【インタビュー】ZIGZO、ひねくれロッカーたちが放つストレート球「惰性じゃないことを示すべき時」
まるで、スティーヴン・キングの映画『Stand by Me』を見終わったときの気分がした。2014年、バンド結成15周年を迎えるZIGZOがデビュー記念日である本日7月1日にニューアルバム『FOREVER YOUNG』をリリースした。大人になってもいまだ音楽でやんちゃを突き通してきたひねくれロッカーたち。そんなZIGZOがなぜ今作では代表曲「ひまわり」を書いた“あの頃の自分”のように、音楽に夢や希望や恋心をストレートに投影していた頃の瑞々しい青春感を再び描くことができたのか。コンポーザーでもある高野哲(Vo&G)に“素直になるまで”を聞いてみた。
◆「普通に呼ばれたままのサビに行けばいいのに、お前はそこに行かないようにしてる。
ひねくれているんだよね。すべてにおいて君は」と言われ(笑)
――今作『FOREVER YOUNG』は最初にコンセプトを決めて作っていったんですか?
高野哲(Vo&G/以下 高野):ひとつあるとしたら、「いつもよりもちゃんと歌を軸にしようぜ」ということを宗清さんというディレクターから言われたぐらい(笑)。俺がメロディーを確定する前の段階から「俺も混ぜてくれ」というリクエストをしてきたんで、バンドアレンジをする前段階で一緒にメロディーの骨格を練り直す作業をしたんです。これはZIGZOとしては初めてのことでしたね。うちのディレクター、もともと出たがりなんで(笑)、そういうのが出ちゃったのかなと。
――名だたる先輩方の制作を担当してきた有名ディレクターさんですからね。
高野:ま、そういうディレクターがね、「本気でやるぞ」って言うんだから、僕は「ぜひ!」と思ったし。20年もやっていると「これいいでしょ?」って出したときに「イマイチだね」って言ってくれる人ってそんなにいないんですよ。作曲中は俺は「やった、これで俺世界一になれたわ」という熱狂の渦の中にいますから。でも、半年後ぐらいにその熱が醒めると気づくんですよ。なんでこんなものに興奮してたんだろうって。ただ酔っぱらって興奮してただけなのかなって(笑)。
――ガクッ(苦笑)。
高野:それで、何でみんな言ってくれないんだろうっていうのを思ってたんですね。だからそこにテコ入れしたかったんでしょうね。
――そこにディレクターさんが自ら入ってきてくれたと。
高野:俺はそういう感覚でしたね。
――制作過程はどうだったんですか?
高野:えっとね、まず2013年末にさっそく5曲ぐらい書いて持っていったんですけど、5曲ともボツに。「何がダメなんだ?」って聞いたら「お前の曲はイントロから歌い出してAメロBメロまではすごくいいんだけど、“サビでなんでそっちに行っちゃうの?”って方向に行きがちで、この5曲は全部そうだ」と言われたんですよ。「普通に呼ばれたままのサビに行けばいいのに、お前は分かっててそこに行かないようにしてる。ひねくれているんだよね。すべてにおいて君は」と言われ(笑)。
――そんなボツの指摘が。
高野:だから、俺は「サビでそう行っちゃうところが俺じゃん」って言ったんだけど、「でも、今回俺がこうして入ったってことは、俺が求めてるのはそうじゃないってことは分かるよな?」と。で、「分かるけど、俺そんなことやりたくねぇし」というので喧々諤々が始まったので、「とりあえず飲みに行くぞ」と。
――こんなときはまずはお酒だろうと(笑)。
高野:はい(笑)。そこで「素直に呼ばれた方向に紡いでいくところにもお前らしさはある」って話をされたんですね。俺は「それじゃあ普通過ぎてつまんないんじゃないか」と思ってやらなかったんだけど……。改めて考えていたら、ひねくれたサビにいくのと素直に呼ばれたサビにいくのと、一体どっちが本当の俺なのか分からなくなってきて。
――結構ディープなところでコンポーザーとしての自分と向き合うことに。
高野:なりましたね。そこで「自分の中であんまりこねくり回さずにパッと閃いたサビをそのまんまメロディーにしてみたら?」と言われて。俺はそれまで閃いたものがAだとしたら、それをさらにこねくりまわして絶対にBパターン、Cパターンを探し、最後にDパターンを見つけるのが“作曲”だと思っていたんだけど。「いやいや。閃いたまんまを出すのが作曲だって、なんで君は素直に思えないかな?」とまた言われ(苦笑)。俺はあんまり“素直”って言葉は使いたくないんですけど、でもなんか……「素直にやってみたら」と。で、「最初に思いついたAパターンにサビに入れたのを持ってきて」と言われたから、そんな手抜きみたいなものでいいのかなと思いながらも、すぐに作って持ってったんですよ。13曲ぐらい。そしたら、12曲OKになって。「やればできんじゃん!」って言われたんですね。で、「じゃあ飲みに行こうよ」って(笑)。
――まあ、そりゃ飲みますよね(笑)。
高野:そこでOKになった曲が入ったアルバムです。
◆再結成からの流れも含めて、俺らはここでビシッと惰性じゃないってことを
示す何かをすべきだってことは、メンバーも分かってたんですね
――なるほど。今回、コンポーザーとして自分がこれまで築き上げてきた価値観を変えるような提案をなぜ素直に受け止められたのか。そこが不思議ですけど、これは画期的なことですよね。
高野:なんでそうなれたのか……。
――ええ。単純にディレクターさんのパッションに応えたいという気持ちもあった?
高野:まぁ、いつも本気でやってくれていた人がさらに「今回は本気で作るぜ」と口に出して行動起こしてくれたんで、そこには応えなきゃなというのはありましたね。……でも、これ書いちゃうと調子乗ってこの記事をプリントアウトして社内に配るような男ですから、ここは書かなくていいです(笑)。
――あははは(一同笑)。
高野:でもまぁ、それだけじゃないんですけどね。
――じゃあ、なんで今回素直にやってみようって腹を括れたんだと思います?
高野:今回、こういう作り方をするよというのをメンバーに伝えたときに、「うん、OK!」って反応だったんですね。ZIGZOは2年前に再結成したんだけど、どの再結成バンドも再結成のご褒美として最初は盛り上がる。だけど、その後は徐々に盛り下がっていっちゃう。そんなことは俺らも予測ができていて。で、このバンドは盛り下がり出したらやめる可能性もなくはなかったんだけど、再結成してあれだけ喜んでもらえて、2年経ってもまだ喜んでもらえてる。しかも、ディレクターをはじめ、昔からのチームの人たちが「本気でやるぞ」って言ってくれるというのはとてもありがたいことだと思うんですよ。惰性でバンドを続けることはできるけど、再結成からの流れも含めて、俺らはここでビシッと惰性じゃないってことを示す何かをすべき時だってことは、メンバーも分かってたんですね。だから、無理することなく「よしやってみよう」って、すっと受け入れられたんだと思います。
――なるほど。
高野:勢いだけで作る年齢でもないし、勢いだけで出てくる楽曲も再結成後のアルバム1枚とミニアルバムで出し切っちゃったから、ここからが今のバンドとしての“本気”というか。勢いだけじゃないものを、ちゃんと俺らは持っているんだぞ、というのを見せるとき、ディレクターがいいヒントをくれたってことですかね。
――その結果、若くないんだけど若い。そんな瑞々しさを持った歌メロ、歌詞がキラキラしたアルバムが出来上がった訳ですね。
高野:歌詞はいつも曲を作った後に書くんですけど、今回出した素直なメロディーには、今まで自分が書いてこなかったような言葉が引っぱり出されて並んでるのかなっていう気がするんですよね。最初にディレクターにデモを聴かせるとき、簡単な仮歌詞をのせて聴かせたんですけど、その段階で「歌詞も今回すげぇいいな。素直で」って言ったんですよ。だから「こんなの15分ぐらいで書いたものばっかりだよ」って言ったら「そこがいいんだよ。普段お前が時間かけて書いてくるものは正直意味が分からないことが多い」って(笑)。
――えぇー!?
高野:でしょ? だから俺も「15年間そう思ってたの?」って聞いたら「うん」だって(一同笑)。だから、今回はデモの段階の歌詞を軸にして書いていったんです。そこからこねくりまわして肉付けしても「元のほうがよかった」って指摘されたら書き直したりしたんですよね。
◆インタビュー続きへ
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