【インタビュー】T.M.Revolution、10thアルバム『天』に「新しいことはない。シナジーの可能性がある」
■ライブは音源とはまたまったく違う感じのサウンドになっている
■アルバムがなんのガイドにもなってない(笑)
──例えば3曲目の「AMAKAZE -天風-」は、バンドサウンドを前面に押し出したアプローチですね。
西川:これは『レイギガント』っていうゲームの主題歌にもなっていて、その主人公の名前が“天風”なので、“天”とかけてたりもするんですけど。主人公の少年の葛藤みたいなものを初々しく聴かせたいなというところから、こういったサウンド作り方にしました。
──作曲およびベーシックアレンジが浅倉大介さんで、アディショナルアレンジに西川さんと柴崎浩さんの名前がクレジットされています。これは、生音で表現した方が“初々しく聴かせる”という楽曲コンセプトに相応しいということで、西川さんと柴崎さんがバンドサウンドへアレンジしたということですか?
西川:そうですね。特に今回は10枚目のオリジナルアルバムという記念碑的なところもあるので、T.M.Revolutionの在り方とか哲学的なところはきちんと守りながら、足踏みではなく現在進行形をサウンドで示したいと思っていたんです。結果、「AMAKAZE -天風-」に関してはギターの柴崎くんと一緒にこういうアプローチでアレンジしたんですよね。
──楽曲アレンジに関しては西川さんの考え方が大きいんですね。
西川:これまで『vertical infinity』(2005年発表8thアルバム)みたいに僕がアレンジにトライしたアルバムがあって、その後に『CLOUD NINE』(2011年発表9thアルバム)があって。アルバム『天』制作までにもいろんなことをやってきたからこそ、原曲の良さと、それを仕上げていく僕のプロデューサーワークとしてのテクニックが巧く交わって、バランスよく形にできるようになった。そういう点では今回すごく納得のいく作品になったと思います。
──バランスと言えば、曲順も。全体の流れもすごくいいなと思いました。
西川:それはこのアルバムの存在の仕方に関わってくる話なんですけど……本当はライブを観ていただいたほうがわかりやすいんですね。先ほど、「リリーススケジュールの関係上、やむなくこういうカタチでツアーが始まって」という話をしたじゃないですか。今回は期せずしてアルバム制作とツアー制作が同時期に重なったので、ツアーを念頭に置きながらアルバムの収録曲順も考えたんです。
──なるほど。
西川:とはいえ、現在行っているライブは、音源とはまたまったく違う感じのサウンドになっている。正直、もはや“アルバムを聴き込んだからライブが楽しめる/聴いてないから楽しめない”というレベルの問題ではないです。アルバムがなんのガイドにもなってない(笑)。
──T.M.Revolutionはこれまでも、音源とライブでは違ったアプローチで魅せてきましたけど、今回はそれがよりハッキリ分かれているということですか?
西川:いや。ライブって僕は、T.M.Revolutionとしてこれまで大事にしてきた哲学的な部分を踏襲した上で、様々なトライや問題提議をして、観に来てくださったみなさんと切磋琢磨しながら常にお互いの存在意義を高め合っていく、そんな場でありたいと思っているんですね。そこではアーティストとしての真価も問われるし、何かを取り繕ってもお客さんに見透かされると思う。だから、自分の中に納得いかないことや違和感を抱えたままステージには立ちたくないんです。自分の想いとか感覚を120%伝えられる状態で向き合わなければ、みなさんに対しても失礼だとも思いますし。
──その意識の高さはT.M.Revolutionの音源もライブも変わらない部分ですよね。シビアというかストイックというか。
西川:例えばレコーディングが終わって、“これはこうだったらもっと良かったのにな”とか“こうしてみたらもっと面白いかもしれない”っていうのが出てきたら、そういうものも置き去りにはしない。“こうしてみたいけど、もうCD出ちゃってるしな”ではなくて、そう思うんだったらやったほうがいいんじゃない?って僕は思っていて。
──はい。
西川:それは進化云々というより、“このタイミングではこう聴くほうがきっともっといいですよ”っていうことをやってるだけなんですよ。だから“アルバムとライブを分けているんですか?”っていう質問に対しても、そうではなくて“今この曲はこれ!”みたいな。
──西川さんが今一番良いと思われる形を表現しているだけだ、と。
西川:だからツアーも、まだ始まって数本ですけど、納得いかないところを微に入り細に入り修正して、毎回変わってるんです。
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