【インタビュー(ギター解説付き)】いちむじん、クラシックから飛び立ち染め直された名曲達がパッケージされた多彩かつエモーショナルな最新作『恋むじん』

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■「ひだまり」は、自分の中でも名曲が出来たなという自信があります
■高知の田舎の自然な香りと人の温もりをイメージした曲で5分くらいで出来た曲なんです


――『恋むじん』に入れる曲は、どういう風に決めたのでしょう?

山下:とりあえず、好きな曲をバァーッとあげていって。で、僕達のお客さんは30代から60代くらいまでの女性の方が多いんですね。そういう背景がありつつ、最近は『昼顔』とかがブームになっているので、恋愛をテーマにしたアルバムにしたいなと思って、最初にあげた曲の中からラブソングをチョイスしました。

宇高:'80年代、'90年代の曲で、誰もが知っている曲が並んでいます。僕自身も思い入れのある曲ばかりだし。「川の流れのように」とかはちょっと意外に思うかもしれないけど、もう子供の頃から大好きな曲でした。僕の母親が歌が好きでよくラジオとかを聴いていたんですけど、よくこの曲も流れていて。あとは、「ひこうき雲」も印象が強いです。ジブリ映画やCMで耳にして、良い曲だなと思って、ちゃんと聴いたんですよ。あやや(松浦亜弥)バージョンですけど(笑)。そうしたら、それがメッチャ良くて、もうボロボロ泣いてしまって。“これは、絶対入れたい!”と思って、やらせてもらいました。

山下:僕は、印象の強い曲がすごく多いです。まず、「川の流れのように」は、僕はもう幼稚園の頃から大好きでした。美空ひばりさんが亡くなった時に僕は香川県に住んでいたんですが、地元でひばりさんを偲ぶ公演があって。お母さんに、それに連れていってくれとせがんだんです。その記憶が強く残っている。「糸」はBank Bandで知って、桜井(和寿)さんが歌っている「糸」に惹かれていて、これは絶対に入れたいという想いがありました。「ひこうき雲」は、アレンジを編曲者に頼んだ時に、トレモロ・ピッキングのパートを入れて欲しいとリクエストしたんです。これも良い曲だし、イメージ通りに編曲してくれたこともあって気に入っています。「情熱」は、2014年の6月にTUBEさんのツアー・ファイナルにゲストとして出させていただいて、前田さんと3人で演奏させてもらったんですけど、もうハンパじゃないくらい感銘を受けたんです。僕の中で、今年一番印象の強い出来事だったので、この曲は絶対に入れたいと言いました。

――「イエスタデイ・ワンス・モア」や「イマジン」といった洋楽の曲も入っています。

山下:「イエスタデイ・ワンス・モア」とか「イマジン」「ならず者」あたりは、もう“これでしょう!”という曲ですよね。あとは、『タイタニック』の「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」は、最初のメロディーを僕が弾いているんですが、これはもう完璧です(笑)。『恋むじん』の中でも、僕が一番気に入ってるパートです。「ワインレッドの心」は、最近玉置浩二さんがテレビに出るようになって、すげぇなと。1人だけオーラが違うな…というところに惹かれてカバーしたくなって入れました。「ワインレッドの心」はかなりアレンジされていて、いやらしい感じの世界観もお薦めです(笑)。


宇高:そうだね(笑)。僕は「イマジン」や「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」の音数の少なさに驚きました。元々アレンジャーに音数を少なめにして欲しいとお願いしたんですが、予想以上に少ないし、サラッと終わる感じになってて。だから、“これ、大丈夫かな?”と思ったけど、意外なことに、お客さんの反応がこれが一番良かったりするんです。それで、演奏する側とリスナーの感覚が違うことはあるんだなと改めて感じました。

山下:アレンジということでは、「ロビンソン」は、吉岡たくさんがアレンジしてくださって。彼は嵐とかKAT-TUNといったジャニーズ系のアレンジをされているんですが、僕らと同じ高知県の方なんです。そういうご縁もありまして、2年前くらいから良かったら一緒に何かやらせて欲しいですという話をしていて、今回それが実現しました。「ロビンソン」は打ち込みを入れた形のアレンジで他の曲とテイストが違っていて、アルバムの良いフックになっているんじゃないかなと思います。「言葉にできない」は、インスト・アルバムなのに歌を入れてしまったという(笑)。

宇高:これは、僕らというよりはスタッフのアイディアです。

山下:そう。いちむじんを知っていただくための切り札の一つになるんじゃないかということで。最初は自分達で歌うという話もあったんですけど、まだちょっと無理ですと言いました。でも、いつかはエリック・クラプトンばりに、歌のほうにシフトしていくかもしれないです(笑)。

――「春の足音」と「ひだまり(2014)」というオリジナル曲2曲が入っていることも要チェックです。

宇高:「春の足音」は、癌と闘病されている方を応援するNPO法人から依頼を受けて、2014年の1月に作った曲です。イメージ的には、春はいろんな出会いや別れがありますね。そういうイメージと、清々しい気持ちで新しい一歩を踏み出していくようなイメージを元に書きました。癌と闘っている方々がこの曲を耳にして、少しでも前に行けるような気持ちになってもらえると良いなと思っています。

山下:僕は、この曲は乃木坂48に歌ってもらいたいです。

宇高:アハハ!!

山下:真面目な話、そう思っているんです。これは、アイドルが歌うと最高に良い曲なんですよ。聴いた瞬間にそう感じて、僕はこの曲を弾くのが恥ずかしいんです。こんなオッサンが、こんなメロディーを弾いて…と思って(笑)。どんな顔をして弾いたら良いのか分からない。だから、この曲を演奏する時は、いつも少しはにかんでいます(笑)。

宇高:そうだったんだ。弾いてくれて、ありがとう(笑)。

山下:「春の足音」は、いつかボーカル曲にしたいですね。「ひだまり(2014)」は2012年に書いた曲で、'12年、'13年にインディーズで出したアルバムにも入っているんですが、周りのいろいろな方がこの曲も広めたいと言ってくれていて。それで、今回新たに録り直すことにしました。「ひだまり」は、自分の中でも名曲が出来たなという自信があります。高知の田舎の自然な香りと人の温もりをイメージした曲で、本当に5分くらいで出来た曲なんです。そんな風に、全く迷わずメロディーが出てきたのは、この曲が初めてだった。宇高も僕も高知県で生まれたということからは、どうしても離れられなくて。そこで育つことで身に染みついたものが出てくることを、オリジナル曲を書いていても感じるんですね。「ひだまり」もまさにそういう曲で、海外で演奏した時にすごく受けました。

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