【インタビュー】INORAN「LUNA SEAのツアーで受け取ったエナジーやかけがえのない瞬間を音に落とし込みたかった」

■人生、冒険しなきゃ損でしょ
■過去を輝かせるハイブリッドなアルバム

──とは言え、『BEAUTIFUL NOW』がピースフルで穏やかなアルバムかと言ったら決してそういう曲だけで構成されているわけではないと思うんです。アグレッシブなR&Rもあるし、ヒップホップとゴリゴリのロックサウンドをかけあわせた曲もある。アコースティックでアーシーで切ないスローな曲も収録されているし、次にどんな景色が来るかわからないジェットコースター的なスリルも味わえました。大人なINORANさんとやんちゃで冒険心を失わないINORANさんが混ざりあっている。ひとことで言うと、自由だなと。

INORAN：（笑）確かに今回、自分の自由度はハンパなかったですね。経験を重ねていくと何でもできてしまうので、近年は浮かんだ曲の中からある程度、絞って制作していたんですが、今回はそういう縛りをはずしたんです。例えばギターでいうなら、この数年アルペジオはあまり弾かなかったけれど、今回はいいかなと思ったりとか。

──この数年はアッパーでアグレッシブなギターサウンドに振り切れてましたもんね。それ以前はナチュラルで癒しの方向を強めた作品もリリースしていましたが、『BEAUTIFUL NOW』はいろいろな要素が混合している。

INORAN：そうですね。だから今までやってきたことをハイブリッドにした感じだと思うんですよ。


──ちなみにアコースティックギターとエレキギターの両方を弾いていますが、使っているギターを変えたとか、何かこだわったことは？

INORAN：弾いているのはいつものジャズマスターたちです。音にもプレイにもこだわりましたけど、ギター中心というわけではなく、ドラム、ベースを含めて全体の音として考えていますね。

──アコギを使ったINORANさんの曲には旅をイメージさせる曲が多いというか、ロードムービー的な匂いがあるんですよ。ちょっと土くさいテイストになる理由というのは？

INORAN：わからないけど、ピッキングが弱いからじゃないですかね。特にアコースティックギターを弾くときは薄いピックを使うので、それが力が抜けた感じになるというか、いい雰囲気で鳴るのかもしれない。

──なるほど。連れていかれる感があります。あと、韓国のグループ、BTOBのメンバーをフィーチャリングした曲「2 Lime s　featuring MINHYUK,PENIEL and ILHOON from BTOB」が収録されていますが、どんないきさつで一緒にやることに？

INORAN：何度かライヴを見せていただく機会があったんですけど、情熱があって人間的にも素晴らしいなと思ったんですよ。そういう出会いは頭に残るし、「また会いたいな」と思うじゃないですか。「2 Lime s」をレコーディングしている途中で、彼らに参加してほしくなって声をかけてみたんです。当初の想像以上のものが出来上がりましたね。

──hideさんの「ピンク スパイダー」のカヴァーも収録されていますね。ソロのアジアツアーで歌った曲ですが、音源に残したいという想いが強かったんですか？

INORAN：ホントそうですね。もう一度、プレイしたかった。アジアでプレイしたときにこの曲の良さだったり、いかに多くの人がhideさんのことを愛しているかを感じたし、「ピンク スパイダー」とアジアを含むたくさんのファンの人たちにミュージシャンとしての進み方を教えてもらった気がする。もっと音楽を愛する人でありたいとも思ったし。

──その流れもあって、＜LUNATIC FEST.＞でも「ピンク スパイダー」をカヴァーしたんですか？

INORAN：それはまた別の意味あいですね。

──そうなんですね。でも、エッジと冒険心とスリルがあるこの曲を今のINORANさんがカヴァーするというのは、非常にカッコいいなと思いました。保守的になるどころか、何才になってもチャレンジする心をキープし続けてるじゃないですか。

INORAN：ありがとうございます。人生、冒険しなきゃ損でしょ。別に旅行に行くとか転職するとかではなく、日々の中にも冒険はたくさん転がっていて‥‥。特に自分はそういう経験をさせてもらうことが多い職業だからチャレンジしなきゃダメでしょうって。まだまだ知らない世界がいっぱいあるし、知らない音楽もいっぱいあるし、もっともっといろいろなものを聴きたいし、いろいろなものに触れたい。

──好奇心が強いとも言えますね。守りに入ろうとする自分が顔を出したときはどうするんですか？

INORAN：‥‥認めます（笑）。

──はははは。

INORAN：そのときはね。でも、未来を描いて“こうなりたい”と思いこみすぎて、今に囚われてしまうよりは、今を描いて未来に向かいたいと思うタイプなので。だって、自分の経験上、未来って思い通りにならないもん。想像した通りには決してならないから。単純に言うと「いつどうなっちゃうかわからないから今を一生懸命、生きたいよね」っていう話。

──そこが冒頭で話してくれたLUNA SEAのツアーの話にもつながるんですね。アルバムのラストナンバー「All We Are」はINORANさんの愛が詰まった曲だと思いますが、この曲に出てくる“僕らを　鳴らした”というフレーズにはどんな気持ちが込められているんですか？

INORAN：やっぱり自分は人と共鳴しあいたいんですよね。それは音でもいいし、気持ちでもいい。鳴らしたいし、鳴ってほしいっていう。そういう意味での表現ですね。

──INORANさん自身は『BEAUTIFUL NOW』をどう感じているんでしょうか？

INORAN：今までの自分のアルバム‥‥ジャンルだったり、表現の手法が全部ハイブリッドになっていると思うし、このアルバムを作ったことによって過去の作品も輝いていくような、いいアルバムになったなと思います。

──では最後に9月5日からスタートする全国ツアー＜INORAN　TOUR 2015-BEAUTIFUL NOW-＞についてBARKS読者にメッセージをお願いします。

INORAN：そうですね。アルバムにはみんなでシンガロングできる曲がいっぱいあると思うので、遊びに来てほしいし、近年になく多くの箇所を廻るので近くに行ったらぜひ！　僕ら自身、楽しみにしているし、素晴らしい時間を共有したいですね。

──会場にどんな風が吹いたらいいなと思いますか？

INORAN：どうでしょうね。風は読めないので（笑）、そのときどきで心地いい風が吹いてくれればいいですね。

取材・文●山本弘子





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