【インタビュー】PUSHIM「歌う前にちゃんとやってくるんですよ。いろんなドラマが」
■戦わない人間の強さを養っていきたい
■黒人音楽には、シンパシーを感じますね
――アルバムの中盤に、ピースなメッセージを集めたメロディアスな曲のパートがありますね。特にピアノ・バラードの「Keep Peace Alive」はとても大切な曲だと思います。
PUSHIM:「Keep Peace Alive」は去年の頭に作ったんですけど。いろんな世の中の情勢が変わっていくのを垣間見ていて、日本人が人質になる事件もある中で、これは遠い国の出来事じゃなくなってきたなと思うところから、不安にかられた人たちはたくさんいてると思うし、自分もまったく同じで。もし争いに巻き込まれたとして、人質になった当事者や家族のことをいろいろ考えてみたりしたんですけど、結局、家族を戦争で失うと、それが憎しみに変わって、報復に変わるわけで。ずーっと同じことの繰り返しですよね。そういうことを思って、歌にしたいなという思いがありました。去年はちょうど戦後70年やったじゃないですか。そういうのもあって、この歌をいろんなところで歌いました。
――強いメッセージソングですけど、優しい歌だと思います。攻撃的ではないし、強制的でもない。PUSHIMさんらしいと思います。
PUSHIM:曲調もありますけど、そうですね。そういうことよりも、戦わない人間の強さを養っていきたいと私は思っているので、それを言葉にしたかったんです。
――その次の「A Place In The Sun」。スティーヴィ-・ワンダーの若き日の大ヒット曲のカバーですけど、これも本当にいい曲。
PUSHIM:昔から大好きで、いつか歌いたいなと思っていたんですけど。去年の10月に韻シストとツーマン(ライブ)がありまして、そこで歌おうかなと思って、その流れでレコーディングもしちゃおうと。私も移籍があったので、門出にはちょうどいいんじゃないかなと思います。自分にふさわしい曲だなと思いました。
――この歌詞、元々は60年代の公民権運動が背景にあるみたいですね。陽のあたる場所へ、夢に向かって、さぁ行こうという、すごく深い意味がある。いいメッセージソングって、表面だけではない深いものがあるなぁとあらためて思ったりしました。そういうことを踏まえて聴くと、優しさの中に複雑な感情が見えてきます。
PUSHIM:黒人音楽には、シンパシーを感じますね。熱いものが、憎しみとか、愛とか、わーっと出るような音楽が、昔から好きだったので。
――だからこそ「The Original Love Song」みたいな幸せいっぱいのラブソングにも、重みがあるんだと思います。
PUSHIM:結婚式の歌ですね。私は結婚してないですけど、去年は人の結婚式ばかり行ってたので(笑)。そういう歌を作らな、と思って作った曲です。
――こうして見ると、いわゆるレゲエ・ビートの曲はむしろ少ないですか。
PUSHIM:今回はそうですね。ジャマイカに行って制作ができなかったこともあって、周りの近い人たちと一緒に、1曲ずつ作るということがテーマで、それを集めたものをアルバムにするということだったので。「もっとレゲエを入れなあかん」とか、そんなこと何も考えずにやってたんですよ。MUROくんの「Feel It」の話もそうですけど、パッと聴いて「いいやん」と思ったものを、今回はどんどん作っていくという作業でした。
――とはいえ、ラストチューンの「Family」はシンプルなレゲエ・チューンで、最高にあったかくて気持ちのいい曲でした。
PUSHIM:HOME GROWNとは、間違いない感じですね。ライブでHOME GROWNを紹介する時に、即興で歌ったのがこのサビのメロディやったんですよ。それを曲にしていこうという話で、作りました。
――この歌詞は自伝みたいで、PUSHIMさんは本当に素になっているように聴こえます。父親とケンカしたとか、事実かどうかは知りませんけど(笑)。
PUSHIM:事実です(笑)。学生の頃はよくケンカしてました。
――そういうエピソードも含めて、自分を愛してくれる周りの人のことを、素直に書いていて。
PUSHIM:そうですね。周りの人へのラブソングです。
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