【インタビュー】黒木渚、快作『自由律』であらゆる定型を破る。「捨てる覚悟をした女としては、後戻りできない」

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■一緒に行こうじゃなくて、
■“私、先行っとくからついてきなよ”という感じ



── もともと音の好みとしても広いというか、こだわりは特にないですか。

黒木:そうですね。サウンドはノージャンルというか、何でもいいんです。私は絶対音感とかはないんですけど、音から得るイメージは、妄想時代に築いてきたものがあるので。“この音は馬のひづめの音に聴こえる”とか、そういう感覚を大事にしてるんですよ。独特ですよね。音楽をずっと真面目にやってきて、ルーツミュージックとか、目指してるスターがいる人とは違う方向から来ている感じはします。

── かといって、定型がなければ解放のされようもない。

黒木:そうなんですよね。定型というか、根本的に人間が心地いいと思うパターンって絶対にあると思うんですよ。四つ打ちだと体が動いちゃうとか、気持ちいいと感じる黄金のコード進行があるということは、根本的に何かがあるんだなと。そこは大いに取り入れていくべきだと思うし、ベタな部分は全然あっていいんですけど、その上に乗っかってるものは、面白いものをどんどん試してみて。それがどんなに突拍子もないものだったとしても、面白ければ全然いいやと思うので。

── そこはアレンジと、ミュージシャンの力は大きいと思います。

黒木:そうですね。演者はその曲をすごく左右するなと思います。柏倉(隆史)さんは私の中では殿堂入りしてるドラマーで、どの曲でも大丈夫なんですけど、BOBOさんみたいに独特のグルーヴを持っている人は、それに似合う曲があるし。キタダマキさんは構成をしっかり考えるベーシストで、恒岡章さんは“うんうん”ってずっと聞いてるけど、ドラムを叩き出すと猛獣みたいになる人だとか。それぞれのやり方があるんですよね。アレンジはすごく面白くて、たとえば「大予言」は、曲の内容からいったらああいう中華風のフレーズは普通出てこないんですけど、プロデューサーの松岡モトキさんと話してるうちに、“中華風のフレーズって耳に残るよね”ということになって、入れてみたりとか。「107」も、すごく暗い曲だから、“独り身の女性に「染みる」と言ってもらえる曲にしよう”とか言って、参考音源を持って来てくれて、みんなでそれを聴いたりとか。「107」は狭い空間の中で歌ってる曲にしたかったんですよ。ヘッドホンで聴いた時に耳元で歌ってる感じにしたいから、私が“ノラ・ジョーンズのボーカルミックスに近い感じで”とか言って、距離が近くて、声の質感も乾燥した感じにしてもらったり。面白い演奏をする人って、人としても面白いから、毎日いろんな話でワーワー騒いでたし、レコーディングは毎日楽しかったですね。

── という、様々なサウンドにトライしたアルバムでありつつ、言葉とメロディは黒木渚節をキープしてる。メッセージ的には、聴き手を励ましたいという気持ちを強く感じました。

黒木:そんな感じでもないんですよね。“私はあなたのことを見ているからね”ということかもしれない。一緒に頑張って行こうということはすごく感じているんですけど、手と手を取り合って足並み揃えて一緒に行こうじゃなくて、“私、先行っとくからついてきなよ”みたいな感じ。でもそのスタイルは、ひねくれ者にはぴったりというか、頑張れ頑張れと言われても、“うるさいな”って、頑張れないタイプの人もいっぱいいるじゃないですか。そういう人たちには、黒木渚の曲はすごく効力があるんじゃないか?と思うんですよね。

── ですね。確かに。

黒木:ドライなんだけど熱いみたいな。ツンデレみたいな(笑)。強い言葉も言うし、“ちゃんとついて来ないと振り落とすよ”とかファンの人には言ってきたけど、根本的にファンの人のことがすごく好きなんですよ。すごく大事な存在だからいつも考えてるし、握手会とかもすごくうれしいし。

── アルバムが出たあと、年末から年明けにかけてツアーが待ってます。何を見せたいですか。

黒木:夏にショーケース的なフリーワンマンツアーをやって、いつもと比べると時間も短めだったんですけど、今の黒木渚をうまくパッケージングできたと思っているので。新しく見に来てくれた人も増えたし、新旧織り交ぜて次のツアーには参戦すると思うんですよ。そう思った時に、今まで応援してくれてる人には“これぞ黒木渚”というものを見てもらわなきゃいけないし、新しく来てくれる人には“思っていたよりヤバかった”みたいな、甘く見てたと思わせるぐらい、黒木渚節を炸裂させていかないとなと思っていて。ライブでの視覚的な要素、身体表現、曲間の演出とか、黒木渚の最大の特徴だと思っているので、全体に流れているストーリーを入念に作ってみんなを待っておかなきゃと思います。楽しみですね。





2nd Album『自由律』

2015年10月7日発売
■限定盤A:CD+本(連作小説「壁の鹿」全6話)
LACD-0263 ¥4,200+税

■限定盤B:CD+LIVE DVD(2015.7.22 恵比寿LIQUIDROOM ライブ映像 全8曲収録)
LACD-0264 ¥3,000+税

■通常盤
LACD-0265 ¥2,000+税

[収録曲]
1. 虎視眈々と淡々と
2. 枕詞
3. 大予言
4. アーモンド
5. 107
6. 命がけで欲しいものひとつ
7. テンプレート
8. 君が私をダメにする
9. 白夜

<黒木渚 ONEMAN TOUR 2015「自由律」>

11月22日(日) 福岡DRUM LOGOS
OPEN/START 17:00/17:30
チケット料金:前売り¥3,800

12月6日(日) 大阪BIG CAT
OPEN/START 16:30/17:30
チケット料金:前売り¥3,800

12月13日(日) 名古屋ボトムライン
OPEN/START 16:30/17:30
チケット料金:前売り¥3,800

12月19(土) 仙台MACANA
OPEN/START 17:00/17:30
チケット料金:前売り¥3,800

12月20日(日) 札幌DUCE
OPEN/START 17:00/17:30
チケット料金:前売り¥3,800

2016年1月11日(月・祝) 東京EX THEATER ROPPONGI
OPEN/START 16:30/17:30
チケット料金:前売り¥5,500

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