CakewalkのDAW「SONAR」新シリーズ登場、DSDフォーマット対応、常に最新版が使えるメンバーシップ制を導入

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ティアックは、米Cakewalk社TASCAM Professional Softwareブランドの音楽制作ソフトウェア「SONAR」の新シリーズを発売する。

「SONAR」はWindows用の音楽制作ソフト。これまでは「SONAR X3」のようにバージョンを表す数字が名称に含まれていたが、新たにメンバーシップ制が導入され、常に最新版が使えるようになることからバージョンナンバーは削除。また、各グレードの名称も変更され、最上位版が「SONAR PLATINUM」、ミドルグレードが「SONAR PROFESSIONAL」、エントリーグレードが「SONAR ARTIST」と改めれた(従来は上位からPRODUCER、STUDIO、ESSENTIAL)。

19日に東京・八重洲のギブソン・ブランズ・ショールーム・トーキョーで行われた発表会には、ボストンからCakewalkの代表取締役のMichael Hoover氏らが来日、新機能に加え、メンバーシップ制の内容を説明した。


▲名称も新たに3グレードをラインナップしたSONAR新シリーズ(左)。ティアックの執行役員兼ミュージックインダストリービジネスユニット長の吉野伸也氏は「Cakewalk社とティアックの技術が融合した記念すべき初のコラボ商品」と紹介(中)。Cakewalkからは代表取締役のMichael Hoover氏が来日。

新たに導入されたメンバーシップ制は、ライセンス保有者は製品のサポートを受けられるとともに、常に最新版が使用できるというもの。これまでは新しい機能が開発されても、1年に1度のバージョンアップまでリリースを待たなくてはならなかったが、今後はすぐに新機能が追加さら、ユーザーに提供されることになる。「このシステムの導入により、ユーザーの満足度が増し、ユーザーもタイムリーに製品を受け取ることができる」とHoover氏。メンバーシップライセンスは12ヶ月単位となっており、12ヶ月経過後の更新は有償。更新時はユーザー向けの特別価格でライセンスを更新することができる。期間終了後はサポートが受けらず、最新版を入手することもできなくなるが、ソフトウェアは継続して使用することができる。「他社のソフトウェアを研究したが、新しい機能が追加されるが、いわゆるサブスクリプション制ではソフトウェアを貸与されているということに関して、利用者は必ずしも満足していない」ということから導き出されたのが、新SONARのメンバーシップ制なのだという。なお、店頭で販売されるパッケージ版にはすべて12ヶ月のメンバーシップライセンスが含まれる。

もう1つ重要なこととして紹介されたのが、新たに構築されたCakewalk Command Centerというシステム。シリアルナンバーやライセンスを一元管理でき、ユーザーのソフトウェアがどのような状態になっているか、新たにインストールできるソフトウェアがあるか、などが常にわかるようになっている。


▲メンバーシップ更新で最新のソフトウェアが入手でき、サポートも受けられる。終了後も継続使用は可能。Command Centerではアップデートが行えるほか、任意のバージョンに戻すことも可能。

■DSDのインポート/エクスポートが可能に

新機能最大の目玉はDSDフォーマットへの対応。ハイレゾ音源の配信で注目を集めているDSDファイルのインポート、エクスポートが行える。これはDSDレコーダーを長く手がけてきたTASCAM開発陣の協力により実現したもので、ギブソン・ブランド・ファミリーのCakewalkとTASCAM初のコラボによる成果だ。DSDファイルをPCM変換して編集し、DSDファイルとして書き出すことになるが、音質変化は最小限に抑えられている。実際にインポート、エクスポートの手順を見ることができたが、ファイルのドラッグ&ドロップでインポートできるなどその作業はWAVファイルのインポート/エクスポートと変わらずいたってカンタン。時間もさほどかからない印象だ。


▲DSD 2.5/5.6.11.2MHzに対応。DSF/DIFFフォーマットでエクスポートできる。右はエクスポートの画面。従来のフォーマットと同様の操作で行える。

オーディオ編集機能ではボーカル編集を効率的にするVocalSync機能が追加(PLATINUMのみ)。コーラスパートを含む複数のボーカルパートについて、カンタンな操作でタイミングをぴったり合わせ、サウンドに一体感を与えられる。デモではラップを録音した2トラックを例に、ノブを回すだけでシンクすることが示された。

画面上部のコントロールバーも機能性と使い勝手を追求して生まれ変わった。多くのモジュールが並ぶコントロールバーは、すべてを表示するスペースがない場合は切り替えが必要だったが、新たにボタンを設け横にスクロールすることでカンタンに数多くのモジュールにアクセスできる。スクロールにはマウスホイールも使用可能。5段階のリサイズができるほか、アイコン化する格納モードも用意。マウスを合わせるだけでパラメーターを表示し、効率よく操作が行える。


▲複数のボーカルパートのタイミングを合わせるVocalSync(左)。ツマミでカンタンに調整できる。コントロールバーではモジュールを折りたたんで表示、マウス操作で必要なパラメータにすぐアクセスできる(右)。

ミキサー機能でうれしいのがMix Recall機能。デジタルミキサーのシーンメモリーのように同一セッションに異なるミックスを保存でき、エフェクトの設定を変えたり、プラグイン音源を差し替えた際の比較試聴が驚くほどカンタンに行える。異なるミックスを一度にエクスポートできるのもなかなか便利だ。

MIDI編集機能も強化。ドラッグ操作でMIDIをオーディオのように伸縮できるタイムストレッチ機能や、選択した範囲のフレーズを自在に貼り付けられるパターンツールが加えられた。パターンツールは通常のコピーとは異なり、ペイントツールで塗りつぶすように貼り付けが可能。1小節分のコピー元を指定して何小節でも1回の操作で繰り返しペーストされるので、何度もペーストコマンドを実行する必要はない。また、SHIFTキーを併用すればノートの音程変更も可能なので、トランスポーズも効率よく行える。


▲シーンを保存し、エフェクトやインストゥルメントのパラメータも含め瞬時に再現することで試聴比較ができるMix Recall機能(左)。パターツール(右)はマウスで描くように貼り付けが可能。

また、ProChannelにはOverloud社のMoReVoxをベースにしたサンプリングリバーブREmatrix Soloが追加。ホール、ルーム、プレートなど100種以上のインパルスレスポンス(IR)を用意、カスタマイズも可能だ。

プラグインではドラム音源Addictive Drums 2を引き続き収録。SONAR X3では最上位グレードだけだったが、今回からミドルグレードにもバンドルされる。PLATINUMにはAddictive Drums 2 Producerをバンドル、拡張音源ADpak、MIDIpak、Kitpiece Pakから任意のパックをそれぞれ3種選択できる。PROFESSIONALはAddictive Drums 2 Soloがバンドルされ、拡張パックは各1種が選択可能だ。また、ギターアンプシミュレーターも一新、16種類のアンププリセットを用意する。


▲Overloudによるサンプリング・リバーブREmatrix Solo(左)、Melodyne Essential(右)をはじめとした豊富なプラグインをバンドル。

このほかにも多くの新機能を備えた新SONARシリーズ。バンドルプラグインもD-PROやRaptureといったソフトウェア音源、ピッチ/タイミング補正のMelodyne Essentialをはじめ引き続き豊富に揃う。バーチャルインストゥルメントとエフェクトはPLATINUMがそれぞれ21種、60種、PROFESSIONALが17種、44種、ARTISTが11種、19種を用意する。

PLATINUM、PROFESSIONAL、ARTISTとも通常版パッケージのほか、アカデミック版やアップグレード版もラインナップ(アカデミック版はARTISTを除く)。発売時期は通常版とアカデミック版が3月上旬、アップグレード版は2月下旬となっている。


▲新機能を紹介したのはCakewalkのプロダクト・スペシャリストDan Gonzalez氏(左)。内蔵されるパターンやアルペジエイターを使い、カンタンにトラック制作が行えるデモも実演。新エフェクトのサウンドも聴くことができた(中)。写真右は同時発表されたTASCAMのスタジオモニタースピーカー「VL-S5」。デモでは出荷開始されたばかりのオーディオインターフェイスUS-16x08とともに使用された。

製品情報

◆SONAR PLATINUM
価格:オープン(市場想定売価 61,111円 税別)
発売日:2015年3月上旬
◆SONAR PROFESSIONAL
価格:オープン(市場想定売価 27,777円 税別)
発売日:2015年3月上旬
◆SONAR ARTIST
価格:オープン(市場想定売価 14,444円 税別)
発売日:2015年3月上旬

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