【インタビュー】NoGoD、けっこう重かった10年の痛みや苦しみを伝えたいベスト・アルバム『VOYAGE』

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■これだけ良い音楽をしているのに世の中に浸透していないというのはすごく悔しい
■10年間で遠回りしたものをここから先はハイスピードで回収していこうと思っています


▲『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』初回生産盤

▲『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』通常盤

――バンドのキャラクターも最初から決めていたのでしょうか?

団長:もう全部最初からありました。NoGoDをやるにあたって、その前にやっていたバンドで経験した失敗とかも活かして、今度はスタートからちゃんとしたものを作ろうという意識があったんです。

Kyrie:意識だけはね(笑)。

団長:うん、意識だけは(笑)。普通のメタル・バンドから化粧をしたバンドに変わるとなると、やっている音楽は一緒でもヴィジュアル系という括りにされてしまう。じゃあ、ヴィジュアル系というのはどういうマーケットで、どういうバンドがいて、どういうライブをして、どういうお客さんが多いのかといったことを徹底的にリサーチしたんです。そうしたら、ものすごい数のバンドが同じような名前で、同じような曲をやっていて、同じような化粧をしていたんですよ。俺は、そういうのがすごく嫌だった。でも、そういう状況は逆にビジネス・チャンスじゃないけど、活用できるんじゃないかなと思って。当時のヴィジュアル系の人達がやっていることは、自分がやりたいことと真逆だったから。化粧していたり、派手な衣装を着たりしていることは一緒だけど、それ以外のことは全部が正反対だった。ということは、隙間産業じゃないかなと思って(笑)。それに、今まで俺がメタル・バンドで抑えてきたものとかも全部出したら面白いかもしれないという気がしたんです。もっと喋りたかったし、もっとメッセージ性のあるポップな曲を歌いたかったし、もっと激しい歌も歌いたかったし、面白いこともしたくて。そういうことをしているバンドはいないから注目を集められるんじゃないかなと思ったんです。

――そういうところから入って、その後宗教をモチーフにしたバンドの世界観なども思いついたんですね?

▲団長

▲Kyrie

▲Shinno

▲華凛

▲K

団長:バンドを作った段階で、“NoGoD”というバンド名にしようということは決めていました。自分は宗教的なものが好きだったし、マリリン・マンソンが好きだったというのもあって。マンソンは元々敬虔なクリスチャンで、そこからアンチ・クリスチャンになったんですよね。アンチ・クリスチャンの人達というのはキリスト教を否定しているわけではなくて、信仰心を逆手に取って商売にしている人間を否定しているんです。僕はどこの宗教にも属していないけど、信仰心というのは大事なものだと思っていて。そういう背景がありつつ、バンド・シーンの中でも特に化粧をしているフィールドは、お客さんのバンドに対する信仰心が強いなと感じていたんです。ヴィジュアル系のライブを観に行くと、お客さんが一糸纏わずに同じフリを……。

Kyrie:それじゃ裸だよ。“一糸乱れず”だろう?(笑)

団長:そうそう(笑)。服は、ちゃんと着てる(笑)。お客さんが一糸乱れず同じ動きをしているのを見て、これはすごいなと思って。それに、彼女達にとって、そのバンドは生き甲斐であると。ということは、バンドは神様なんだなと思った時に、自分の中で全部が一致しました。当時のヴィジュアル系は、内省的な歌詞が多かったんですよ。“死にたい”とか“友達がいない”とか“なにも信じられない”とか。俺はそういうことを歌いたいんじゃなくて、そういうことを感じている人達に喝を入れる曲を歌いたくなったんです。俺が音楽業界で神様みたいに人を救える音楽をやっていけば良いというところで、“NoGoD”というバンド名にしたんです。神様を否定しているわけではなくて、それぞれにとっての神様は何でも良いんだよということを意味しています。そうやってバンド名を決めて、よりわかりやすく、よりのめり込みやすくするために、ライブを“布教”と言ったり、ファンを“信者”といったりする決め事とかも考えました。

――Kyrieさんが加入された時点で、そういうコンセプトもでき上がっていましたか?

Kyrie:でき上がるもなにも、未だにそういうコンセプトは完成していません(笑)。ただあるというだけですから(笑)。

――な、なるほど(笑)。では、10年間活動してきた中でターニング・ポイントになったことなどを挙げてもらえますか。

団長:俺の中では、『V』というアルバムを作ったことですね。2013年にリリースした作品なので、かなり最近ですけど(笑)。あのアルバムが完成した時に、やっと帰ってきたと思ったんです。俺達は初めて音源をリリースしてから、いろんな作品を作ってきて。やっぱり迷走した時期もあったんです。自惚れだったのかわからないけど、自分達がやりたいことをして、それがお客さんをないがしろにすることになっても、みんなは受け容れてくれるだろうと思っていたんです。でも、世の中そんなに甘くなくて。こいつら変わっちまったな…ということで、アッという間に潮が引くように、お客さんが離れていった。それを目の当たりにして、本当にこれで良いのかなと考えた時に『V』というアルバムで、すごく初期衝動を取り戻したんです。バンドをやる楽しさ、ライブの楽しさというのは、こういうことだったよねと。それに、原点回帰といっても過去の焼き直しではなくて、今の自分達を反映させた最新の音楽を提示できたので。バンドとしての自信だったり、結束を改めて感じられたし、これから作る作品は『V』を下回ってはいけないというボーダーラインもできた。そういう意味で、俺の中で本当に大きなアルバムです。

Kyrie:『V』のツアーのファイナルだった恵比寿リキッドルームのライブは、すごく印象的でしたね。内情的な話ですけど、2007年くらいに渋谷クアトロでワンマン・ライブをして、その後アルバムを何作か出して、いろいろ試行錯誤していって。その頃は圧倒的にいろいろなことがやれるようになっていたのに、自分達というものがちゃんとできていないというか。NoGoDとは何なのかということを、ずっと探し続けているような感じだった。それが、恵比寿リキッドルームのライブで、ようやくその頃の自分達を超えられたことを感じたんです。結果として…ですけど。

――ミュージシャンというのは、自然と新しいことをしたくなるものですから、試行錯誤をした時期も決して無駄だったとは思いません。

Kyrie:僕も、そう思っています。作品的には、僕は『V』の一つ前の『現実』というアルバムがNoGoDのすごく大きなターニング・ポイントだったと思います。いろいろ模索する中でメジャー・デビューが決まって、シングルとアルバムを出して。メジャー1stアルバムの『欠片』は全体が一つの物語になっている作品だったけど、今の自分達はそういうものを届けられるのかどうかと迷いながら作った部分もあって。それに、非常にライブの本数が多いバンドなので、その頃にライブのあり方も見つめ直したんです。そういうことを経て作ったのが、『現実』というアルバムだった。等身大の自分達をパッケージしたアルバムと、それを体現できるライブ。そういうことを見つめながらアルバムを作ったことが、その後に良い形で繋がったんじゃないかなと思います。

――バンドの面白さを感じます。10周年を迎えて、今はどんなことを感じていますか?

Kyrie:10年経ったけど、10年間バンドを続けてやるぜという気持ちで取り組んできたわけではなくて。普通に生きていたら10年経っちゃったという感じなんですよ(笑)。なんて言うんだろう……人間というのは一生懸命飯を食ったり、排泄したりしないじゃないですか。腹が減ったら飯を食って、排泄したくなったらトイレに行く。それと同じように、僕は当たり前のこととして音楽に関わっているんです。10年間ずっとそうだったわけじゃないけど、メジャー・デビューしてからは完全にそうなりました。作品を作ることがルーティン・ワークにもなったりする中で、それまでにない楽しみ方をとか、よりクオリティーの高いものを…という意識はあっても、どこかで当たり前にならないといけないものだったりするから。そういう風に音楽と向き合っているから、10年経ったねと言われても、“ああ、そっか…”みたいな感じです(笑)。

団長:とりあえず、10周年を迎えた今のNoGoDのポジションだったり、バンドの評価だったりに全く納得がいってないというのがあって。これだけ良い音楽をしているのに、ここまで世の中に浸透していないというのはすごく悔しいんですよ。子供の頃に夢見ていた大きいステージに立てたわけでもないし。想像以上に自分のプランから大きく遅れた10年間だったので、ここから元々のプランの進行状態まで持っていけない。10年間で遠回りしたものを、なるべくここから先はハイスピードで回収していこうと思っています。制作に対するモチベーションやペースといったことは今の状態を守りながら、もう2.5くらい段階を上げた活動ができれば良いなというのが現実的な目標です。

――次の10年に向かうNoGoDも楽しみです。そこに向けた第一歩とも言える全国ツアーが、4月から7月にかけて行われますね。

Kyrie:ベスト・アルバムを作った時と同じで、ベスト・ツアーって何だよ…というのがあって。その一つの指針として『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』という作品が存在すると思うけど、ベスト・ツアーと言われてもピンとこないんですよね。普通の作品を出した後のライブは、その作品の世界だったり、空間だったりを表現する場になって。それにプラスして、アンコールとしてNoGoDの素の部分というか、作品とは別のところにあるNoGoDの姿を見せるという構成になる。だとしたらベスト・ツアーというのは、最初からアンコールじゃん…みたいな。それって、どうなんだろうと。面白いのかもしれないけど、ちょっと怖いなという気もしながら、今は試行錯誤していて。『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』という作品を踏まえて自分達が表現できるベスト・ライブになるように調整していきます。いずれにせよ、いつもとはまた違う感触のライブになると思うので、期待していてください。

団長:10周年を迎えたバンドということで、NoGoDを始めた頃にまだ小さかったりして、俺達のことを知らない10代、20代の人がいっぱいいるんですよ。名前くらいは知ってるけど、ライブは観たことがない人とか。そういう人は、一度NoGoDのライブを観たほうが良いと思います。もちろん初めて触れる人にベスト・アルバムも聴いて欲しいけど、とにかく俺達はライブを観てもらうことで一番魅力を伝えられるから。だから、ベストを買う前に、とりあえずライブに来て欲しい。それで、気に入ったらベストを買ってくれと。それくらいライブを観て欲しいという気持ちがあるし、楽しんでもらえるライブをする自信もあります。なので、今度のツアーでNoGoDが近くに行った時に、ぜひ会場に足を運んで欲しいです。

取材・文●村上孝之


リリース情報

NoGoD『VOYAGE ~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』
2015年04月08日
¥3,300+税 / KICS-3179~80
初回特別パッケージ仕様
10周年記念キャンペーン応募券封入
DISC 1
1. ノーゴッド(※)
2. 愚連(※)
3. 最高の世界(※)
4. 万黒深層大サァカス(※)
5. カクセイ
6. Raise a Flag
7. 神風
8. STAND UP!
9. FRONTIER
10.THE POWER
11.walk(+)

DISC 2
1. Follow
2. 十人十色
3. 櫻
4. 浮世ROCKS
5. 絶望、バイバイ。
6. 感情
7. downer's high!
8. 恒星
9. 啓発フラストレス
10.心臓
11.II-懐疑
12.敬虔
13.この世界に見放されても
(※)re-recording
(+)new song

ライブ・イベント情報

NoGoD 10th ANNIVERSARY TOUR-2015-
<BON VOYAGE -ROUND 33 PLACES->
2015.04.11 (土)那覇桜坂セントラル
2015.04.25 (土)水戸LIGHT HOUSE
2015.04.26 (日)HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
2015.04.29 (水)秋田CLUB SWINDLE
2015.05.02 (土)札幌KRAPS HALL
2015.05.04 (月)盛岡CLUB CHANGE WAVE
2015.05.05 (火)仙台MACANA
2015.05.06 (水)山形昭和セッション
2015.05.09 (土)長野JUNK BOX
2015.05.10 (日)名古屋CLUB QUATTRO
2015.05.16 (土)HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3
2015.05.17 (日)横浜BAYSIS
2015.05.23 (土)浜松FORCE
2015.05.24 (日)心斎橋BIG CAT
2015.05.30 (土)郡山♯9
2015.05.31 (日)新潟GOLDENPIGS RED
2015.06.06 (土)高松DIME
2015.06.07 (日)徳島club GRINDHOUSE
2015.06.10 (水)広島ナミキジャンクション
2015.06.12 (金)福岡DRUM Be-1
2015.06.13 (土)熊本Be-9 V2
2015.06.14 (日)鹿児島SRホール
2015.06.20 (土)神戸VARIT.
2015.06.21 (日)滋賀U☆STONE
2015.06.27 (土)高崎CLUB FLEEZ
2015.07.04 (土)福井CHOP
2015.07.05 (日)金沢AZ
2015.07.11 (土)甲府KAZZO HALL
2015.07.12 (日)本八幡ROUTE14
2015.07.18 (土)岡山IMAGE
2015.07.19 (日)奈良NEVER LAND
2015.07.20 (月)KYOTO MUSE
2015.07.25 (土)TSUTAYA O-EAST(TOUR FINAL)


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