【インタビュー】VALSHE、2作同時リリースに「大人/こどもの視点の違いを」

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VALSHEが9月24日、8thシングル「TRIP×TRICK」とミニアルバム『storyteller II ~the Age Limits~』を2作同時リリースする。7thシングル「TRANSFORM / marvelous road」から約2ヶ月という短いインターバルでリリースされる「TRIP×TRICK」は、“名前を奪われた少年”を題材に、VALSHE自身が書き下ろした物語を元に作られた作品だ。一方の『storyteller II ~the Age Limits~』はメジャーデビュー作『storyteller』の続編。デビュー4周年を飾るメモリアルな作品にして、イラストと歌詞と楽曲で、7つのショートストーリーを紡いだコンセプトミニアルバムでもある。

◆「TRIP×TRICK」『storyteller II ~the Age Limits~』クロスフェード 動画

両作に共通するのは練り込まれたストーリー。ミュージカルのようにドラマティックなサウンド展開とそれに応える表現力豊かなヴォーカルが楽曲の持つ物語をアートの域まで押し上げた。VALSHEの創造力は、泉のように溢れ出して止まるところを知らない。シングルとミニアルバムとで異なる役割を演じながらも世界観がリンクしていく構成など、その巧妙なアイデアには驚くばかりだ。両作に込めた彼女の意志と意図をロングインタビューで解き明かしたい。

■物語のオープニングテーマとして「TRIP×TRICK」があり
■エンディング曲として「my name is…」がある。全てが繋がっているんです

▲「TRIP×TRICK」初回限定盤
▲「TRIP×TRICK」通常盤
──前作「TRANSFORM/marvelous road」からわずか2ヵ月でシングル「TRIP×TRICK」とミニアルバム『storyteller II~the Age Limits~』をリリースするとは、制作が順調な証ですね。まずシングルについて話を聞かせてください。

VALSHE:前作を作り終えてすぐに、このシングルに取りかかりました。普段は一緒にサウンド面を作っているminatoと話し合って、デモが完成したら、それを聴いて歌詞を書くという流れなんですが……確か休日に音を聴いていたら、いつのもように歌詞を書くというよりは物語が頭に浮かんできて。なので、そのイメージを活かそうと思い、まずは物語を書いてみたんです。書き始めたら思いのほか筆が進んで、結構なボリュームになったんですよ。

──何気なく書いたら、長い物語ができたなんて、そのエピソード自体がまるでドラマか物語みたいですね。

VALSHE:ふふふ。書き上がった物語をプロデューサーなどに見せながら、「今回は物語を作り、それをもとに歌詞を書いた」と後日話をして。すごく個人的な、いわば趣味みたいな感覚で書いていたから、その時点ではその物語の役目は終わる予定だったんですが。

──では、今回のようにパッケージに物語をご自身で朗読するなんて、ゆめゆめ思っていなかった?

VALSHE:そうですね(笑)。周りのみんなが、VALSHEから生まれた物を大切にしたいと思ってくれたのかなと。

──自分で紡ぎ出した物語とはいえ、歌詞に落とし込む作業はまた別の頭を使うと思うのですが?

VALSHE:こんな行程を踏んで歌詞を書くのは、今までにない新しい取り組みなので違う感覚は確かにあったと思います。今までは、どちらかと言えば抽象的なモチーフに対してイメージを膨らませつつ、そこに自分の心情などを投影するような形で書いてきました。でも今回は自分で書いた物語がもとですから、むしろ書き手の心情に寄りすぎないように気をつけましたね。物語に寄せ過ぎてしまうと、聴いてくださる方の想像力が入り込む余地がなくなってしまうというか。逆に、物語で描かれてない部分を歌詞で補足したりもしていますよ。

──では、歌詞は元になっている物語のアナザーストーリー的な要素もあると?

VALSHE:そうですね。なおかつ、歌詞ではその物語を第三者的に読んでいるVALSHEの存在も居るんです。ミュージックビデオでは実際に物語を読んでいるVALSHEが、本の中の主人公になった気持ちで、部屋にある様々な物を使って冒険するようなものになっています。ミュージックビデオで見せたような、自分の世界で旅をするという世界観などから「TRIP×TRICK」というタイトへ繋がっていったりもしています。

──なるほど。そもそもトラックを聴いて、どんなところに惹かれて物語に結びついたのでしょう?

VALSHE:これまでの楽曲はマイナー・アップをVALSHEの王道として作ってきたと思うんですね。ですが、今回のトラックは、Aはマイナー、Bはメジャー、サビで再びマイナーになるなど、楽曲の持つドラマティックな要素がそもそも強くて。その展開のダイナミックさそのものが既に物語のようだなと感じたんです。だから誰も予想してなかったことではありますが、物語を先に書いてみるというトライから生まれたんだと思います。とにかく今回は、音をヒントに物語を作り、それが歌詞になり……と、次々とやりたいことが溢れてきて、それを形にするのが本当に楽しかったですね。ここ最近はVALSHEが実写になって姿を現したこともあって、VALSHEの新しい部分を中心に提示してきたと思うんです。それを経て今のVALSHEはどんな表現をすればいいだろうと考えたとき、新しい世界に踏み出しても変わらない部分を提示したいと思ったんです。

──VALSHEさんは何気なく話してますが、音を聴いて物語がさらっと書けるなんて、やっぱり特別な感性を持ってるんだなぁって。

VALSHE:いえいえ……(照)。今回のような新しい作り方をしたことによって、実はさらに面白い発展をしたんですよ。楽曲からインスパイアされて、VALSHEが物語を書き、それを歌詞に落とし込んだように、サウンドプロデューサーがさらにその物語を受けて書いたのがカップリング曲「my name is…」なんです。「TRIP×TRICK」の歌詞も含め、全てが繋がっているので、ミュージックビデオなども含めてトータルで楽しんでもらえる作品になったと思います。

──それは見事な創造の連鎖ですね。

VALSHE:ですね(笑)。物語「TRIP×TRICK」のオープニングテーマとしての楽曲「TRIP×TRICK」があり、エンディング曲としての「my name is…」がある。「my name is…」は優しいバラードで、VALSHEとしては珍しいタイプの楽曲かもしれませんが、エンディングテーマだと分かって聴くと、それにふさわしい壮大なナンバーだなと思っていただけるんじゃないでしょうか。

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