【インタビュー】PULLING TEETH、『フッコーブシ』完成「生き方に忠実に、責任を取れる言葉」

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■ワンマンぶっても続かないですからね、バンドは
■楽しみがないと。険しい演奏なんですけど

▲照井仁(ドラムス)

──サウンド的にはスラッシュ、ハードコア、サイコビリー、メタル、R&R、さらには演歌まで様々な要素を採り入れてますが、ギターはこれまで以上にラウドでタイトなサウンドメイクが印象的で。

寿々喜:ただね、クリーンと歪みの2チャンネルを使い分けてるだけで、そのセッティングも20年くらい変えてないんですよ(笑)。

──それは凄い。自分の音を極めているっていうことじゃないですか。

寿々喜:ですかね(笑)。

──ESP製ギターも1990年代から使用されてますよね?

寿々喜:GRUBBYの後期だからESPには1995年くらいからモニターとしてお世話になってるんですけど。その前の上京したての頃に自分でESPにオーダーして作ったのが最初のギターで。リッケンバッカーのシェイプは1990年くらいから今までずっと変わらず。

▲ESP 寿々喜Model

──そのシェイプを25年も貫いているっていうことはリッケンベースのシェイプに愛着があるんですね。

寿々喜:ありますね。PULLING TEETHっていうバンド名は、METALLICAの元ベーシストのクリフ・バートンによるベースソロ曲のタイトルからちょうだいしたもので。クリフ・バートンが使っていたベースがリッケンバッカーなんです。変わったベーシストで、ホントに大好きだったんで、私もリッケンバッカーシェイプのギターを作ったんですよね。この20数年間での変化を強いて言えば、ギターのボディを1㎝~2㎝くらい厚くして、自然な歪みとか低音が出るようになっていることくらい。

──なるほど。ベースはやはり、ウッドベースを使用していることがPULLING TEETHサウンドの大きな特徴になっていますが、そもそもウッドベースを使われたのは?

植野:GRUBBYのときにウッドベースを使っていたということは、PULLING TEETHの初期の頃に話には出てたんですけど、僕はそこまで乗り気ではなかったんです。でも、ギャンブルで勝った時があって(笑)、試しにアップライトを買ってスタジオに持っていったんです。そしたら、寿々喜さんが「しめた!」と。

寿々喜:よしきた!と。それでウッドベース用の曲作って(笑)。

植野:最初のうちはエレキベースと併用していたんですけど、気づいたらまんまとウッドベースのみになっていたという(笑)。ただ、こういううるさい音楽でウッドベースを使ってるバンドというと、いわゆるサイコビリーとかになってくると思うんですけど、自分は基本的にサイコビリーを通ってないんです。そのなかで、自分っぽいアプローチをとっていくしかないとは思ってますね。

──「世界のゴロツキ」はジャジーなアプローチですし、「男」はロカビリー調のベースフレーズが楽曲の柱になってますよね。「原動力」では凄まじいスラップを聴くことができます。サイコビリー系のスラップの激しさと、ジャズにも通じるアコースティックな指弾きの渋い感じの両面を持っているという。

寿々喜:泰ちゃんはもともと器用な人なんですよ、フラワーアレンジメントで文部大臣賞とってますからね、フレーズが器用。レコーディング中に“ここはもうちょっとメロディっぽいのをほしいんだけど”って言えば、次の日にできちゃってるんです。お任せでできるので、何をやろうが泰治だなっていう。

植野:今の発言は絶対原稿に使ってくださいね(笑)。フレーズに関して言えば、寿々喜さんが原曲を持ってきた時に、だいたいのイメージがあるので。基本はそこを主に考えていくんですけど、自由にはやらせてもらっていますね。

寿々喜:もう信頼関係です(笑)。

植野:録り方に関してはウッドベースを使い始めて試行錯誤してきた結果、電気を通さずにマイクだけ立てて生音を録るというカタチが一番良いというのは、自分のなかで辿り着いていて。そのマイクも何本か立てて、曲によってはブレンド具合を変えていくという方法なんです。

──それであの空気感と粒立ちが同居したアコースティックな音になっているわけですね。ドラムはオープニングナンバー「和を背負う」のイントロからしてバスドラの連打が痛快で、リズムアプローチも多彩ですよね。サウンドメイク等含めて今回のこだわりは?

照井:こだわりみたいなのはあるのかな(笑)。音作りは、ヘッドに必ずaspr製を使っていて、スティックはwincentなんですけど、それくらいかな。あとは低音がウッドベースとかぶらないようにっていうのだけはすごく考えますね。

──「独り言」や「此処に居るよ」とかは曲の静と動の展開が大きいですが。

寿々喜:展開は曲を作ってる時に頭の中でだいたいでき上がってくるので、それをそのまま再現している感じですね。スタジオに入って、「泰ちゃん、ここでスラップ入れて、ここは指で弾いて」とか。「照井君、ここはこうね」みたいな話をして。で、せーのっていう(笑)。

照井:急に風景で言ってきたりしますよ。「え、そこどこの風景!?」っていう(笑)。寿々喜さんのなかでミュージックビデオ的な絵があるんでしょうね。

寿々喜:風景は滅多にないですけどね(笑)。まず音とリズムがあって、それをカウント4つで合わせるっていう、そんな感じ。

──では、起伏の激しい曲もフレーズ自体はそれぞれのパートに任せていることも多い?

寿々喜:そうですね。今さらワンマンぶっても続かないですからね、バンドは。楽しみがないと。険しい演奏なんですけど、練習テープを聴き返すと、いつも最後は笑って終わってますから(笑)。

照井:笑い声は多いですよ。

──その楽しげなスタジオワークのなかでも特に印象深い曲を挙げるとすると?

寿々喜:それぞれ労力を費やしたので、みんな同じくらいですよ。強いて言えばタイトル曲の「フッコーブシ」ですかね。最初に浮かんだアイデアでもあったし。今回、震災にあいまして、なんかこの曲だなって思ったんですよね。個人的にはいい出来かなと思う。

──どの曲も、故郷だったり自分の生まれた場所、生き方について歌ったものだと思いますが。震災という、強烈なまでに故郷を振り変えざるを得ない出来事があって、思いを言葉にしないとどうにもならないという気持ちもあったでしょうか。また、歌うことで、奮い立つ思いというのもあったでしょうか?

寿々喜:自分の家も被災していたし、自分の家と親戚のことで精いっぱいだったので、そういう自分に対してよくやったねって言ってる曲のような気もします。だから、これがタイトルだろうなとも思ったんです。

取材・文◎吉羽さおり



■7thフルアルバム『フッコーブシ』

2015年5月13日発売
PZCI-3 ¥2,365
1. 和を背負う
2. 御命頂戴
3. 男
4. 此処にいるよ
5. オヤトコ
6. 独り言
7. 酔うも酔わぬも
8. 世界のゴロツキ
9. 追い風
10. フッコーブシ
11. 原動力
12. 気にならねえ
13. 起きろ

◆PULLING TEETH アルバム特設サイト
◆PULLING TEETH オフィシャルサイト

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