【特別対談】DIR EN GREY 薫vs金子ノブアキ、人との出会いから見出だす“気付き”に対する個々の思い、そして2人将来の話にまで及ぶ長編対談(後編)
――なるほど。あと、人となりが出やすいのって、?み方とかじゃないかと思うんです。お二人ともお酒の席とかでもわりと静かですよね?
金子:そうですね。本質的にはすごく。ただ、始まると深いというか(笑)。俺はすごい極端なんですよ。呑まない時は絶対呑まない。呑めるんだったらもう倒れるまでも呑む、というか。まあでも、お酒も嗜好品なわけで、せっかくなら楽しく呑みたいですからね。
――同時に、話をするためのツールだったりもする。
金子:そうなんですよ。俺、晩酌とかしないから、あくまで酒というのは人を介してのものというか。呑みながらそうやって誰かと向き合って喋るのは好きだから。お酒そのものに対しての執着っていうのはあんまり無いんですよね。好きは好きなんだけど、家とかでも呑むようになると溺れちゃうからさ(笑)。薫くんは、家でも?む?
薫:呑む呑む。
金子:俺、ドラムだからというのもあると思う。酔うとタイムが狂うんですね。それがもう耐えられないから。ドラムが下手になるのは嫌だし、気持ち悪いし。二日酔いで叩くの気持ち悪いし、あれが嫌で。これがギターとかだったら、またちょっと違ってくるんだろうと思う。ちょっと詩的というか文学的な作用をもたらしてくれることがあったりとか。俺の場合、家でも?みだしちゃうと絶対に演奏に響いてくるから、それは気持ち良くないなあ。やっぱり音楽をいちばん気持ち良くやれるようでありたいし。
――薫さんにも、二日酔いで弾いた時の記憶というのはあります?
薫:いや、もう気持ち悪い思い出しかないですね。
金子:大きい音そのものに酔うよね(笑)。
薫:しかもライトとかが熱くてね。
――だからDIR EN GREYは照明が暗いんですね(笑)。冗談はともかく。やっぱりどのパートでも同じなのかもしれないですね、これは。
薫:いや、でも、世の中には本番中に?んでる人とかもいるじゃないですか。あれはちょっと俺には無理ですね。理解できないとかそういうことじゃなく。俺の場合は、しんどくなる。それでリラックスできる人も居るんだろうけど、逆に集中できなくなってきてしまうんで。
――こうしていろいろなお話を聞いてきて思うんですが、お二人の最大の共通点というのは、モノゴトへの向かい方とか取り組み方にあるんじゃないか、と。作っている音楽の種類は違っていても。薫:うん、それはあるかもしれない。
金子:特に俺の個人活動の場合なんかは、それがちょっと近付くのかなっていう気も。RIZEとかと比べちゃうとね。あれは俺が14歳の時からやってることだから(笑)。その間にやっぱり変化があって……。特にこの6~7年は意識的にすごく変わったところがあったから。いろんなメディアに出ていくようになったりもしてね。RIZEみたいなものって、すごく古くからやってるバンドだからその歴史が財産ではあるんだけど、かならずしも完全なる進行形じゃなかったりする部分があるんですよね。でもそれが面白くて、それはそれでものすごく美しいというか。あの頃の感じが、いろんな演奏をすることでリコールされていくっていうのが自分のなかではすごく特別なことで。きっと年齢的な要因もあるんだろうけど、俺もこうして30代中盤とかになってきて、すごく変わってきた。それがものすごく綺麗なことなんだって思えるようになってきてるし、そこで妙に抗うようなこともなくなったし。でも、それが自然に、他のチャンネルを作るという行動に繋がるようになったんですよね。逆にDIR EN GREYを見ていると、パッと背びれを見ただけで身体の大きさがわかるようなところがある。美学というか様式美というか、そういうものからバンド自体の歴史みたいなものが見えてくるというかね。そういう意味でも俺は、これから向かっていく30代後半や40代に自分は何を見据えてるのかなっていうのを、こうやって人と会うことによって確認できるんですよね。誰かと会って心が引き締まるって、そういうことなんです。
薫:うん、わかるわかる。
金子:だから俺にとってはある意味、人と会うことがセラピーみたいなところもあるし。こうして取材を受けること自体もそうなんだけど、実際に口に出して話さないと自分の考えというのがわからないところがあるから。
薫:そうそう。こうやって口に出すって大事なことなんですよ。自分が思ってたことが、逆に初めてそこで理解できたりするから。思ってなかったはずのことに気付かされたりもするし。
金子:まあ、基本的には後付けなんだけどね(笑)。
――薫さんの場合、ずっとDIR EN GREYが進行形であり続けてきた。でも、時には同時進行しているものがあったり、進み方にも変化があったり……。
薫:うん。ちょっと他のことを始めたりするメンバーもいたりして。なんか、どういう感覚でそういうことをしてるのかな、というのを俺は結構知りたかったんですね。で、あっくんが今、こうして話してるのを聞いて、「ああ、なるほどな」と思わされたことがすごく多くて。でもなんか、結局は、やってる人間がすべてだと思うんですよ。なんかこう、細かいことを気にすることもまあ大事なんだけど、やっぱ、今やりたいことは今やらんとアカンなという感じじゃないですか、今の話を聞いてると。前はね、うちらは「バンド以外のことやるのはちょっと勘弁してくれ」みたいな空気にちょっとなってたんですよ。でも最近はそうじゃなくて、みんな素直にやればいい、と。結局、バンドで縛ってる部分というのもあるわけだから。そういう意味で、今の話を聞いていてすごく腑に落ちたというか。もちろん、だからといって今すぐ俺が何かを始めるとかいうわけじゃないですけど(笑)。ただ、こうして会って話をするだけでも、なんかこう、明日からまたちょっと頑張っていこうっていう気になれるんです。なんか見えてなかったモノがこう、見えてきそうな気がするとか。
――今現在の感覚として、薫さんがバンドの外で何かを一人でやろうとした場合、やっぱり今回のように、音楽ではない何かになるんでしょうか?
薫:いや、もちろん音楽をやりたかったらやってもいいんですけど、なんかこう……。今回の件もそうなんですけど、やっぱり一人でやりたいんですよね、極力。自分が100%です、みたいなことをどっちかと言えばやってみたいんで。で、そのためにはいろいろ勉強しないといけないこともある。なんか、そういうことも含めてやれればいいかな、ぐらいにしか思ってないですけど。
金子:一人になってやることって、バンドともまた違って、それ以上後ろがないわけじゃないですか。個人的には年齢的なことも含めて、その感覚がすごく大事になってきてるかな。でも、人は一人では生きられないんですよね。そういうこともすごく強く感じさせられる。一人になるとその負荷も大きいから、一歩というのがすごく重たい時もあるんです。一人でやりたいけど一人じゃ生きられないなんて、無茶苦茶矛盾するんだけど、それが人間なんですよね。そこに素直にいたまま、ちゃんとやりたいというか。気持ち良くやるためにはある種すべてを吐露して、素直にやっていかないと。そうしないと作品が軋んでくるし。そこでぎゅーっと圧縮をかけてしまって、作ってるもの自体が悲鳴を上げ始めるようになるのは良くないことだから。だからなんか、作品っていうのは自分の人生のなかでの早めの遺言みたいな感じで(笑)。死ぬ時とかって、やっぱり後悔しかないと思うんですよ。結局はいつまで経っても足んないから。だから、できるだけその時に悔いを残さないように、というのは考えますよね。
――縁起でもない言い方ですけど、作品を重ねていくというのは遺言を更新していくようなことでもあるわけですよね?
金子:ホントにそうだと思う。表現するっていう分野においては何でもそのはずで。今、なんでそうやって強く思ってるのかというと、どういう人間でも最後は死んでしまうわけで、もちろん親とかそういう世代の人たちも逝ってしまうわけだけど、同世代のやつとかが思いがけず亡くなったりすることがあるわけで。だから、明日は我が身だと思うんですよね。で、もちろんそこでバンドというものもあるわけだけど、それはやっぱり民主主義に基づいたものでもあるし、みんなに無理強いするわけにはいかない。そんななかで自分1人で何かをやれるチャンネルがなんとなくできてきたっていうのは、バンドという場を得られてるのと同じく、すごく恵まれてるよなと思えていて。もちろんそこでの自分の責任というのも大きくなってくるわけですけどね。10年前の自分だったら、1人で何かやるなんて想像もしてなかったし、こういう場にも出てきてなかっただろうと思う。でも、こうして声をかけてもらえてるってこと自体、そういうチャンネルが自分にひとつできてるっていう証拠だと思うんです。だからこうして友人から声をかけてもらえたりすることで、勇気をもらえるというかね。これって素晴らしいことだと思っていて。
薫:しかもこういうことって、普段から意識してるわけじゃないから、こうして改めて話をしようということにならないと、出てこないわけですよ。
金子:だからセラピーですよ、会話とか取材ってホントに。すべてがそうだとは言わないけど(笑)。
――そして、そういった勇気とは違うかもしれないけども、明日に向かおうとするときに、士気を上げてくれる服というのもあるはずだと思うんです。
金子:いや、もう目茶目茶ある。
薫:うん。それを着るとビッとするというのはありますよね。出掛けるにしても、なんかこう背が伸びるというか。勝手に自分がそう思ってるだけなんだけど、作り手の“気”をもらってるというかね。
金子:確かに。特に一人で活動することが多くなってからは、心細くなることもあるし(笑)、そういうものを身に付けたりそばに置いておいたりすることで、“よし!”という気持ちになれる。ちょっとアウェイな状況だったとしても、味方というか、後ろ盾を得ている感じ。だから、そういう服というのは、鎧でもあるのかもしれない。
――鎧を着ているからこそ気持ちを脱げる、という部分もあるのかも。
薫:おおっ、上手いこと言いましたね(笑)。でも、確かにそういうところがあるのかもしれない。
――さて、最後に。こういう機会にいちばんありそうな質問を忘れていましたけど、お二人が今後、一緒に音楽をやる機会というのはあるんでしょうか?
薫:うーん。ないことはないと思いますけどね。
金子:然るべきタイミングで、ね。無理にやるようなことではないけど、きっといいぞという気はするし、風が吹いてきたら、いつかそういうことになるかもしれない。だけど、やらないのかもしれない。そういう自然な関係であれればいいと思っているんで。
薫:うん。まあ、何が起こるかわかんないからね。
金子:一緒にやれたらいいよねっていう話が、出てくる時には自然に出てくるんだろうし、それでいいんだろうと思う。今回のことみたいに、お互い腑に落ちるようなタイミングがあればね。
薫:そう。お互い腑に落ちるってことは、絶対にいいタイミングだっていうことだから。
対談司会進行・文●増田勇一
詳細情報
「Wool Gown」(ウール・ガウン/M15AW-J03) 32,400円(税込)
http://store-moses-horns.com/?pid=91656144
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公式サイト http://moses-horns.com
<東京>
日時:
2015.9.26(sat) 15:00~20:00
2015.9.27(sun) 12:00~19:00
※時間は変更する可能性がございます。予めご了承ください。
会場: PANOF E STUDIO
〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南1-14-9 White Residence #B-02 http://www.panof.jp/e-studio/
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