【インタビュー】葉加瀬太郎、「<情熱大陸フェス>はピクニックであると同時にお祭りである」

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■25周年アニバーサリー・イヤーは
■とにかく自分へのプレゼント

──お話を伺っていると<情熱大陸 SPECIAL LIVE>は、もう葉加瀬さんのライフワークのひとつなんですね。

葉加瀬:そうですね。まあホストとしてはいろんなやり方があるとは思うんですけど、今のところみなさんが「一緒に演奏したい」と言ってくださるので、そこは共演させていただこうかなと。何年か前に、ちょっと自分がステージに出過ぎだから減らそうとしたこともあるんですけど、まあいいやと思って(笑)、今は20~30曲を1日で演奏しています。出演者のみなさんはね、30分ほどのステージを終えたら、先ほど話したバックステージでくつろいでもらえるんだけど、僕だけはずっと出ずっぱりじゃないですか。楽屋に戻る余裕もないから、ステージ袖に着替えるスペースを作っておいて、1曲弾いたら着替えてっていう繰り返し(笑)。しかもいつの頃からか、コスプレもみんなが楽しみにするようになったから、それも考えなきゃいけないし。

▲<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'14>

▲<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'13>

──いつの間にか、名物になってしまいましたよね(笑)。

葉加瀬:去年だったらMay J.さんの時に、“アナ雪”の格好で出たし、一昨年の憂歌団再結成の時は「おそうじおばさん」の演奏で“大阪のおばちゃん”の格好をして出たりして。ちゃんとお化粧もして、カゴからネギを出してママチャリで出ていったのに、あの人たちは何のリアクションもしてくれない(笑)。

──ははは。そういったコスプレのアイデアは、ご自身で考えるんですか?

葉加瀬:はい(笑)。憂歌団の時も、最初はトイレのお掃除おばさんのコスプレを考えたんですが、テレビ放送が難しいと言われて。そこで会議ですよ(笑)。出演者のラインナップはわりと早くに決まるんだけど、何を歌うかは直前に決まるから。そのリハーサルの時にアイデアが浮かんだりして、それでスタッフは徹夜ですよ。もう可哀想で仕方ない(爆笑)。

──学園祭の頃のパワーを思い出させてくれる逸話ですね。

葉加瀬:そうそう!その延長ですよね。去年と一昨年には、角松(敏生)さんも出てくれたんだけど、それも移動の新幹線でたまたま20数年ぶりにあったことがきっかけだったんですよ。偶然にも席が隣同士で。それで<フェスとか出ない?>って聞いたら、「出るわけねぇじゃん」って返事で。これは脈があるなと。

──随分とポジティブな受け止め方ですね(笑)。

葉加瀬:もうね、角松さんの性格も分かってるから、東京に戻ってからスタッフに猛プッシュするように言って。それで出演してもらった本番のステージで、「来年も出てくれますか?」「はい」と(笑)。

──もう葉加瀬さんの人と人とをつなげるパワーは、ものすごいですね。

葉加瀬:好きなんですよ。あいつとあの子を会わせて、その後に結婚しちゃったよとか、そういうものが僕はすごく好き。

──アーティスト同士をつなげることはもちろん、結果的にはアーティストとお客さん、そして音楽がつながっていくわけですもんね。

葉加瀬:もちろん! 面白いじゃない!? 結局、音楽ってそれしかないんですよ。音楽は“空気商売”ってよく言うんですけど、空気振動が伝わって誰かの鼓膜を揺らさない限りは音楽にならない。そこで、最初に話題に出た「いい音楽って何?」という話につながるんですよ。自分は死ぬほど音楽が好きだから、やっぱりいい音楽を伝えたいという、だたそれだけなんです。そういうコンサートに気軽に来てほしい。とにかく夏休みの1日を使うわけですから、気分としては「今日はプール行く? ディズニー・ランドに遊びに行く? 新木場に音楽を聴きにいく?」という感覚で、ピクニックのように来てもらえることが一番の理想です。そこに行ったら信じられないような素晴らしい音楽がたまたま聴こえてきた、そういう気分で僕はやりたい。家族であれ、恋人であれ、友達であれ、いろんな世代の人たちが愛する人と来てほしいですし、そこでいろんな想いをしてほしい。とにかく出演者のみなさんも“テッパン”の曲しか持ってきませんからね。「新曲をやりたい」と言われても、僕はそれしか許さない(笑)。そこは笑えるくらい徹底しています。

▲<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'12>セッション

──特定の音楽ジャンルや特定の年齢層ではなく、いろんな世代の人が一緒に音楽を楽しめるというのは素晴らしいことですね。

葉加瀬:音楽は人が作って、人をつなげるために作っている、ただそれだけの話です。バックステージだって、2つも3つも世代が離れた人たちがひとつになっているんですから。数年前に小田(和正)さんが出てくださった時、「こんな夏フェス、どこにもないから、絶対終わらせちゃダメだぞ。絶対に続けろよ」と僕の目を見て言ってくださいました。もともと僕は小田さんの大ファンで、「出てください」と手紙を書いて出演してもらったんです。震えるようなステージを観て、もう夢心地でした。そもそも打ち合わせの段階で、「小田さん、何の曲をやっていただけますか?」と聞いたら、「君が“出ろ”って言ったんじゃないか。君が決めろよ」と。「曲順はどうしましょうか?」「君が決めろよ」って。その翌年は(森山)直太朗くんも出演してくれたから、小田さんと直太朗くんと3人で「デュエットやっていただけませんか?」と言ったら、「もちろん」「この曲やりたいんです」「じゃあそうしよう」って。「じゃあ僕がハモるので……」「何言ってるんだ? 君がこの曲を歌いたいっていうんだから、君が主旋律を歌って、僕がハモるよ」「…はい」って(笑)。まぁ、そういういきさつがあって、本番が終わった後に、「こんな夏フェスは他にない」と言っていただけて、すごく嬉しかったですね。すごく大きな方でした。マーチンさんもいつも嬉しいひと言をかけてくれるんですけど、小田さんのひと言はまた違った感じでビックリもしたし、嬉しかったですね。

──<情熱大陸 SPECIAL LIVE>は葉加瀬さんにとっても夢の空間なんですね。

葉加瀬:もちろんですよ。とにかく僕はこのフェスがなければ、こんなにいろんな方々と出会えなかったと思いますし、一緒に音楽をやることでつながっていける信頼関係はとても大切なものです。音楽家は、音楽をやることが一番なわけですから、それができる、すごくいい場を続けさせてもらっていることに感謝しています。何度も言うようですが、そういった僕たちの気分が、きっとお客さんにも伝わっていると実感していますし、ちょっとスペシャルな夏フェスになっているんじゃないのかなと思います。

──さらに視点を広げると、8月にリリースされる葉加瀬さんのデビュー25周年記念アルバム『DELUXE ~Best Duets~』も、多彩なゲストとコラボレーションしつつ、葉加瀬さんの魅力を楽しめるという意味では<情熱大陸 SPECIAL LIVE>と根底はつながっているのかなと感じました。

葉加瀬:そうですね。今回は、とにもかくにも“25周年アニバーサリー・イヤー”を自分自身でお祝いする時に、自分はどんなお祝いが嬉しいのかを考えたんです。やっぱりご褒美ですからね。そうした時に、ジャケットを見ただけで笑っちゃうくらいに豪華な方々と作品が作れたんだと感じられる1枚にしたいと思ったんです。

──ゲストミュージシャンが、セリーヌ・ディオン、安室奈美恵、布袋寅泰、ゆずなど、豪華かつバリエーション豊かですね。

葉加瀬:八方美人極まりないですよね(笑)。でもそれは僕の特質ですし、その中でどんな人と一緒にやっても自分の音が出せるという自信でもあると今は思っています。

──それぞれのゲストアーティストの色がカラフルに楽しめつつ、アルバムを通して聴き終わると「ああ、やっぱり葉加瀬さんの音楽なんだな」と強く感じました。

葉加瀬:ありがとうございます。この作品を制作しながら、同時にオリジナル曲もずっと書き続けているんです。そちらは来年以降のリリースになると思うので、今年はとにかく自分へのプレゼント。だって、こういったことは決して自分からは言い出せませんから。周りが「今年は“25周年アニバーサリー・イヤー”でいいんじゃないですか?」って言ってくれたおかげだし、こういうアルバムを作れるということは今までのご褒美でもありますから、音楽家として、嬉しい限りですね。

取材・文◎布施雄一郎

■アサヒビール presents <情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'15>

【大阪公演】
2015年8月1日(土)大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場
開場11:00/開演12:30(終演予定19:00)
ブロック指定 ¥8,800/小学生¥1,200/未就学児無料(税込/レジャーシート付・自然文化園入場料込)

【東京公演】
2015年8月22日(土)東京・夢の島公園陸上競技場
開場11:00/開演12:30(終演予定19:30)
ブロック指定 ¥8,800/小学生¥1,200/未就学児無料(税込/レジャーシート付)

【出演アーティスト(出演回数)/出演会場】
■BONANZA STAGE■
※葉加瀬太郎(14)/ 大阪・東京
※鈴木雅之(9)/ 大阪
※藤井フミヤ(9)/ 大阪・東京
※柴田淳(3)/ 大阪・東京
※押尾コータロー(12)/ 大阪・東京
※May J.(2)/ 大阪・東京
※ナオト・インティライミ(3)/ 大阪・東京
※miwa(2)/ 東京
※家入レオ(初)/ 大阪・東京
※クリス・ハート(2)/ 大阪・東京
■JOUNETSU STAGE■
※沖仁(2)/ 大阪・東京
※カサリンチュ(7)/ 大阪・東京
※Ms.OOJA(初)/ 大阪
※USAGI(初)/ 大阪・東京
※LE VELVETS(初)/ 東京

【情熱大陸フェス10人Tシャツ/参加クリエーター(50音順)】
小山薫堂/紫舟/堤大介/葉加瀬太郎/水野学/水戸岡鋭治/May J./森永邦彦/山口晃/ヤマザキマリ

■デビュー25周年記念アルバム『DELUXE ~Best Duets~』

2015/08/05発売
【DVD付ローソンHMV限定盤(2CD)】 ¥3,996(税込)
【初回生産限定盤(2CD)】¥3,672(税込)
【通常盤】HUCD-10194 ¥3,2402(税込)
<DISC.1>
1. To Love You More
2. CAN YOU CELEBRARE ?
3. Baby I
4. Once Upon A Time In America
5. エトピリカ
6. 組曲「もう一つの京都」
7. 情熱大陸2007
8. 春風
9. I LOVE YOU
10. 黄昏のワルツ
11. 放課後の音楽室
12. As Time Goes By
13. 雪の華 (silent version)
※曲順未定、全13曲収録
<DISC.2>
1. エトピリカ (アコースティックver.)
2. ひまわり
3. Someting in the wind
4. Come fly with me
5. 趣味どきっ! (ボサノバver.)
※曲順未定、全5曲収録

◆<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'15>オフィシャルサイト
◆<情熱大陸フェス>10人Tシャツ販売サイト

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