【インタビュー】SCREW、新作『PSYCHO MONSTERS』に「それぞれの曲が、いろんな表情を見せるようになる。自分でもいいなと思う」

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メジャー第2作にあたるアルバム、『PSYCHO MONSTERS』をリリースしたSCREW。もうすでに手に入れたファンも多いはずだが、落差が大きく多様な楽曲が散りばめられているにもかかわらず“実にSCREWらしいアルバム”と感じられるのは、彼らのアイデンティティがジャンル感などとは違うところで確立されていることの証しかもしれない。5人の言葉から、その自信の大きさを感じ取っていただければ幸いだ。

◆今になって聴いてみても、これ以上は今の自分には
無理だなっていうところまで行けてると思えるんです


――アルバム制作中というのは飽きるほど自分たちの音源を聴くことになるわけですけど、今回の『PSYCHO MONSTERS』完成後、皆さんがこの音源を普段の生活のなかで聴くようなことはあるんでしょうか?

鋲(Vo):僕は聴くようにしてますね。確かにさんざん聴いてきたんで、どうしても粗探し的な感覚で聴いてしまう自分がいたんで、今まではなるべくツアー直前とかリハーサル期間までは聴かないようにしてたんです。どうしても“ひとり反省会”みたいになってしまうというか。でも今回は、反省点自体もわりと少ないんで。捨て曲がないなって、自分でも思うんです。もちろん今までもそのつもりで作ってきたんですけど、特に今回は全曲いい感じで、しかも幅広いし。自分でも聴いてて飽きないですね。

ジン(Dr):僕の場合、逆に今まではシングルにしてもアルバムにしても、できた後はさんざん聴いてたんです。ただ、今回に限っては、聴きたくないという意味ではなくて、ちょっと怖くてあんまり聴けてないというのがあって……。

――怖い? どういうことです?

ジン:トータル・コンセプトとして、より心に深く突き刺さるもの、より感情的なものというのが僕のなかにあったので……。なんか、それがよりリアルに表現されていて、聴くと考えさせられてしまうところがあるいうか、自分のネガティヴな部分すらも垣間見えるところがあって。もちろん常にポジティヴであれるようにしてるつもりなんですけど、聴くことによって自分でも打ちのめされそうになってしまうところがあるんです。でも、聴かないわけにはいかないし(笑)、ツアーに向けても聴いておかなきゃいけないなとは思ってるんですけど。

――要するに、聴くのが怖くなるくらい振り切れたものができた、ということなんですね?

ジン:はい。いろんな楽曲が入ってるなかで、トータル的にそういった部分というのがリアルに出ているんで……なんか怖いです(笑)。

ルイ(B):僕は……怖くはないですけど(笑)、感覚的には鋲君と近くて。僕の場合、今までの場合だと自分の曲を聴かなかったんですよ。やっぱり粗探しみたいになってしまうし、プレイ云々、編集云々とかじゃなくて、曲を作る人間として「ああ、もっとこんなふうにアレンジすれば良かったな」みたいなことを後から感じてしまったことというのが昔あって。言ってしまえば、結局はその当時の自分の力量不足だったんですけどね。今回の作品についても、以前の自分だったらきっと、他のメンバーが作った曲ばっかり聴いてただろうと思うんです。でもなんか、自分の作った曲もちゃんと聴けるようになって……。言葉で言うとすごく嘘くさい感じになってしまうんですけど、何の後悔もなくできたというか、曲を作った段階でも迷いなく「完成しました!」ってみんなにデモを渡すことができてたので。今になって聴いてみても、これ以上は今の自分には無理だなっていうところまで行けてると思えるんです。それぐらいの自信があるから、確かに制作過程でたくさん聴いてきましたけど、逆になんかメンバー全員の音とか歌とかが入った状態で綺麗に完成されたものを聴いて、ホントにもうこれ以上ないものになったなという満足感を味わえて。

――制作段階に思い描いていた理想がきっちりと体現できている、ということですか?

ルイ:それもあるし、それ以上のものができた自信というのもあるんで。だから自分の曲とかでも、まあ普通に聴けるようになったんですよね(笑)。他のメンバーの持ってきた曲だったら、今までも深いことは考えずに聴けてたんですけど。やっぱなんか自分の曲の場合は、どうしても聴きながらあれこれ考えさせられることが多かったんで。でも今回は本当にそれがないし、自然に聴けてるんです。

マナブ(G):僕もやっぱ、粗探しばっかりしてしまうところがあって。だから正直、これまでは基本的に聴いてこなかったんですけど、やっぱりツアーをまわる以上は早いうちから馴染んでおきたいというのもあるし。それで最近はよく聴いてますね、ちょっと使命感みたいな感じで(笑)。でも、作品としても自信があるし、一枚を通していろんな楽曲があるし。よく「同じアルバムのなかであの曲とあの曲は似てるよね?」みたいなことってありますよね? でも、このアルバムについてはそういうところもないし、しかもわかりやすい。客観的にみて聴きやすいと思うんですよね。

◆なんか一個のところにいられない性格のバンドなんです。
「これは前にもやったし、もう止めよう」みたいな


――聴きやすい。確かにそれはありますよね。和己さんはどんな感覚ですか?

和己(G):反省とかは、もうミックスとかの段階で充分過ぎるほどしているので(笑)。今はもう、違うところに意識が向かってますね。スタジオで録ったテイクと、家でリアンプで録ったテイクの聴き比べをしたりとか。あと、最終ミックスが終わってアンプで鳴らした音というのを、いかにシミュレーターで再現できるのかなっていう調整の部分だとか。そういうことを今は、ちまちまとやってます。ただなんか、ライヴに向けての必然的な意識というわけではなく……。今のレコーディングのスタイルが基本的にはリアンプなんですけど、そこでいろんな機械を通してアンプに行くわけですよね。そこでまあ、家でアンプを鳴らせればいいんですけど、実際そうはならないんで、難しいなと思いつつ。結局はニュアンスですよね。右手と左手のニュアンスってものを、ちゃんとアンプで鳴らしたようなものにするためには何をどうすればいいのかっていうことに、ちまちまと取り組んでるわけです(笑)。

――今どきのレコーディング方法ならではの悩みどころですよね。自分の音がそういったプロセスを経てどう変わるのかを描きながら録るところから始まって、完成した音をそのまま再現するためにはどうすべきかを考えさせられることになる。

和己:そうですね。それをもう、プラグインで作れればたいがいのことはクリアできるわけですけど。今回、2曲だけスタジオで弾いたんですね。「SPIRAL OF MISTRUST」と「Burst Forth」。実際、それはちょっとしたトラブルが原因でスタジオで弾くことになったんですけど、結果、そこで弾かせてもらって良かったなと思って。

――今のような話というのは、レコーディングの裏側に興味のない人にとってはまるで意味不明かもしれないけども(笑)。でも、昨今の音源制作では自宅作業やPCの画面上での作業も多くなっているのと同時に、そこでどれだけ想像力を働かせられるかが大事になってきてるように思うんですよ。

和己:そうですね。今回の場合は僕がほとんどのギターを弾いたので、そこでのギターの音の左右への振り分けの感じだとか、そういうのももっと今後はシビアに見つめていきたいなと思っていて。それで今、いろいろと考えてるところですね。だからこのアルバムの完成音源をずっとつらつらと聴いてるというよりは、1曲1曲を見つめ直してる感じです。

――なるほど。具体的な作品像という意味で言うと、さきほどから何度か発言にも出ているように、とても楽曲が幅広い。しかも一連のシングルの色というのがちゃんと反映されているなという印象を受けました。ラウドな要素、デジタルな要素、踊れる要素、それらが全部重なりながら、結果的に曲同士の落差というかダイナミックスを大きなものにしているように思います。実際、さまざまな曲ができてくるなかで、「こんなにいろんなタイプの曲があって、アルバムとして成立するのか?」みたいな不安はありませんでしたか?

ジン:今回の新曲ではないんですけど、「CAVALCADE」だったり「FUGLY」だったりというシングルの曲は、うまく共存してると思うんですけど、どちらの曲もシングルで出したときは表面しか見えてなかったようなところがあって。表向きの顔というか。でも、このアルバムに入ったことによって、その内面というか裏の顔まで見えてきて。やっぱりそれは、新曲たちと並んだことでそう聴こえるんだと思うんですね。それを考えると、シングルのそういう曲たちも含めてアルバムが成り立ってるんだなっていう印象があります。

――その2曲をシングルとして出した頃というのは、アルバムの像というのはまだ描き切れていなかったわけですよね?

ジン:正直、そうですね。逆に、そのあとで作ってきた曲たちによって、あの2曲でやろうとしたことがより具現化されたというか。イメージがちょっと変わりましたね。

ルイ:多分このアルバムをいちばん散らかしてるのは僕だと思うんですね(笑)。もちろん作曲の面で。なんでそこまで気にせずにやってこれたかというと、まず「FUGLY」を作ったときに自分のなかで感じたのが、どんなテイストの曲を持ってきても、楽器隊それぞれが自分の色を加えて鋲ちゃんの歌が乗っかったなら、ちゃんとそれだけでSCREWの曲っていうブレないものに持っていけるんだなってことだったんです。そういう手応えを「FUGLY」のときに結構感じてて。だから正直、このアルバムに入ってる自分の曲のなかには、その素になる部分を作ってる段階では「これ、どうなんだろうな?」って自分のなかでちょっと引っ掛かったものとかもあったんですけど……まあ、多分できるんだろうなっていう自信みたいなものも同時にあったので。最終的には躊躇いもなく持って行ったんですけど(笑)。

――「CAVALCADE」にしろ「FUGLY」にしろ、それ以前のSCREWからすれば、どちらもやや冒険だった。だけどどちらもSCREWらしいものとして完成させられたことで、結果、もっと振り切れるようになったということですね?

ジン:そうですね。

鋲:まあ、こうなることは予想していたというか。これがSCREWなんだろうなって思っていたので、本来の。やっぱりすごく気分屋だなと思うし、飽き性だなと思うし……。なんか一個のところにいられない性格のバンドなんです。「これは前にもやったし、もう止めよう」みたいな。敢えて広げていって、それを歌詞でまとめていくのが自分たちなのかなって思います。

マナブ:確かに振り切った曲があるのはわかってたんですけど、今までも、それまでなかった要素とか、ひっちゃかめっちゃかな曲が集まった作品とかを作ってきてたんで、「これでまとまんのかな?」とかそういう不安は全然なくて。まあ、いろんな曲があって散漫だって言われる危険性があるくらいなのがSCREWなのかなって思ってたし。そういう意味では、今までやってきたことがこの作品にも出てるんじゃないかなっていう感じですね。

――和己さんがさきほど言っていた「1曲1曲と向き合う」という作業が必要なのは、1曲1曲の性格が多様で、さまざまな方向に振り切っているからこそでもあるんでは?

和己:そうですね。まあ今回の場合も例によって先にアルバムのタイトルがあって、そのタイトルが出てきた時点で、わかりやすく幅の広いものになるだろうってことが容易に想像できていて。で、選曲会のときにも必然的にそういう曲たちが集まっていて。白でも黒でもない感じというか、どちらにも振り切ってるような感じというのは確かにあると思うんですよね。ただ、どんな曲が来ようとSCREWだし、結果的にこうなるってことは最初から想定できてたというか。だからある意味、想像通りでもあるんです。

◆自分たちのなかでは、芯はあるんです。
だけどそれを敢えて誤魔化してるところがあって(笑)


――確かにどんな曲でもSCREWらしいものになり得るし、歌詞がひとつに束ねているというのもわかります。ただ、ふと思ったんですけど、「じゃあSCREWのど真ん中ってどういう曲?」と尋ねられると、答えにくかったりしませんか?

ジン:そうですね。もちろん一個のブレない軸っていうのは根本にあるんですけど、そのなかで広げていくのが僕らのやり方っていう意識なんで。だから特定のものに限定して「これが僕らです」というのはないし、それはむしろ全部に当てはまるというか。

――逆に言うと、全部がど真ん中?

和己:いや、それは違うと思う。もちろん意識して変化球を投げることもあるわけで。そういう意味では、今回のアルバムはフックのある曲、引っ掛かりを強く感じる曲というのが詰まったものになってると言えるんじゃないか、と。自由度の高さみたいなものは、それこそインディーズの頃も含めて前々からあったと思うし。幅広くやってみたり、逆に意図的に狭くしてみたり。そこも変わってない部分といえばそうなんですよ。軸ありきで、広げたり、狭めたり。もちろん鋲が言ってたように、飽き性というのもあるのかもしれないですけど(笑)。まあ、その時その時の感覚に忠実というか、一個のものに囚われない柔軟な考え方っていうのも出てきたし。だから、人間味があるんじゃないですかね。歌詞にも曲にもそれが出てるんじゃないかと思うんですけどね。

――確かに作品というのは、作り手の人間性を感じさせてくれるものだし、バンドのそのときの状態が自然と反映されるもの。この作品から推察していくと、この時点でのSCREWはどういう状態にあったということになるんでしょうね?

和己:……不安と希望が入り交じった状態、じゃないですかね。それが音楽にも出てると思う。

鋲:多重人格……を、装ってる(笑)。ホントは、もちろん芯というものを理解してるとは思うんですけど、それを敢えて外したりもしてると思うし。でも、やっぱずっとそうやって活動してきたわけだし、それがSCREWだし……。説明するのが難しくて伝わらないとは思うんですけど、自分たちのなかでは、芯はあるんです。だけどそれを敢えて誤魔化してるところがあって(笑)。

――つまり、自分たちの芯については自覚しているけども、それを具体的に説明したくないし、芯の部分だけをさらけ出すような音楽作りもしていないし、きっぱりと「これが俺たちの芯だ!」みたいな言い方もしたくないということですね?

鋲:うん。そこですよね。芯があるのに多重人格のフリをしてる。そうじゃなかったら、こんなに広がらないと思います。

和己:多分、この広がりを受け入れられないと思うんです。芯がなかったなら。

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