【ライブレポート】吉川晃司、10年振りのライブハウスツアーで「まだ食えるな」

吉川晃司が2月28日、Zepp DiverCity TOKYOにて約10年ぶりとなるライブハウスツアー＜KIKKAWA KOJI 30th Anniversary Live “SINGLES＋RETURNS”＞をスタートさせた。

◆吉川晃司 画像

ツアータイトルに据えられた“RETURNS”という言葉が、デビュー30周年を記念して開催されたツアー＜KIKKAWA KOJI LIVE 2014 30th Anniversary LIVE「SINGLES+」＞の続編的にして発展形的なステージであることを物語る。また、1999年に行われたホールツアー＜CONCERT TOUR 1999 HOT ROD MAN＞の翌年に行われたライブハウスツアー＜HOT ROD MAN "RETURNS" LIVE 2000＞でも“RETURNS”という言葉が使われていた経緯があり、ライブハウスツアーで使われてきたタイトルという側面も併せ持つのが“RETURNS”だ。

このツアーの大きな特徴はライブハウス会場であることに加え、前回ツアーとかぶりなしで選曲されていること。2DAYS形態で開催された前回ツアーも、その直前に行われた＜KIKKAWA KOJI Birthday Night "B-SIDE+"＞もまったくかぶりなしの構成になっていた。これら3ステージを合わせると演奏曲数は約70曲。今回の“SINGLES＋RETURNS”はさらにその70曲以外の曲から選曲されている。つまり4ステージかぶりなし。4ステージトータルで実に91曲をひたすら歌いまくって30年を盛り立てる。

「去年30周年で70曲やって、きっと吉川は吉川晃司に腹いっぱいになるだろうと思っていたんですが、そうでもなくて。まだ食えるな、もっと歌いたいなと思い、“RETURNS”をやることにしました。今回も１曲もかぶりなしです。そうすると、地味になるんじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、これがなかなか。案外いいわ」

という吉川の言葉どおり、１曲ごとにイントロで大きなどよめきが起こり、曲が終わった瞬間に大歓声と拍手に包まれるサプライズの連続。そして、音楽そのものの楽しさが詰まった充実したステージとなった。

演奏は菊地英昭（Guitar）、小池ヒロミチ（Bass）、ホッピー神山（Keyboards）、菅原弘明（Keyboards & Guitar）、菅沼孝三（Drums）というお馴染みの凄腕バンドメンバーとともに、リラックスしながらも緩急自在のステージを展開していく。エッジの効いたソリッドなロックンロールもあれば、深みのある歌声が染みてくるナンバーもある。凝った演出はない。ライブハウスということで1曲1曲、歌そのもので勝負していくステージが圧巻だ。

シンバルキックが炸裂したのは「CLOCKWORK RUNNERS（時計じかけの走者達）」。これは2011年の東京ドーム公演でも演奏されなかったCOMPLEXナンバーだ。同曲をはじめ、「雨のTraveller」「Dance with Memories」などのレア曲ほか、シングル曲でありながら近年披露されなかった「ギラギラ」や「KEY　胸のドアをあばけ」には客席が沸いた。久しぶりに演奏されるナンバーには新鮮な輝きを放つ曲もあるなど、新たな発見がそこかしこに散りばめられた“温故知新”と呼ぶにふさわしいセットリスト。もちろん「RAMBLING MAN」「A-LA-BA・LA-M-BA」などの代表曲では、オール・スタンディングの会場内が一体となって弾けた。

「みんなが元気だということが力になる。みなさんにもらったエネルギーを返せるように、頑張らなきゃっていう気持ちになります」──吉川晃司

この日のラストナンバーはオールスタンディングということで見えにくい人もいたのではないかという思いから、台の上に立って歌われるという場面も。ライブハウスという空間だからこそ、よりダイレクトに伝わってくるものがある。熱さと温かさとが共存する夜。歌いまくりのツアーはまだまだ続いていく。


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