【インタビュー】SLANG、結成26年目の更なる高み「俺がそれをチョイスをしてきたってこと」
■工夫してずっとやってきたからか、自分の作品だからか
■どんどん負けん気みたいのが出てくる(笑)
──それと、今回のレコーディングでは音の録り方を変えたとか。
KO:良い音で録りたいっていうのはずっとあって。分離がいい、立体感がある音にしたいって俺は前から言ってたんだけど、やっぱり環境的な問題もあってね。そこを今回はやれるだけやろうかって。今まではバンドの音を一発で録ったものに、ギターをかぶせるだけだったけど、そうするとやっぱりミックスの段階で音がクリアにならない。俺はそこがイヤだからパラで録りたいというのがあったんですね。今回、時間的な余裕もあったし、やってみて気に入らなかったら出さねえくらいの感じで。みんながそういう感じでもいいと納得したから、パラで録るってなったんです。
──これまではベーシック一発録りが基本だったとのことですが、パラで録るというのは今回が初の試みですか?
KO:直前に、bloodthirsty butchersのトリビュートアルバム(『Yes, We Love butchers ~Tribute to bloodthirsty butchers~ Abandoned Puppy』)のためにレコーディングした「アンニュイ」があって。ギターのかぶせが多かったんですね。スローな曲だし、せっかくだからって、試しにバラで録ってどれだけイジれるかやってみようって。そこでメンバーを“やっぱパラだよな”っていう気にさせて(笑)。
──その作戦が功を奏したわけですね。
KO:そう。いつもミックスの時、例えば「このモコモコした音を取ってくれ」って言っても、そのモコモコ感を探したらタムに差していたマイクにギターとベースの音が地味にかぶっていたとか、そういうのがいろんなマイクに入っていることが音のモヤモヤ感を生むんですよね。逆に言えば、それが一体感だっていわれることもあるんだけど、そもそも良い音になってないんだから、そんなもん言い訳だって。
──音が良くて、勢いも録れればいちばんなわけで。
KO:そうなんですよ。荒々しさとかノリがなくなるかもしれないから、バラ録りって敬遠されがちだと思うんですけど。バラ録りの利点っていっぱいあるじゃないですか。パラのほうが確実に音が幅広くイジれるわけだし、パラでノリがでればいいわけだから。じゃあそれをやろうよって。「今のお前らならできるだろ!」って……俺、演奏しないんで、言うだけだけど(笑)。
──レコーディングの行程とか、メンバーさんの反応はいかがでした?
KO:ドラムのKOHEYがいちばん最初にベーシックを録るので、「俺できるかなあ」って心配してたけどね。彼は、スイッチ入ると無心に叩きまくるみたいなドラマーだから、クリック聴くためにヘッドフォンをしてると、それがズレてやりづらいって言ってたから。キャップかぶった上にヘッドフォンかけて、ガムテープでぐるっぐる巻きにして(笑)。そうしたらいつも通り叩けたので、「よかったじゃん、ガムテープに救われたな」って(笑)。
──それぞれのサウンドメイクはいつも通りでしたか?
KO:俺ら、すべての出音が歪んでるけど、それを変えるつもりはないんですよ。そのままの良い音をクリアに録りたいっていう。俺はレーベルをやってて、そのライヴハウス兼レコーディングスタジオのKLUB COUNTER ACTIONでいつもレコーディングをしてるんだけど。最初の頃、札幌のバンドとかを録るときにはいつも立ち会っていたんですよ。
──そこで培ったノウハウもあるわけですね。
KO:でも、やっぱり高いスタジオでやらなきゃダメだよね(笑)。日本はスタジオ代が高いから、アメリカへ行くとか。マキシマム ザ ホルモンの亮君あたりに、「亮君、スタジオなんとかしてよ。ついでにちょっと立ち会って、よく録ってよ」って頼むとかさ(笑)。ただね、やっぱりKLUB COUNTER ACTIONでどれだけいい音が録れるかってことをうちのエンジニアと話し合ったり、工夫したりしてずっとやってきたからか、それとも今回は自分の作品だからか、どんどん負けん気みたいのが出てくる(笑)。
──録り慣れてるスタジオへの愛着もあります?
KO:COUNTER ACTIONはそんなにいいレコーディング機材が揃ってないんですよ。マイクとか真空管アンプとかも特別いいものではないので。DTM用のプラグインは揃えてるんだけど、マイクは普通のレコーディング用で、一個何十万もするようなものは、ボーカル用のコンデンサーマイクしかないんですよ。そういう環境のなかで、どれだけできるかっていう。今回ドラムだけは、知り合いのマイクマニアみたいな人に5~6本借りて録ったんだけど、結局、全部は使わなかったですね。試してみて、高けりゃいいってもんじゃないんだなと。
──結果、今回のレコーディングの手応えとしてはどうですか。
KO:音は今までのなかで、いちばん気に入ってる。ただ、まだもっと出せるなっていうふうにも思えてて。それはレコーディングの手法的な部分だから、次回また考えてやりたいですね。
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