。この緊張感も、この時にしか出せないもの。このアルバムを聴けば、19歳の自分がいつでもいるっていうのは、すごくいいなって。
藤枝:そうね。でも1stアルバムがライブ録音なんて、もし自分だったら、緊張して絶対に楽しめないな(笑)。
沖:すごく生身な感じがしますよね。このライブの直前に喉を痛めて、場合によっては、タウンホールのライブは中止という状況でしたし……。
藤枝:濃密な日々を過ごしてるなあ。
沖:もちろん焦ったりもしましたけど、逆に歌えない期間があったからこそ、当日は歌に集中できたところもありました。
藤枝:なるほど。僕のなかでは、「光」から『わたしのこえ』までで、沖さんのひとつの流れとして繋がっている感じがしてるんですよね。
沖:そうですね。“どんな人が歌っているんだろう”と思わせる「光」や『景色』と違って、『わたしのこえ』で、やっと“ああ、この人がこういう歌を歌うんだ”と聴き手の方にわかってもらえるようになりましたね。
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