【インタビュー】ボカロPのn-bunaが語るメジャー1stアルバム『花と水飴、最終電車』とDAWソフト「SONAR」の魅力 Vol.1
■Cubase LEとフリーソフトでDTMスタート
■数カ月後にはニコニコ動画初投稿
▲TASCAM US-200は24ビット/96kHz対応、2IN/4OUTのオーディオインターフェイス。2基のマイクプリアンプ搭載で、ギターの直接入力も可能。現在は生産完了、後継モデルはUS-2x2。
──DTMを始めて投稿に至るわけですが、最初に購入したオーディオインターフェイスは?
n-buna:TASCAMのUS-200です。そのおまけにCubase LEが付いていて、それでDTMを始めてっていう感じでしたね。
──初投稿はいつ頃?
n-buna:DTMを始めて、数カ月後にはもうすぐ投稿しました。
──周りにDTMをやってる人がいないから、それが早いのかどうかは想像がつかなかった?
n-buna:まったくわかんないですね。僕としては、自分がよく聴いているバンドの人とかがどうやって曲を作ってるのかを自分の頭のなかで全部想像して、DAWを使って同じ音に組み立てようとがんばったっていう、作り方でしたね。
──一番最初にCubase LEとUS-200を使って始めて……。そのころはもうVOCALOIDで曲を作りたいっていう感じだったんですか?
n-buna:いや、違ったんですよ。最初は自分で曲を作りたいっていう欲があって。で、自分でいろいろ曲を作って、自分のボーカルで曲を作ったんですけど、ぜんぜんうまくクオリティが上げられなくて。そこでVOCALOID、ボーカルソフトがあるから、それを使おうっていう感じで。
──n-bunaさんが始めたころはネットを見ればバンドの情報はあるにしても、DTMやボカロの情報ってあんまりなかったんじゃないですか?
n-buna:ネットで調べるのはDAWの使い方ぐらいで、あとはもうほんと自分で想像して……。まずドラムをどうしようって思って。ドラムは、DAWの中に入っていたシンセと同じようにドラムの楽器としてのソフトがあるはずだ!と思って……。
──ソフトを探すところから?
n-buna:そうですね。フリーソフトでHydrogenっていうのが昔あったんですけど、それを探してきて。それがスタンドアローンでしか動かなかったので。打ち込んで、パターンを作って、それをWAVで書きだして、(DAWに)はめこんで、それに伴奏をつけるみたいなことを……。で、それでまずドラムができた、次にベースを打ち込むか弾くかした、で、そこにボーカルを乗せた、っていうふうに作っていって。それで1つの曲を作るっていうクソめんどくさいやり方をしていました(笑)。
▲Hydrogenはオープンソースソフトウェアとして開発されているドラムマシンソフト。音源、パターンエディタ、ソングエディタを備え、往年のリズムマシンを含む多くのドラムキットを収録する。Windows、Mac、Linux対応のバージョンがある。
──でも、そのやり方って今思えばけっこう愛着あるんじゃないですか?
n-buna:そうですね(笑)。あの頃の作業を思い出すと、今がどんだけ楽かって思いますね。
■使いやすそうで見た目がかっこいい
■DAWにはSONARを選択
──今使っているのはSONARということですが、DAWを変えるって勇気がいらなかったですか?
n-buna:そうすね。でも、僕、ずっとCubase LEとかフリーソフトのDAWをいろいろ試してみて、やっぱりちゃんとした作品を作りたいと思った時に「プロ用のソフトを買うか」と思い立って、で、そこでいろいろ調べて、「SONARがなんかよさげだな」と思って。僕は見た目から、ギターとか曲とかも入るタイプなので……。いろんなソフトを見た時、SONARが一番かっこよくて……(笑)。で、その時ちょうど安く買えたので、このままがんばろうと思ってずっと使い続けていますね。
▲SONARシリーズはWindows専用DAWとして長い歴史と絶大な人気を誇るCakewalk社のソフトウェア。現在のラインナップはSONAR PLATINUM / PROFESSIONAL / ARTISTの3グレード。2015年のリリースよりバージョンナンバーを廃し、随時アップデートが行われている。国内ではTASCAM Professional Softwareブランドでリリース。n-bunaが使用しているSONAR X2の発売は2012年。
──SONARを選んだ理由にVOCALOIDを使うっていうのはあったんですか?
n-buna:まったくなかったですね。「ちゃんといいDAWが欲しい」って思って。で、使いやすそうで見た目がかっこいいものって思って。使ってみたらけっこうフィットした感じで。MIDIの操作がしやすいから。
──SONARは3つグレードがありますが。
n-buna:X2のPRODUCER(当時の最上位グレードSONAR X2 PRODUCER)を。買うからには一番高いので、一生……(笑)なんというか共に連れ添うという覚悟で。楽器とかも同じで、わざと高いものを買ってんですけど。カンタンにやめられないように(笑)。
──わかります(笑)。SONARを買ったのはいつ頃なんですか?
n-buna:DTMを始めて1年後ぐらいですね。
──早いですね、その1年って。
n-buna:その時にもう曲の再生回数が上がっていろいろお話もちょくちょくもらったりしてて……。それで真剣にソフトについて考えて。
──じゃあ、最初に注目された時はWAVを書き出してドラムを貼るみたいな……。
n-buna:最初はそうだったんですけど、その頃にはもう「Addictive Drums」っていうソフトを買っていて。そこらへんの作業は楽になってたんですけど。その頃はずっとTASCAMのUS-200を使って録音していましたね。
──SONARよりも先に「Addictive Drums」を買ってたということですか?
n-buna:そうですね。まず、ネットで情報を調べて、「ドラムがキモだからドラム音源を買おう」っていうアドバイスがあったので、「そのとおりだな」と思って。楽になるし(笑)。
──DAWでギタリストが音楽を作りたい場合、ドラムってすごく重要じゃないですか? 打ち込みでの曲作りでありがちなのは、人間では叩けないようなフレーズをえんえん打ち込んでしまって、後でバンドでコピーした時に「これでどうやって叩くの?」みたいな……(笑)。
n-buna:あはは(笑)
▲Addictive DrumsはXLN Audio社のドラム音源。カスタムキットの作成やパーツごとのサウンドシェイプが可能なほか、プロにより演奏されたビートのライブラリおよび編集機能も備える。現行バージョンのAddictive Drums 2はSONAR PLATINUM/PROFESSIONALにもバンドル。PALTINUMでは3種、PROFESSIONALでは1種のキットのライセンスが付属、好きなものを選択してインストールできる。
──Addictive Drumsがn-bunaさんに刺さった理由ってなんだったんですか?
n-buna:音ですね。デモをいろいろ聴いてて、一番音として僕の好みだなと思ったのと、あと、外観がかっこよかったっていうのがありますね。
──Addictive Drumsのパターンは使いますか?
n-buna:たまにパターン先で曲を作ることがあって、そのADの中のビートから選んでDAWに出して、「おもしろい感じのイントロが作れそうだな」と思ったのを持ってきて、そこにギターとかを加えていろいろ試してみたりってのを、アイディアの1つ、ネタとしてやったりすることはありますね。とは言っても、自分で打ち込むのが9.5割くらい。
──でも、けっこう凝ったフレーズ作りますよね?
n-buna:僕、ドラムの知識がぜんぜんないので(笑)。なんか自分の直感で「こういうのがかっこいい」って思ったものを全部やるので、たぶんドラマーからしたら意味のわからないフレーズだったりするのかなあと。
──でも、「拝啓、夏に溺れる」のドラムは、リムショットでフレーズを作ってるじゃないですか? あれ、すごい斬新でしたね。
n-buna:ありがとうございます(笑)。たぶん、知識がないからこそ普通とは違うものが作れるんじゃないかな、と思ったりしますね。
──だから、凝ったことしてるなあ、と思ったんですよ。それはおもしろい話ですよね。現在はローランドのオーディオインターフェイスを使ってるんですよね? それもあってSONARに変えたのかな? と想像してたんですが。
n-buna:あっ、それはあるんじゃないかなと思います。SONARを使う時に互換性をいろいろ調べてたので。「ちゃんと動くことが大事だ」と思って。
──で、ミリオンにいったのは、それからすぐなんですか?
n-buna:それからちょっとした頃……ですかね。1年ぐらい経ってから2つの曲(「透明エレジー」と「ウミユリ海底譚」)がミリオン行って。その頃も再生数はけっこうあったんですけど、そこから時間が経ってミリオンに行ったって感じでしたね。
▲「透明エレジー」(左)は2013年2月、「ウミユリ海底譚」(右)は2014年2月に投稿。いずれもニコニコ動画でミリオン(100万回以上の再生)を達成している。唄はそれぞれGUMI(Megpoid)と初音ミク・アペンド。
続きのVol.2は近日公開予定。お楽しみに。
『花と水飴、最終電車』
初回生産分限定スリーブ仕様 DGUR-10005 ¥2,000+税
【収録曲】
01 もうじき夏が終わるから
02 無人駅
03 始発とカフカ
ウミユリ海底譚
04 昼青
05 拝啓、夏に溺れる
06 ヒグレギ
透明エレジー
07 夜祭前に
08 メリュー
09 着火、カウントダウン
敬具
10 ずっと空を見ていた
11 夜明けと蛍
花と水飴、最終電車
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