【インタビュー・後編】安倍なつみ、「人生何が起こるか(笑)。自分でも驚いてる」

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■ 「光へ」

── じゃあ、唯一のオリジナル曲。

安倍:今、自分に起きていることが夢のようっていう話を先ほどしましたが、この曲はまさに今の自分を代弁してくれているような、そんな曲です。夢や希望など、そういう光に向かって、今、1歩ずつ歩き出している、そんな曲なんですね。とても前向きで、前に、とにかく前に進んでいくという力強い曲です。生きていく上で大切にしなければならないこと、それをこの曲は歌いながら、私自身、教わっているような感覚もあります。愛の形はいろいろあるけれど、でも目に見えていることがすべてではない、心の目で見てごらん、ということも。とても壮大なナンバーですよね。しかも、こういう大きなテーマの曲をいただけるようになったんだという感慨もありました。

── あー。なるほど。

安倍:10代、20代からいろんな方に曲を提供していただいてきて、そんな中で、ようやくこういう歌が歌えるようになっただなって。胸がいっぱいになりました。じーんって。

── “私たちは奇跡”っていう歌詞がありますけど、この曲に巡り会えたのも奇跡?

安倍:そうですね、奇跡です。

── でも小さな偶然の積み重ね、みたいな。

安倍:はい、そうです。信じるところに進んでいけば、こんな夢のような出来事だったり出会いが待っている……本当に人生ってわからないなって。私はそれを、実際の経験を通して感じさせてもらえているんです。“願えば叶う”という言葉もありますよね。このごろはイヤなニュースも多いけれど、でも愛されていない人などいなくて、きっと誰かに愛されていると思うだけで、人は前を向いて生きていけるかもしれない。だから、歌の出だしの“もしも寂しいなら”からインパクトがすごいあるなって。それに続く“自分を抱きしめて”。これってやっぱり触れた時の温もりだったり、肌の温度だったり、皮膚と皮膚で感じるもの、それが生きてるっていうことだよ、ということとか、すばらしい歌だと思います。


■ BONUS TRACK for CHRISTMAS 「白のワルツ」

安倍:これはボーナストラックです。リリースタイミング的にも、クリスマスナンバーを入れたいねという話になって。クリスマスナンバーって、キラキラしていて本当にハッピーで、大好きなので、ぜひ入れたいなと。この曲は私、実は知らなくて。今回の音楽チームのスタッフのひとりが、実はずっと誰かに歌ってほしいと思って温めていた曲らしいのです。「実はずっと学生時代から聴いていて、今回、ぜひ安倍さんに歌ってほしい」と。後で聴いてみたら、布袋さんが作られていて、今井美樹さんが歌っていて。今井美樹さんの声がすごく若かったんですよね。

── ええ。

安倍:でもほんとに“そういう時期だったのかな”って思ったり。出会って3度目のイヴを一緒に過ごしていて、幸せで。曲も3拍子のワルツで、そのリズムにのって一緒に踊ってるような感じで。私も、そういう感覚を想像しながら歌いました。

── しかし世間的に、なっちが布袋さんを聴くっていうイメージがあるような、ないような。……いやまぁ、そもそも『ASAYAN』の<女性ロックボーカリストオーディション>出身だから、あるのか(笑)。

安倍:そうそう。私、BOØWYも聴いていましたからね。布袋さんのソロのアルバムとかも。自分としては全然、布袋さんは遠い人ではなくて、“あ、布袋さんが作ったんだ”みたいな感じでした。

── そうなんだ。

安倍:そうなんです。布袋さんは天才です。


■ 結論:「何が起こるかわからない」

── さて、1曲ずつ振り返っていただきましたが、このアルバム『光へ』っていうのは、あらためて自分の中でどんなアルバムになりました?

安倍:やっぱり「次のステージへの第1歩となる1枚」、それが形になったっていうことですよね。新しいことに挑戦している私を知らない人が、今回のアルバムを聞いてもらったときに、ああ、安倍なつみはこういうことに挑戦しているんだ、ということがわかってもらえる、そんな一枚になったと思います。だから多くの人に聴いてもらいたいです。

── ですね(笑)。ミュージカルとか経験してきて、この手のクラシカル&クロスオーヴァーなアルバムっていうのをいつかは作ってみたいな、っていうのはあったんですか?

安倍:“クラシカル&クロスオーヴァー”というジャンルを作りたかった、というよりも、舞台やミュージカルの経験をつんでいく中で、自分の音楽の活動の中で、舞台での歌の経験をふまえた、新しい表現に挑戦してみたいという気持ちはありました。あと、やっぱり舞台の現場では、アンサンブルで、出演者みんなで舞台を作っていくというやり方なので、それがとても好きで。みんなで「いっせーのーせ!」で、同時に音楽をやっている感覚、それが自分がいつか音楽活動の中で活かしたかったことです。今回は、オーケストラという大きな、そしてたくさんの演奏者とともにコラボをさせてもらえて、それが叶うことができたかなって思います。

── じゃあ、いわゆるライブアルバムみたいなのを作るとかでもよかったっていうか。そういうのも想像してたけど、それが今回、たまたま偶然が重なってオーケストラでこの作品になったっていう。

安倍:そうなんです、こういう形になりました。

── なるほどね。

安倍:でもやっぱりミュージカル・ナンバーは大好きですね。まずお芝居があって、そこに感情があって、歌いますという。これは単に歌を歌うという感覚とは、またちょっと違うんですよ。そういう歌を歌ってみたいとは思ってました。ジャンルで言えば何だろう……シャンソンとか、越路吹雪さんとかかな。『三文オペラ』という舞台をやった時に、三上博史さんが「なっち、越路吹雪さんとか聴いたほうがいいんじゃない?」と言ってくれて、DVDを貸してくれたんです。それお見た衝撃は結構すごくて、“え? こういう歌があるんだ”って思って。とても素敵。歌とは違うものが、同時に伝わってくて。これがシャンソンというものなんかなって。あれはまるで、本当にお話をしているようじゃないですか。

── シャンソンはそうですね。

安倍:あぁ、なんか素敵だなと思って。でも、いきなりシャンソンを私が歌うのも違うと思ったから(笑)。

── あははは。

安倍:もうちょっと重ねて、この先にそういう機会があるかもしれないけど(笑)。なので、そこを目指そうとは思わなかったんですけど、ただ、そういう世界に触れてみて、歌ってひとつじゃないんだな、いろいろでいいんだなって。こうでなくちゃいけない、なんてことはないんだ、って。もっと自由で、やりたい音楽をいろいろやっていけばいいんだって思えたんです。

── なるほど。じゃあ、わかんないですけど、今後、もしかしたらシャンソンの……(笑)。

安倍:そうですよ。

── わかんないですもんね?

安倍:人生何が起こるか(笑)。今回の作品も自分でも驚いているぐらいですし。だから、また普通に私、インタビュー受けているかも。「今回ね、シャンソン。前回、言ったじゃないですか。」みたいな(笑)。

── (笑)なるかもしれないですもんね?

安倍:そう(笑)。わかんらないですからね。

── 今回のインタビューの結論、「何が起こるかわからない」(笑)。

安倍:(笑)
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