【インタビュー】PENICILLIN、初のカバー集完成「高校時代の俺をビックリさせたい」

ポスト

■“ペニシリン・ショックは30年後、PENICILLINみたいになってると思います”
■って、ありがたすぎる言葉を上條先生からいただいて

──初回盤のジャケットは、‘80年代に大ヒットした漫画『TO-Y』や『SEX』で知られる上條淳士さんが書き下ろしたことも話題になっていますが、コラボすることになったいきさつは?

千聖:上條先生たち漫画家さんが、吉祥寺でTシャツのイベントを開催していることを知って。そこで、上條先生の漫画『TO-Y』に出て来る「GASP」というバンドのTシャツが限定販売されていたので、僕が欲しくて行ったことが始まりですね。

──なるほど。「GASP」のTシャツに胸ときめかせたわけですね。

千聖:まさか、先生本人達が会場にいらっしゃるとは思わなかったんですが、「上條先生でしょうか?」って勇気を出して話しかけたんです。そこからTwitterでやりとりさせていただくようになったんですね。それから2~3ヶ月後に同じ場所で個展を開かれていたので何度か足を運んで、「今、アルバム作ってるんですよ」って、このカバーアルバムの話をしたら「面白そうですね」っておっしゃってくれたので、「良かったら、いつかジャケットを描いてください」って。そうしたら思いがけず、「いいですよ」って言ってくだって。「本当にいいんですか?」と。本当、男気溢れる先生なんですよ。

──今回は千聖さんの直接交渉で実現したんですね。

千聖:あまり時間がない中、描いていただいて申し訳なかったんですけど、PENICILLINっていうバンド名自体、上條先生の漫画「TO-Y」の中に出てくるペニシリン・ショックっていうバンド名からとったので、そういう話もさせていただいたら、Twitterで、“ペニシリン・ショックは30年後、PENICILLINみたいになってると思います”ってありがたすぎる言葉をいただいて。「TO-Y」は僕らが中学生のときに夢中になった漫画なので。

HAKUEI:当時はスポ根ものとか「ドラゴンボール」みたいな漫画が主流で、「TO-Y」みたいなスタイリッシュでクールでアヴァンギャルドな漫画はなかったんですよ。パンクロックが基本にあって、「これ、カッコいいな」って。新刊が出るとザワッてなるぐらい好きでしたね。

千聖:その後、僕らが大学生になったときには『SEX』っていう漫画を描かれていて、当時のメンバーのGISHOとも盛り上がって話した思い出がある。今考えると、僕らの美的感覚の基準になったんでしょうね。そんな人に描いていただけるなんて、どれだけ光栄なんだよっていうね。

──夢のように嬉しいですよね。

HAKUEI:もちろん。当時の俺はそんなことは夢にも思ってなかったですけどね。

千聖:「TO-Y」がなかったら、PENICILLINっていうバンド名、付けてないもんね。

O-JIRO:思いつかないよね。僕たち的には“ペニシリン・ショック”が共通項だったけど。

千聖:当時、辞書で調べたら、(薬の)ペニシリンの副作用でショック死することだって書いてあって、“なるほどカッコ良いな~”って。でもショック死は(笑)。

HAKUEI:あと、まったく同じバンド名を付けるのもね。

千聖:そうそう。

HAKUEI:まがりなりにもオリジナルバンドを組んでやっていくわけだから、パクりは気がひけるし、そんなマインドじゃダメだなって(笑)。ま、パクり気味ではあるんですけど(笑)。

──ジャケットに描いていただいた上條先生の絵はエッジがあってカッコいいですよね。

HAKUEI:マジでタイムマシーンに乗って高校生の俺をビックリさせたいもん。「このジャケット、見てみ。描いてもらえるんだよ。じゃあね」って(笑)。

千聖:すごくみんなの特徴を捉えてくださって。

O-JIRO:絵の力がハンパないですね。

HAKUEI:写真のほうのジャケットは、実はペニシリン・ショックのボーカル(カイエ)をイメージしているんです。ゴスっぽい恰好をして黒髪にしたりしてね。

──では続いて、新たにレコーディングした5曲についてエピソードを教えてください。まず、石川さゆりさんの「天城越え」は、この曲の持つ情念にPENICILLINの情熱が注入されたダイナミックなバージョンになっていて、ジャンルを超えたカッコいい曲ですね。

千聖:「天城越え」には“誰かに盗られる くらいなら あなたを殺して いいですか”とか“恨んでも 恨んでも”とか有名な歌詞が出てくるんですが、これはヘヴィメタルやヴィジュアル系に通じる世界じゃないかと(笑)。“この曲の世界観は俺たちのためにあるから、カバーするべきだ”って勝手に思っていたんです。“山が燃える”とか“浄蓮の滝”とか“つづら折り”とか、使われている言葉も全てカッコいいんですよね。

HAKUEI:日本特有の侘び寂びの世界観で、精神の深い部分をぐいぐい表現している。この詞は日本人にしか書けないし、理解できないだろうと思いますね。個人的にも絶対カバーしたいと思った曲ですね。

千聖:実際に伊豆の天城まで行かれて曲を書いたというエピソードがある曲で、その情熱と情念がスゴイですよね。それと、「天城越え」をカバーした理由のひとつは石川さゆりさんが、最近リリースしたアルバムが椎名林檎さんやTAKURO、Marty Friedmanさんらとコラボレートしているのもあって、ジャンルの垣根がない方だと思っていたので、それにもリスペクトを込めて。

O-JIRO:「天城越え」は五木ひろしさんや坂本冬美さん、いろいろな方が歌っていらっしゃいますけど、オリジナルなアレンジも今風のアレンジも、どの方のバージョンを聴いてもカッコいいんですよ。それだけ曲のパワーがあるんだなって。PENICILLINの「天城越え」はかなりロックなアレンジになりましたね。その中に“和”を感じさせるような。

HAKUEI:サビも単純なビートじゃないしね。ちょっと和太鼓っぽい感じというか。

千聖:俺たちは欧米ヘヴィメタルのエッセンスもわかっているけど、“和”も血の中にあるんだよね。「天城越え」を演歌寄りにカバーしたら演歌の方々に叶わないし、欧米ロックに寄りすぎてもね…。そのさじ加減が絶妙なアレンジになったと思います。

──哀愁と情熱がクロスするギターソロも聴きどころです。ミュージックビデオがまた強烈なインパクトで、映画の予告編みたいですよね。HAKUEIさんのエロティックな演技も見られる。

千聖:監督も「まさか自分が「天城越え」を撮ることになるとは思わなかった」って言ってたね。

HAKUEI:「燃えますね」ってテンションがアガっていたので、その勢いは出ていると思います。

千聖:撮影中は寒かったけどね。

O-JIRO:朝から夜までロケだったんですよ。

千聖:かがり火のそばでギターを弾くシーンはバチバチ火の粉が飛んできて。

O-JIRO:戦国武将が構えている横に、よく火がくべられているじゃないですか。ああいうシチュエーションの中で演奏してたんですけど、火なので燃え尽きちゃうんですよ。消えそうになったら燃える素材のものをどんどん投下するんですけど、5本立っている中のどれがなくなるかわからない。大爆音で演奏しているのに、監督の“火が消えるぞ!!”って指示を出している声のほうが大きかったですね(笑)。

千聖:まさにヘヴィメタルでした(笑)。実は今まで火を使った撮影はなかったので新たな挑戦でしたね。

◆インタビュー(3)へ
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報