【ライヴレポート】Sadie、活動休止「俺の人生のすべてでした」
2005年の結成以来、悲しみから生まれるヘヴィネスを生きる力に変え、シーンで確固たる地位を築いてきたSadieが9月21日、Zepp Tokyoにて活動休止前のラストライヴを行なった。
◆Sadie 画像
2015年4月には地元の大阪城野外音楽堂で10周年ワンマンを敢行し、これからという矢先の活動休止発表だったため、ファンはもちろん同業者の間にも動揺が広がり、そのニュースはYahoo!ニュースに上がったほど。しかし、その真意はこの日のオープニング映像に映し出されたフレーズが、すべて物語っていた。
This is not ending ceremony. But beginning to the new start──.
(これは終わりの儀式ではなく、新たな始まりへのスタート)
発表以来、メンバーが繰り返し語ってきたように、これは“未来の未来”のための決断。あくまでも前を向いての選択であることは、真緒(Vo)の「いくぞ東京!」という声で幕開けたライヴからも明らかだった。2008年発表のヒットシングル「Ice Romancer」を皮切りに次々と投下されるヘヴィチューンは、常にも増して鋭利に客席に襲いかかり、それに応えて観客で埋め尽くされたフロアも、まるで未知の生き物のように大きくうねる。それでも美月(G)は「聞こえへんって!」と容赦なく声を欲し、さらにオーディエンスは拳を振り上げるという、その互いを求め合う引力は強烈にして壮絶。シングル&人気曲を中心にアグレッシヴなナンバーを切れ目なく、かつテンポ良く叩き込みながらも、決して勢い任せになることなく、観る者の心に1曲1曲を刻み付けんとするプレイは、今までに観た彼らのどのライヴよりも熱が籠り、かつ噛み合ったアンサンブルを聴かせてくれた。
中盤の「Rosario-ロザリオ-」ではスクリーンに大写しになった教会をバックに厳かに迫り、苦悶のシャウトから始まった「Demons cradle」ではアコースティックギターも交えて妖しいカオスから美しい夜明けへと感動的に展開する。また、激しさだけではなくメロディックな旋律も持ち味とするSadieでは真緒の歌唱表現も大きな武器で、哀愁の中に朗々たる芯の太いヴォーカルを響かせた「嘆きの幸福」から、リリカルな曲調に激情が滲む「サイレントイヴ」への流れは見ごたえ十分。後者の歌詞を“弱さに救われた”と過去形に歌い換えた叫びは、まさしくSadie10年の活動における彼のリアルな心境だったろう。
そもそもSadieは真緒自身が抱える悲しみ、痛み、怖れ、願いを刻み続けてきたバンドである。「THE NEVER」「DEAD END」とアッパーなブロックに戻っても、現状にリンクするフレーズがたびたび耳に飛び込み、前者では“未来を……変えるぞ!”と雄々しく宣言。必然的にヒートアップするフロアからは「Grieving the dead soul」に「クライモア」と合唱が自然発生し、“聴こえるか? 生きてるか?”“いつまでも声枯らして歌わせてくれ!”と、歌詞を借りた真緒の叫びが場内に轟く。初期からのライヴ鉄板曲「サイコカルチャー」でも「お前たちの居場所はここだ!」という号令により、10年間で最大にして最激のヘッドバンギングの海が出現。銀テープが飛んで華やかにフィナーレを彩った本編ラストの「陽炎」まで、一瞬たりとも緊張感の途切れることのない迫力のステージに、“これだけ良いライヴをできるバンドが活動休止だなんて”という口惜しさを止めることができなかった。
「ホントに今日が活動休止の日とは思えないくらい、当たり前に日が過ぎて、当たり前に起きて、当たり前にメンバーと会って、当たり前のようにステージの袖にみんながいてくれて。何も変わらない今日が、ホントに幸せだなと思いました。10年間、Sadieは前を向いて、ずっと歩いてきました。あっという間に過ぎた10年間、たくさんの記憶が胸の中にいっぱい詰まってます。その記憶の断片には、いつも……いつも傍でみんなが歌って、叫んで、頭振って、Sadieを愛してくれました。何と言っても言い切れないほどの感謝の気持ち、この曲に乗せて届けたいと思います」──真緒
満場の“アンコール!”に応えて5人が再登場し、そう前置いて贈られたのは最新アルバム『GANGSTA』収録のメッセージソング「MESSAGE FROM HERE」。極限まで音数を抑えたシンプルなサウンドの中で綴られる言葉の一つひとつが胸に沁み入り、力強く歌い上げられた“ときに離れる日々は別れる意味じゃない また会える出会い この命は消えない”のフレーズに籠った真実の願いに心が震える。
曲終わり、スクリーンに10周年ライヴでステージに並んだ5人の背中が映し出されると、あちらこちらからすすり泣く声が。その涙を振り切るように躍動的なナンバーを畳み掛け、Sadie随一の暴れ曲「妄想被虐性癖」では、真緒も繰り返しフロアにダイヴ! そこからSadieが“生きる”を歌うようになった大きなターニングポイント曲「a holy terrors」へ続くと勝手に大合唱が沸き起こるが、それはSadie最大の代表曲「迷彩」でも同様だった。亜季(B)はお立ち台に上がってトレードマークとも言える、しかし、昨今は封印されがちだった振りを披露し、真緒は“キミたちがくれたものは、本当に多かった!”と歌い放って、悲鳴ともつかない大歓声を全身に浴びる。そう。Sadieはいつだって、リアルを叫び、歌ってきた。だから、こんな極限状態で、その言葉は何より強く、観る者の魂を貫くのだ。
「最後に、みんなとまた必ずお互いの未来の先で待ち合わせできるように、約束の歌を届けたいと思います」
そう真緒が語ってダブルアンコールに贈られた曲は、活動休止発表直後にリリースされたシングル「Voyage」。後ろを向いてメンバー一人ひとりを指差しながら“掲げてる未来図の配役はこの5人!”と叫ぶように歌う声は力強く、観る者の心を大きく揺さぶる。そして5分割されたスクリーンには、ギターをかき鳴らしながら頭を振る美月、鋭い眼光でジッとカメラを見据える亜季、時に笑顔さえ浮かべながらオーディエンスを煽る剣(G)、自らの務めを果たすべく黙々とスティックを振るう景(Dr)の姿が。五者五様の姿を瞼に刻みつけようとステージを見つめるオーディエンスは声を合わせて“lalala…lalala…”と合唱し、そんな彼らに「もっとくれ! 消えない傷を残してくれ! 刻ませてくれ!」と胸をマイクで叩いた真緒は、涙ながらにこう告げた。
「必ず、必ずまた一緒に……生きような。少しだけ……ワガママを許してください」
すべての演奏を終えたあとは、メンバー一人ひとりから感謝の言葉が。それぞれに“らしい”語り口ながら、その台詞からは誰もが再会を願っていることが伝わってきた。
「ホントに今まで10年間、Sadieを支えてくれてありがとうございます。いったん今日で活動休止ですけど、また、いつかみんなの元気な顔と笑顔を見れるように、それぞれの未来に向かって頑張っていくんで。また、いつか絶対会えることを心より願ってます。俺たちが刻んだ、この愛と絆は絶対に消えないと思うんで、これから前向きに生きていきます。ホントみんな愛してます。ホントありがとうございました」──景
「勝手だけど好きなメンバー、Sadieに対する想いは活動休止しないでもらえたら嬉しいです。俺は君たちへの気持ちは活動休止するつもりはありません。次に会うときは個人的には、また、此処で会いたいです」──亜季
「ホントにSadie10年やってこれたのは皆さんのおかげ。それ以外にない。時間って絶対過ぎていくもんやん? 何でもそうやけど、生まれたものは必ずいつか消えていくやん。俺たちは無くなったわけではないし、活動休止を選んだわけですけど、いろんな景色見て、Sadieじゃできなかったこと吸収して。いつか未来で、この5人で集まれたらいいなと思います。だから今日は寂しいかもしれへんけど、明日に向かうスタートの日でもあると俺は思ってるから。みんな思ったより笑顔で、俺たちの気持ちが伝わってるのかなと思いました。また、今日ライヴが終わって、家に帰れば、何でもない明日がまた来ます。しゃーないねん! もちろん待っててくれるのは嬉しいんですけど、一緒に進みましょう。俺らはメンバー個々が試される期間になるから、ついてきてください」──剣
「まさか自分がバンドをやろうと志したときに、こんなふうになるとは思ってもいませんでした。僕はSadieが初めてのバンドでした。何もわからないままこの人たちの背中追いかけて、いつの間にか自分たちだけでツアーができるようになって、昔、描いていた夢が一つひとつ叶っていくのが嬉しくて……でも、どこかで頭打ちするんですよね。すべてが上手くいってたら活動休止もしません。だけど、決めたのは止めることだったんですよ。誰も終わりは選ばなかった。それが嬉しくて、だから今日も泣き崩れるんじゃないかと思っていたけど、全然泣けなかったです。それは、やっぱり前を向いているから。ただ、みんなに次の約束ができないのが、すごく申し訳なくて。何を残せるかな?と考えたとき、このSadieを追っかけてきた年月が“無駄やったな”じゃなくて、“大切なことを教えてもらった”と思わせられるラストツアーと生き方をしようと、発表してから今日まで心がけてきました。何回も言いますけど、最後じゃないんです。今日もみんな笑顔で、すっごく良いライヴしてました。ホントに自慢のファンです。これからホントに厳しい戦いに、この5人出ます。一人ひとりが人間として戦っていきます。誰も助けてくれません。でも、一人ひとりがレベルアップして、また、Sadieやろうぜ!って帰ってきたときには、今日以上のSadieを見せられると思うと、それが楽しみで。なので、この5人をこれからも愛してください」──美月
「10年前に一人になって、いろんな想いを背負って、メンバーと出会いました。俺はホントにこの4人と会えて良かったと思います。4人に出会ってSadieをしなければ、みんなにも出会えなかったし、ファンクラブも出来なかったし、自分の選んだ道は間違ってなかった。みんなと一緒にライヴしたこと、一緒に頭振って、いっぱい叫んで、いっぱい笑って、ホンマに幸せでした。歌を歌わなければ、ただの弱い男です。このステージを去ることが、どれだけ怖いか、どれだけ辛いか……明日メンバーに、スタッフに、“スタジオ何時?”って聞きそうで。当たり前の日が無くなってしまうと思うと、寂しくて怖いです。けど、俺はたくさんの言葉と経験を歌詞に綴ってきました。それがみんなの生きる人生に、少しでも為になればと思って、歌ってきました。きっとこの先、お互いにまた、辛いことや乗り越えられない壁が待ってると思います。けど、絶対に君たちなら乗り越えられるはず。その強さをこの5人で、みんなで作ってきたし、この想いを、いつまでも絶やさないように生きていってください。そして俺は、また、みんなと一緒に生きていたいです。しばらく会えなくなるけど、(胸を指して)ココにいっぱいみんなの声を叩き込みました。消えることのない傷が、お互い残ってると思います。それを糧に、また重なり合う未来で会いましょう」──真緒
センターに5人並んで手を繋ぎ、深々と一礼すると、真緒は景、剣、亜季、美月と順にメンバーを掴んでハグ。そして剣は「またね! 今日はありがとう」と、美月はマイクレスで「愛してます。ありがとうございました!」と、笑顔で感謝を叫んだ。真緒は「また、必ず……帰ってきます。約束」と左手の小指を差し出し、さらに「Sadieは俺の人生のすべてでした! ありがとうございました!」と再会を約束。その顔には清々しい達成感と、たった一人で戦わなければいけない未来への不安と同じだけの希望があふれていた。
10年のすべてを注ぎ込んで誓った、“未来の未来”に向けての新たなスタート。その模様は12月30日にDVDとしてリリースされる。5人の戦いは、まだまだ始まったばかり。その過酷な道の果て、映像にも記録されたSadieというバンドの強さとファンとの絆は、きっと重なり合う未来を引き寄せるはずだ。
取材・文◎清水素子 撮影◎青木武史
■10th ANNIVERSARY LIVE DVD
2015.10.21 wed RELEASE
【通常盤】MRSV-0021 \5,940-(tax in)
全25 収録曲
迷彩 / GIMMICK / MAD-ROID / 愛の罠 / Rain fall / Rosario- ロザリオ- / 心眼 / Crimson Tear / Ice Romancer / Grieving the dead soul / クライモア / サイコカルチャー / Regret / 嘆きの幸福 / DEAD END / bleach / THE NEVER / サイレントイヴ / 陽炎 / true word / HOWLING / Deadly Masquerade / METEOR / 妄想被虐性癖 / a holy terrors
2015 年4 月11 日大阪城野外音楽堂にて大盛況に終えた<Sadie 10th Anniversary Special GIG 2015 DECADE OF SADNESS>公演が遂にLIVE DVD化。約4年ぶり7枚目となるLIVE DVD。10 年目にして初の野外ワンマン公演の映像を全25曲収録。
■活動休止前ラスト公演LIVE DVD
2015.12.30 wed RELEASE
2015.09.21 Zepp Tokyo にて活動休止したSadie。10 年という長くも早い年月に終止符を打った。10 年のすべてを注ぎ込んで誓った、“未来の未来” に向けての新たなスタートを切った旅立ちの日。10 年分の思いを込めた全身全霊の1 夜を12 月30 日にDVD としてリリース決定。詳細近日告知。
◆Sadie オフィシャルサイト
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