【対談】新藤晴一(ポルノグラフィティ)×作家・百田尚樹「もう執念の世界ですよね」

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■最終的には、誰のためでもない
■そういう境地にいくのかもしれない──新藤晴一

新藤:では、百田さんが大切な方に贈りたい本を1冊と、音楽1曲を教えていただいていいですか。

百田:いろいろあるんですけど、せっかくなので自分の本の話をさせていただきますと、最近新潮社から出ました『フォルトゥナの瞳』という僕のいちばん新しい本ですが、これは今読んでもらいたいなと思います。物語は、ひとり黙々と孤独に生きてる寂しい青年が、ある時不思議な能力を身につける。それはどんな力かというと、まもなく死期が近づいている人間、間もなく死ぬ人間が見えてしまうというものなんですね。最初はその不思議な能力に戸惑うんですが、彼自身まったく望まなかったその能力が、やがて彼の人生を大きく変えていくという、ファンタジーが入ったSFみたいな物語です。

新藤:では、音楽の1曲を教えてもらってもいいですか。

百田:私がクラシック音楽にいちばん最初にハマったのがベートーヴェンの「英雄交響曲」で。40年ぐらい前にハマって、いまだにやっぱり大好きな曲なんです。

新藤:変わらずに好きなんですね。

百田:そう、変わらず好きなんです。だから40年間も聴いてて飽きない曲ってすごいなと思って。クラシック音楽でもやっぱり最初の10年20年、あるいは若い時はすごく好きだったけど50歳を越えてからそれほどでもないなっていう曲もあるし、歳をとってから急に良くなった曲もあるし、いろいろなんですね。でも「英雄交響曲」は18か19歳の時に好きになって、今58歳ですけど、いまだに大好きです。

新藤:それも音楽の力ですよね。

百田:そうですね。晴一さんもあるでしょう?

新藤:僕は、サザンオールスターズに好きな曲がいっぱいあるんですけど、桑田さんのソロ曲が好きなんです。サザンのコメディ的なものとは少し違ってブルースだったりフォーキーなものだったり、たぶんご自身のルーツに近いものが多いんでしょうね。なかでも「月光の聖者たち(ミスター・ムーンライト)」は桑田さんが病気から復帰される時の曲で。ご病気をされたからこそきっと自分の人生についていろいろなことを考えたんだと思うんです。ポップスを極めた人がそこを抜けた先に作られた曲で。この作品を聴いた時に、自分たちが表現する世界がまだまだこの先にあると、すごく勇気をもらった曲でした。

百田:なるほどね。確かに表現する世界っていうのはほんとに無限ですからね。

新藤:無限にあるんですよね。本でいうと山崎豊子さんが亡くなった時に出版された『約束の海』です。もう、だいぶご高齢だったんですよね。

百田:80歳を越えられてましたからね。

新藤:ええ。僕は“新刊が出たんだ”ぐらいの感じで、知らずに手に取ったんです。読んでみたら他の山崎作品と比べてやけにあっさり終わって。おかしいなと思っていたら、巻末にこの本の成り立ちが書いてあったんです。病床の山崎豊子さんの頭の中では、物語が海外に行って日本にもう1回帰ってきてという上中下巻の大作を考えていたそうで。でも、もう体があまり動かなくて、それでもいろいろ調べながら物語の途中の上巻ぶんで亡くなってしまった。だけど、結果的に死の床になったところで字を書きたいと思うのは、やっぱり作家なんだなって。そんな中でも表現したい何かがあるということは……最終的には誰のためでもない。そういう境地にいくのかもしれないですけど。

百田:あともうひとつは、その本人にしかできないということなんですよね。例えば晴一さんが最後にすごい曲を書こうとなって、途中で「もう体が動かん、あと頼むわ」っていうわけにはいかないですよね(笑)。

新藤:「マネージャー頼む!」って(笑)。そんなわけにはいかないですよね、確かに。

百田:ええ(笑)。

新藤:そうか、代わりがないみたいな。そういう誇りがあるからやってられるというのもあるんですよね、きっと。

百田:そうかもしれませんね。

新藤:短い時間だったので、もっとクラシックを含めた音楽の話も百田さんの中に、きっとまだまだあるだろうし。本のことももっと聞きたいことがたくさんありました。

百田:晴一さんと初めてお会いして、お話をいろいろおうかがいしたんですが、音楽家でありながら、言葉を大切にする方だという印象を受けました。

文◎大井美和


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