【ライブレポート】オシリペンペンズ、最低で最高のU.F.O.CLUB公演
オシリペンペンズが、3月8日(日)に東高円寺のU.F.O. CLUBにて3月4日リリースのニューアルバム『オールバック学園Z』のレコ初イベントを開催した。今回、そのライブレポートをお届けする。まず言いたいのが、オシリペンペンズは、“関西アンダーグラウンド”の重鎮的存在という枠にとどまらず、現在の日本のパンクにおける宝だということだ。彼らを知ってるか知らないかで、パンクという音楽を理解する可能性すらあると思う。実際に彼らはこの日のライブでも、バンドにとって“ステージ”とは一世一代の舞台であり、“ミュージシャン”とは到底他と相容れることのない個性そのものなんだということを身体で表していた。
◆オシリペンペンズ 画像
そもそも関西アンダーグラウンドは、1980年代に生まれた大阪や京都を中心としたパンクシーンであり(関東ではイカ天を中心としたバンドブーム最盛期)、さかのぼるとボアダムスの山塚アイのバンド「ハナタラシ」による暴動とも言えるステージングがあまりにもセンセーショナルだった。精神は前衛的でインディペンデント、音楽は速くて重い。とても過激でサイケデリックなシーンである。だから初めて目の当たりにしたら一体何がなんだかわからないものなんだけれど、彼らには有無を言わせないカッコよさがあり、生きいている実感すら覚えてしまうほどの“圧倒”が大きな魅力となるシーンだ。よって、人物としてのキャラも音の鳴りもとにかく濃い。この日のU.F.O. CLUBにも、三上寛、Hair Stylistics(中原昌也)といった、オシリペンペンズとは形態は違えど共にいつまでもその演奏が脳裏に残って夢に出てきそうなサイケフォーク歌唄いと稀代のノイズ&ビートメイカーがゲストとして登場した。
オシリペンペンズの演奏中も、たとえば彼らのキラーチューン「モタコの恋愛必勝法」の直後には、そういった濃さを求めてやってきた客がもっとくれとばかりに「おいっ!」とボーカル石井モタコに食ってかかり、モタコが「おいっっ!!」とやり返すという威嚇のコール&レスポンスみたいなものも起きていた。この夜の東京で一番異様な場所が絶対にここだった。モタコは終始、いきなりフロアに突入したり高所からフロアを見下しながら歌った。
現在の関西アンダーグラウンドの代名詞のひとつがオシリペンペンズである一番の所以は、ライブにおける客とのこうした関係性だろう。このシーンのバンドのライブは80年代からずっと、客を客と思うがゆえに、やたらと演者は暴挙に出る。前述したハナタラシ等の伝説はいろいろ語り継がれているが、そういった過激でビビッドなアクションはきっと、関西人ならではのサービス精神とコミュニケーション能力の高さ、そして客との信頼関係によるものだと思っている。演者と客は当然のように張り合う。もちろんこのライブも全編にわたり、野次や罵倒や意味不明な絶叫などの“発狂”が多発していて、そんな場内に対し、「客にイカすボケがいるねぇ」とモタコも目をギラつかせながら少し喜んでいたように見えた。演者も客もギリギリの崖っぷちまで行って、本気でエネルギーをぶつけ合うからライブって面白い。モタコの顔面も鼻水やらヨダレなどの分泌物でだいぶ前から光っていた。
けれどこの機会に言いたいのは、オシリペンペンズのライブはそういう色物っぽさだけで構成されているのではないということだ。バンドの演奏はドラムとギターのみだということが信じられないほどスペーシーだし爆発力があるのだ。日本的な音頭の小気味よさで推進していきながら、パンクという枠を越えジャズのように享楽的なアンサンブルを聴かせてくれる。3人の息遣いがグッと集中した時、楽器とモタコの唄によるグルーブは、それ自体が生き物みたいにウネリ回って誰にもコントロールできないものになる。その天井知らずの恍惚感を目の当たりにすると、このバンドのパフォーマンスのレベルの高さを思い知る。
楽曲そのものも、お約束のようなAメロ~Bメロ…といった予定調和的な展開などが一切ない。絶対的な個性だけがある。その個性において、あえて音楽に重みを持たせていないことがオシリペンペンズの一番の魅力だろう。ペラペラしているとか、時には下手だとか形容されるのが彼らの音楽だが、極限まで研ぎ澄まされているのだと言いたい。特に最近の楽曲は音数が少なく、足し算より引き算の美学が通底しているようで成熟を感じる。オシリペンペンズは、関西アングラ界の最終兵器的な存在から、なんとかシーンといった杓子定規を度外視する孤高の存在として、本当に創造的な音楽を作っている。
そして、このライブのセットリストの中心にあったのがニューアルバム『オールバック学園Z』だ。2014年2月にオシリペンペンズのPAとして参加していた道下慎介がドラムに転向し、バンドいわく「ジャパニーズアンダーグラウンド最凶メンバー」による今作は、実際にも最高傑作である。一見、アホなテンション満載・支離滅裂満載でギャグバンドのようにケロッとした不敵な表情を浮かべながらも、芯には社会風刺や人生の哲学が今までより濃縮して込められている(と勝手に思っている)歌詞が、まずあまりにもクレバー。「殿様だけがメチャ笑う」「チョンマゲだけがズレている」「チョンマゲだけが花開く」(「拷問」=山下敦弘監督の映画『味園ユニバース』に本人役で出演し演奏している)とか、「あの世とこの世の境はゆるゆる」「いいこと無いけど チワワはかわいい」(「パンツをかぶって走りだせ」)。──モタコは素晴らしい詩人だ。でもまぁ、歌詞の一部を抜き出すより1曲の中に完璧な起承転結と主張があるので、とにかくアルバムを聴いてください。こんなに人を楽しませながら攻めまくってるバンドは他にちょっと思いつかない。オシリペンペンズは、その存在を知ると自分にとって揺るがない聖域のような存在になるバンドだ。楽曲もライブもクオリティーに絶対の信頼が置けるし、そしてもちろん、いつも想像を越えてくれる。だから何度だって彼らのライブを目撃したくなる。あぁ、最高だ。
本編の終盤を迎えた「泣く影」(イースタンユース主宰のコンピレーション『極東最前線3』にも収録)では、お囃子やチンドンのような土着的なリズムによる狂騒的なドラムと、変幻自在に秘孔を付くような中林キララのまさに超絶的なギターに、フロアは乱痴気騒ぎ状態。そして、「学校なんかに 行かなきゃいいのに ひとつのことに 気付けばいいのに」「戦争なんかは やめればいいのに お芋ばっかし 植えたらいいのに」という名リリック! 楽しく乱痴気騒ぎできる以上に、パンクというレベルミュージックとしてあまりにも鋭く攻撃している。
「はよ出てこい!」というラブコールを受けて演奏したアンコール曲「ぼけなすかぼちゃ」まで40分足らずで計18曲。1曲ずつシュールなオチをつけながらムダなものは一切なしに、ぱっぱぱっぱと爆弾を爆発させて進んでいくような彼らのライブは、おおげさではなく一生観てたい。彼らを知ってるか知らないかで、音楽体験の次元が違ってくると言えるくらい。ロックのフリしたポップなバンドに飽き飽きしてる人や、毎日の退屈や不条理に対してなんか違うんだよなと思うだけで頭の中がムズ痒くなってる人、ぜひ。5月23日(土)には、同じくU.F.O. CLUBにて彼らの単独公演<オシリペンペンズ ワンマン!~非・親切、反・優しさ~>が開催される。また行く。
text by RYOKO SAKAI
◆ ◆ ◆
2015年3月8日@U.F.O. CLUB
オシリペンペンズ<オールバック学園Zレコ発 東京編>
[オシリペンペンズ 曲目]
1.時は来た
2.グッドモーニング
3.拷問
4.パンツをかぶって走りだせ
5.ラブレターフロムくっさいブス
6.突然ダイヤモンド
7.カリスマ太郎
8.ときめきタウン
9.ポッポ船長
10.ビートル
11.モタコの恋愛必勝法
12.血の週末
13.漫才
14.コミュニケーションブレイクダウン
15.パンスト
16.泣く影
17.都会
~アンコール~
18.ぼけなすかぼちゃ
ニューアルバム『オールバック学園Z』
2015年5月23日(土) @高円寺U.F.O.CLUB
OPEN/START 18:30/19:30
チケット料金:前売り¥2000(+1D)/当日¥2500(+1D)
※来場者全員に“ペンペンズ拷問プリクラ”プレゼント
[チケット予約]
4月10日(金)16:00よりU.F.O.CLUBにて電話予約受付開始。(電話 03-5306-0240)
(oshiripenpenz@hotmail.co.jpでも受付)
2015年3月4日(水)発売
KONG-010(DQC-1463) ¥1,944(税込)
レーベル:こんがりおんがく
[収録曲]
1.グッドモーニング
2.拷問
3.パンツをかぶって走りだせ
4.突然ダイヤモンド
5.カリスマ太郎
6.ときめきタウン
7.ブー
8.血の週末
9.ポッポ船長
10.ビートル
11.パンスト
12.泣く影
5月4日(月・祝) 大阪城野外音楽堂
OPEN/START 11:00/12:00
[出演]
オシリペンペンズ
DODDODOバンド
neco眠る
cero
MOST
TURTLE ISLAND
DJ荒川良々
DJ角張渉
and more..
※DODDODO(どっどど)、石井モタコ(オシリペンペンズ)、森雄大(neco眠る)の3人のレーベル「こんがりおんがく」主催により大阪城野外音楽堂に多彩なゲスト(スチャダラパー、YOUR SONG IS GOOD、二階堂和美、ハンバートハンバート、荒川良々、MIGHTYMARS)を招き大盛況で幕を閉じた琴線なでなでフェスティバル「こんがりおんがく祭」が2015年も開催決定!もちろん今回も「こんがりおんがく」ならではの素晴らしいゲストの方々をお招きします!!初夏の大阪の新たな風物詩に!!
チケット料金
全席自由 前売り:¥4,500
グループ割:4名 ¥16,000(全席自由)
※保護者同伴に限り小学生以下無料
[問い合わせ]SMASH WEST 06-6535-5569
[チケットinformation]
TICKET PIA(P-code:253-657)
LAWSON TICKET(L-code:52291)
e+
TOWER RECORDS(梅田大阪マルビル・梅田 NU 茶屋町/店頭販売のみ)
主催:こんがりおんがく
協力:SMASH WEST
総合問合せ:SMASH WEST06-6535-5569
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