【インタビュー】音楽に骨を埋める、THE ORAL CIGARETTESの“覚悟”
THE ORAL CIGARETTESの記念すべきメジャー1stアルバムが完成した。新たなJ-ROCKシーンを牽引していくバンドの筆頭として、彼らの動向は今後の日本の音楽シーンを占う重要な道標にも見える。
◆「STARGET」「起死回生STORY」MUSIC VIDEO
CDが売れないとあえぐ音楽業界のど真ん中で、THE ORAL CIGARETTESのアルバムはどういう立ち位置にあるのか? 作品は色眼鏡なく素晴らしい出来上がりを見せている。元来の感覚で言えば評価されて当然の作品であり、ヒットしてしかるべきアルバムであることは間違いない。しかし、シーンはライブ/イベントに軸が移り、アルバムビジネスには陰りが見える。前途洋洋と未来に輝くTHE ORAL CIGARETTESの素晴らしい出来上がりを見せた1stアルバム『The BKW Show!!』は、大ヒットしてもおかしくないが、セールスが振るわないというまさかの現象も起こりえる世の中となった。
そんな時代に音楽で牙を剥くTHE ORAL CIGARETTESは、何を思い、何を睨み、何を求めてここにいるのか? メンバー全員に話を訊いた。
◆ ◆ ◆
■フルアルバムってすごい難しい位置やなって思ってた
■お客さん目線の時からそう感じていたから
▲山中拓也 (Vo/G) |
山中:今まででいちばん時間がかかったレコーディングだったので「やっぱり大変やったな」って思います。1曲1曲としっかり向き合うことに専念しましたから。実は僕達、フルアルバムを出すことにすごい抵抗があって…「お客さんにアルバムとしていかに飽きないで聴いてもらえるか」そこに重点を置きたいという話になって、じゃあどうやって1曲目から10曲目まで、飽きずに何回も聴きたいと思えるアルバムにするのか…。
──重大なテーマですね。
山中:はい。そこをすごく話し合って、アルバムの流れと全体の感じを自分たちの中であらかじめ決めて、「じゃあこの曲は2曲目に入る位置だからもっとこうしたほうがいい」とか、そういう話し合いを1曲1曲詰めていきました。
──アレンジする時点で、すでに曲順も意識していたんですか?
山中:そうですね。
──「フルアルバムを出すことへの抵抗」とは、どういう意味ですか?
山中:僕らはもともとライブにめっちゃ遊びに行ったり、アーティストを好きで高校生の時からずっとライブに足を運んだりしていた、もともとライブキッズだったりしているんですね。だから、ミュージシャンが出した音源も買ってよく聴いていたんですけど、そんな僕らでもやっぱり「フルアルバムってすごい難しい位置やな」って思ってた。お客さん目線の時からそう感じていたから。
──要は「フルアルバムって買わない」ってことですね?
山中:買わないし、飽きちゃう。
鈴木:買ったことで満足して、あんまり聴き込まなかったり。
──いきなり核心の話になりましたね。
鈴木:アルバムを聞いてもね、代表曲とかをぱっと聴いて「ああ、やっぱりこの曲いいな~」って思ったり、「あ、これは捨て曲かな」とか。…その人が作った気持ちとかも知らないんですけどね。
──オーディエンスは好きなように評価しますからね。
鈴木:やっぱり自分たちとなると、そうはなりたくなくて、どの曲もちゃんと聴いてもらいたいし、だから今までミニアルバムかシングルしか出してなかった。でもいざフルアルバムを出そうっていうことになって…ちょっと抵抗もあったけど、だから10曲は僕らの中では多いほうです。フルアルバムにしては少ないほうやと思うんですけど。
──今どきは、ね。
鈴木:うん。ほんとに10曲っていうのもすごい難しかったけど、その中でじゃあどういうアルバムにするか、4人で曲順も話し合ったので、ちゃんと聴けるアルバムになったかなとは思います。今までも「このアルバムは聴きやすいな」という作品はあったから、「それはなんでなんやろう?」みたいなのは研究したりした。「ああ、間にこういう休める曲があるんだ」とかね。
──考えぬいた末の10曲入り、ということは、候補曲は他にもいっぱいあったんですか?
山中:曲はけっこうあった。新曲も。新しく作った曲はアップテンポな曲が多くて、どういう風にアルバムに組んでいくか、やっぱり悩みました。アルバムとしてのストーリーをちゃんと作りたいから、これだけアップテンポな曲がたくさん並んでもしんどいし…。そんな時、まさやんが「旧譜のこの曲やったら絶対アルバムとしてのストーリー性もあるし、お客さんがフルアルバムとして聴いて飽きない1曲になる、1回クッション挟める曲になると思うよ」って言ってくれた。まさやんは、このメンバーの中でいちばん後に入ってきたメンバーなんです。
──客観的な目を持った貴重なメンバーということですね。
山中:うん、すごくオーラルを客観的に見てくれる立場。オーラルは、まさやんが前に演ってたバンドとも仲良くしてたんで。だから、旧譜から曲を持ってくるっていう考えは僕らにはあんまりなかったんですけど、悩んでた時にまさやんが、そこを突いてくれた。それで上手くまとまってストーリー性もあるいい10曲になった。
▲鈴木重伸 (G) |
鈴木:もう曲作りの時に「だいたいこの曲はこういうイメージ」と共有されていて、歌詞の世界観もみんな聞いて、説明も受けて、「これどういう意味?」って言ったら「これはこういう意味だよ」…と。全曲そのようにやっています。曲のイメージができたら、それに向けて楽器陣はアレンジに向かう。曲の中でも波をみんなで一緒に作っているし、だいたいのテンポとかももう決まっているし、曲順を考えるときもみんなの中にあるイメージの差はほんとに少ない。みんな同じような感覚でアルバム作りができたと思います。
──詞とメロはどのようにできていくんですか?
山中:曲によるんですけど、ひとつのきっかけがあって、そこからどんどんみんなで広げていく形が一番多いです。例えば1曲目の「嫌い」は、最初の10~20秒は僕が作ったのをみんなにぶつけて、「あ、それいいやん」「じゃあどうやって広げていく?」みたいな感じでスタジオで広げていく。その中でだいたいの曲の雰囲気なりをみんなで共有し合って、「じゃあ俺、詞書いてくるわ」って歌詞をばーって書いて、みんなに内容を説明する。“俺が思っていた曲の感じと、この拓也が書いてきた歌詞の感じでここにちょっと差が生まれたから、じゃあここはどうやって歌詞に寄り添うようにしていこう”って各メンバーが考えて、アレンジがどんどん変わっていく。そんなやり方がオーラルのスタンダードかな、と。
──曲が持つ世界観を最初から共有していくんですね。
山中:そうですね。
──凄いなぁ。普通そんなもんですっけ?
鈴木:いや…たぶんけっこう特殊だと思うんですよね、僕ら。
──2010年結成から、バンドの音楽性も随分変わってきていますよね?
鈴木:確かに変わってきてますね(笑)。
──昔、今、そして今後、どのようになっていくのでしょうか。
中西:たぶん拓也自身の考え方とか、刺激を受ける音楽とかがやっぱり日々変わっていっていると思う。以前からライブを意識している部分は変わらないんですけど、例えば「お客さんを盛り上げる曲を作りたい」っていう考えから、ライブに来てくれるお客さんに対する意識が強くなったり、自分の中で戦っていたり葛藤している部分を出している歌詞だったり、拓也自身の感性的な部分、刺激を受けてきている部分とともに、音楽のスタイルは変わっているというよりも増えていると思う。やりたいこと、表現したいことが増えて、それができるようになってきているっていう感じ。
──と、中西さんから言われてますけど。
山中:(笑)多分、ぼや~っとしてるものがどんどんはっきり輪郭を帯びてきた感覚です。バンドを始めた時は○□先輩みたいなボーカルになりたいとか、こんなバンドみたいになりたいっていうのが強くて、自分がどういう人間かなんてまったく考えずにそこに向かっていたと思う。モノマネをするみたいな感覚に近いんですけど、そこからだんだん自分がどういう人間かが見えてきて、自分=山中拓也ってどういう人間なのか、THE ORAL CIGARETTESってどういうバンドなのか、みたいなことをすごく考えるようになった。それで音楽の感じもすごく変わってきたなっていうのもあって。
──なるほど。
山中:昔は歌詞とかあまり気にせずに、いかにお客さんの耳に入りやすい音を出すか、みたいなことを意識して歌詞を書いてたんです。でもそれがだんだん自分の中で、どこか「ん?」って思うところが出てきた。自分が抱えているものを出すところは歌詞しかないし…とか、いろいろ考えるようになってきたら、どんどん歌詞にもすごく力を入れるようになってきた。自分がステップを上がっていっているのが音楽にも繋がって、僕と同じように音楽も成長するように、そのままのその時の僕みたいなものがどんどん出せている気はしています。
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