【インタビュー】PUSHIM「歌う前にちゃんとやってくるんですよ。いろんなドラマが」

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2015年、PUSHIMは一つの大きなターニング・ポイントを回った。15年間所属したレーベルを離れ、自ら立ち上げた新レーベル“Groovillage”を設立。より自由により刺激的に、水を得た魚のような彼女の喜びは、新境地のディスコ・レゲエにトライした先行配信曲「Feel It」にはっきり表れているが、その曲を含むおよそ3年ぶりのアルバム『F』は、期待をさらに上回る素晴らしい作品だ。骨太なレゲエをバックボーンとしながら、ここまでポップに軽やかに、ソウルあふれる歌声で深いメッセージを伝えることのできるシンガーが、今どれだけいるだろう。2016年初頭、まず聴くべきアルバムはこれだ。

◆PUSHIM ミュージックビデオ

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■禿げる思いでした(笑)
■歌う前にちゃんとやってくるんですよ。いろんなドラマが

――15年所属したレーベルを離れて、新レーベル“Groovillage”では初のオリジナル・アルバム。あらためて実感は?

PUSHIM:「初めての引っ越しをしました」とみなさんにはお伝えしてるんですけど。歌い手としてこの15年間、メジャーで同じレーベルにいてて、いろんな経験もさせてもらったんですけど、このままでいてたとして、歌を作ることがマンネリ化して面白くなくなったりしたら嫌やなというのがあって。違う環境で、もしかしたらもっとしんどくなるかもしれないし、良くなるかもしれない場所に行くというのは、刺激的で、音楽にもっと反映されるんじゃないかな?というのがあったんです。

――実際、刺激はありました?

PUSHIM:そうですね。これは聴く人には関係ないですけど、今までで一番ぐらい、めっちゃ短い時間で作ったんですよ。移籍の関係もあって。でもこれを乗り越えられたらまた成長できるなと思ってたし、こういう経験をしておこうというのはありましたね。短い期間の中でも今までと変わりない、さらに上のクオリティのものを作れる歌い手に私はなれるか?というところにフォーカスして、1曲ずつ作っていきました。

――やるべきことを一つずつ。

PUSHIM:禿げる思いでした(笑)。今までのように、アルバムの全体像を「今回はこういうものにする」というものがあって始まった作業ではなかったので。作りつつ、考えつつ。客観的に見れる余裕もなかったので、一番自分らしいものを作るしかなかったんですよね。

――素晴らしいアルバムです。スローやミドルの曲が多いこともあって、とてもあたたかく柔らかく胸に響く曲がたくさん入っていて。

PUSHIM:うれしいです。ありがとうございます。

――ミドル、スローが多くなったのは自然にですか。

PUSHIM:何か、集まったんですよね。それがいいんかな、悪いんかな、とは思いましたけど、1曲1曲でいい楽曲を作ることだけに専念しました。

――ちなみに、一つ前のアルバムが『It’s A DRAMA』。当時のインタビューを読むと、「初めて恋愛してない状態で作ったアルバム」と言っていて。

PUSHIM:そうなんですよ。しました、あれから。

――そうですか。良かった(笑)。

PUSHIM:したといっても、そんな大したものではないですけど。だからすごい女くさいアルバムになってますね、今回は。そういう気持ちがあると、歌って書けますね(笑)。

――男から見ると、女性の恋愛パワーってすごいなぁと思います(笑)。かなわないです。

PUSHIM:『It’s A DRAMA』はまったく恋愛をしてない状態で作ったもので、あれはあれで大好きなんです。でもこれがずっと続くと、書くことがなくなるんちゃうかな?という怖さがあったんですよ。だから今回のアルバムに取り組む前までは、「何が書けるかわからへん」って周りにも言うてましたし、どうしようって思ってたんですけど、恋にしろ、ほかに自分に起こった出来事にしろ、歌う前にちゃんとやってくるんですよ。いろんなドラマが。それで歌が書けるって、なんて恵まれてるんだろうと(笑)。

――それって何なんでしょうね。

PUSHIM:いいことにしても、悪いことにしても、心が動くということは、そう毎度ないわけじゃないですか。だから、たとえば恋をした時に、心臓がぎゅーっとなったりすることって、「これは書かな、もったいない」と思ったり。そのための歌い手ですから。

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