【インタビュー】シンフォビア、ポップ×クラシックのリテラシーに新たな息吹をもたらした『Noc-Turn』

ポスト

■「やっとアーバンでいける子に出会えた……今作は彼女のための作品」(ジオ)
■アーバンな要素を多分に取り入れ、クラシック×ポップの新たなスタイルを提示


──そもそも、ジオがクラシックを自分の音楽に取り入れた理由は?

G:昔、クラシックを勉強していたときに、僕はいつも楽曲の美しい部分を探し出し、それをコンピューターに取り込んでいたんだ。それはシンプルなことだけど、聴いてみるとすごく衝撃的な音楽だったからね。でも、なぜそうなるのかは今も僕にはわからない。僕はその後それをサンプラーに合わせ、さらにはラップを乗せてもらったんだ。その瞬間はまさに魔法のようだったよ。

──クラシックをサンプリングする際、使う曲はどのように選んでいるんですか?

G:まずみんなが知っているメロディーであること。2番目にその楽曲を短くすることができるかどうか。そして、今の音楽シーンに合うかどうかだね。なかには部分的に使うことができない曲もあるからさ。1小節は可能でも主旋律を取り出すのは複雑すぎて無理なこともあるんだ。ワーグナーの曲とかね。楽曲が決まればあとは自然な流れで、試行錯誤しながら完成に向かっていくだけ。ただ、ビートと上手く組み合わせるために、何日もキーボードの前に座っていることもあるし、テンポも大きな問題だね。クラシックが素晴らしいのは、1曲の中でスピードが変わるところなんだ。でも、ポップミュージックではそれができない。ビートを1つ決めたら、それで終わりなんだよね。テンポやスピードでは遊べない、それは難しいところだね。

──クラシックとポップのパート、どちらから手をつけているんですか?

G:それは同時だよ。たとえば『I Do』のクラシックのモチーフ部分を聴くとレゲエのビートが聴こえてくるように、2つは一緒に生まれるんだ。そして、その後にボーカルが入ってくる。クラシックの部分とポップの部分、その棲み分けは重要なことじゃないと思ってる。

──アディーシャは、クラシックをサンプリングした楽曲を歌うことに苦労はなかった?

A:基本的には、ポップスを歌うのとそんなに違いはなかったわ。ジオのアレンジはとても新鮮だし、一方で普段私が聴いているヒップホップと同じようにビートも強いからね。でも、すべての曲がそうとは言えなかったかな。楽曲に合うメロディや歌詞を見つけるのが難しい曲もいくつかあったのも事実ね。あと、苦労したことと言えば、クラシック音楽のレベルがとても高かったこと。今回はただのポップ・シンガーみたいにはなりたくなかったし、ジオだけじゃなく私も含めて2人とも素晴らしいって言ってもらえる、みんなに認めてもらえるような作品にしたかったの。だから、ある意味そのプレッシャーは大きかったかな。

──今作に関して言えば、アーバンな要素も増えているような感じがしました。それはアディーシャがいたから?

G:僕がずっとアーバンが好きだったっていうのもあるけど、彼女のアルバムを聴いて僕は“やっとアーバンでいける子に出会えた”って思ったんだ。だから、今作は彼女のための作品とも言えるかな。みんな、ギターで歌う彼女なんて聴きたくないと思ってさ(笑)。とはいえ、ギターでもいろいろやったけどね。実際、彼女の声はギターに乗せても最高だったし。

──あと、すごくドラマティックな作品ばかりで。

G:それはアディーシャがドラマ・クイーン(ヒロイン)だからさ……っていうのは冗談で、彼女はそんなタイプでもないからね(笑)。楽曲がドラマティックなのは、クラシック自体がそういうものだからだと思うよ。あとは、僕のルーツがへヴィーメタルをはじめ、ハードな音楽であることも大きいかな。ハードな音楽というのはドラマティックなんだ。ただ、それに関してはアディーシャが時々文句を言ってくるけどね(笑)。“ハード過ぎ!”とか、“もうちょっと簡単にできない?”とか。僕としては、やりすぎないように気をつけてはいるんだけど、今より簡単にすることなんてできなくてさ。もし彼女が許してくれるなら、僕はもっとドラマティックにしちゃうね(笑)。僕はドラマティックな音楽が好きなんだ。

──今回、アディーシャとスウィートボックスのボーカル:ジェイドがコラボしている楽曲も収録されていますよね。それは大きなトピックです。

A:ジェイドとのコラボは素晴らしかったわ。最初は、彼女が私のことを好きじゃなかったらどうしようって少し緊張したけど、実際に会ってみると全然そんなことなかったし。彼女は本当に温かい人で、私をすごく歓迎してくれたの。たくさんのアドバイスもくれたし、東京のこともいろいろと教えてくれた。まるで姉のような感じね。もう一度一緒に何かできたら嬉しいな。

──2人は全然違う個性を持っていますよね。そのあたりコラボする上で大変ではなかったですか?

G:確かに2人は全然違うね。アディーシャはアーバンタイプで、ジェイドはカントリーのシンガーソングライター・タイプ。そして、アディーシャはダンスをして、ジェイドは詩を読む。この違いは大きいと思う。でも、それはアディーシャが詩を読まないって意味じゃないし、ジェイドが踊らないってわけでもなくて、内面にあるヴァイブが違うだけ。そして、似ているところもあるんだ。それが面白くてね。2人とも仲良くやっているし、僕もどちらかを選ぶ必要もない。だからこそ、今回コラボ曲を2曲作ったんだけど、どちらもすごくシンプルにできたね。ジェイドは歌、アディーシャはラップ、両者の個性を活かすこともできたし。ただ、アディーシャは歌も素晴らしいし、ジェイドもラップができないわけじゃない。今度はそれを試してみてもいいかもね(笑)。

──アディーシャは今回シンフォビアとして活動して、その結果変化したことなどありますか?

A:私自身、すごく成長できたわ。最初の頃を考えると、声もラップも歌詞も、格段に向上したと思う。アルバムを聴いてもらえれば、どの曲が最初の頃に収録して、どれが後に録ったものか、きっとわかると思うわ。ただ、改善することはまだまだたくさんあると思ってる。私は絶えず成長し続けるわ。

──このシンフォビアのプロジェクトは今後どうなっていくのでしょう?まさか一回限りのプロジェクトというわけじゃないですよね?

G:次の作品ももう着手しているよ。2枚目、3枚目、4枚目って、今後もリリースしていくだろうね。どこまで続くかはわからないけど、絶対に今後も作品は出していくつもりだよ。

A:私は、とにかくみんなに私のことを好きになってもらって、リスペクトされるようになること。そして次の作品を期待してもらえること、それが目標だわ。

取材・文:杉山忠之


『Noc-Turn』

2015.02.18 発売
¥2,160(税込) 品番:AVCD-93096
<CD>
01. ウィ・アー (feat. ダニエル・ダイス) ~運命へのエール~
ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
02. アイ・ドゥ
チャイコフスキー「白鳥の湖」
03. 追憶のラフマニノフ
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
04. ブラン・ニュー・デイ ~新たなる未来へ~
グリーグ ペール・ギュントより「朝」
05. 愛という名の憎しみ
ベートーヴェン ピアノ協奏曲5番「皇帝」第2楽章
06. トータル・エクリプス (feat. ダニエル・ダイス)
バッハ 「トッカータとフーガ」
07. 至上の愛
バッハ 「G線上のアリア」
08. 欲望のままに
ショパン 「ノクターン」
09. 過ぎ去りし運命 (feat. ジェイド&マリノックス)
10. 官能のトリガー
チャイコフスキー「くるみ割り人形」
11. スーパーフリーキンマーヴェラス
モーツァルト 魔笛より「夜の女王のマリア」
12. 愛の証明
13. ヴィクトリー (feat. ジェイド)
バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」
14. スティル・スタンディング(feat. マリノックス)
ガブリエル・フォーレ「パヴァーヌ」


◆インタビュー(1)へ戻る

この記事をポスト

この記事の関連情報