【ライブレポート】Sadie、進化を遂げたツアーファイナルで「また新しい旅立ちを」
2015年の結成10周年を控え、5月14日にミニアルバム『bleach』を発表したSadieが、全国7都市を廻るワンマンツアー<BLEACH OUT A BLACK STAIN>を開催した。バンドとして進むべき一つの“答え”を導き出してみせた6月5日、赤坂BLITZファイナル公演の模様をお伝えしたい。
◆Sadie 拡大画像
幕明けの「Jealousy」からキャッチー&メロディックな先制パンチを喰らわせると、まずはSadieの十八番であるヘヴィチューンをスリリングに畳み掛ける。力みゼロの手慣れた風情で「頭振ってかかってこい!」と容赦なく煽り、それに応えるオーディエンスの狂乱はあまりにも統率のとれたもので、もはや一種の儀式のような厳粛さがあった。
一転、ミステリアスなSEからオルゴールの音が流れ出しての「溺れる魚」では、オカルティックなサウンドとサイケデリックなライティングが妖しいムードを演出。そこから始まった第2ブロックでは、ダイナミックな景のドラミングとドラマティックな真緒の歌唱を軸に、ディープな世界を多彩に繰り広げていく。中でも苦悶のスクリームにステージ全体がうねる「淡き群青」、ボーカルの凛とした響きが場内を静まり返らせた「追恋の華」の切なさは凄まじいものだった。妖艶から慟哭まで、彼らの表現幅は実に幅広く味わい深い。
場内の静寂をダンサブルなSEが歓声による喧噪に変えると、「STARRING」以降はフロアをヘッドバンギングの海と化す凶悪チューンの連続で、クライマックスへと一直線に駆け上がる。ギターに加えて“飛べ!”“踊れ!”“歌え!”と積極的にオーディエンスを先導し、時に凄まじいシャウトを放って真緒をサポートする美月。通常は舞台後方に控えながら、ここぞという場面でグッと客席間際まで迫り出し、究極の押し引きで絶対的な存在感を放つベースの亜季。そして、最新曲「bleach」では巧みなタッピングを披露するなど、高みを追求しつつも奔放にパフォームする剣と、弦楽器隊も自らの個性と武器をいかんなく発揮してステージを彩る。また、ヘヴィなバンドサウンドのみならず、『bleach』でSadie最上位のデジタルチューンへと驚愕の変貌を遂げた「Sexual affection」など、ミクスチャーな要素を大胆に取り込んで、音楽的間口を広げていたのも特筆すべき点だ。
しかし、最後は美月がアコースティックギターを奏でる「嘆きの幸福」で寂寥感の残る幕切れを。思考を奪う勢いと心地よいメロディ。そして滑らかな展開は、Sadieの核を保ちながらも純粋に音の波動で心と体を高ぶらせて、“音を楽しむ”と書く“音楽”の原点に立ち返ったエンターテイメントを創り上げてみせた。エモーションで巻き込み、押し切るライブが特徴的だった彼らにとって、それは確実に一つの進化と呼べるものだろう。
アンコールでは秋のアルバム発売、それに伴って真緒いわく「ドカン!とでっかいツアー」を行うことを発表。2013年10月にフルアルバム『MADRIGAL de MARIA』、2014年5月にミニアルバム『bleach』と発表してきて、1枚のシングルも挟まずに再びアルバムをリリースするのはSadie史上前代未聞のことである。フロアから沸く喜びの声に応えるべく、以降「死んでくれるか!? 狂ってくれるか!?」と計算抜きの自由なアクションで放たれたのは「クライモア」など、Sadieファンにはお馴染みのアッパーチューンばかり。「METEOR」では満場の手拍子を受けて“守りたいものがここにあるから”と歌詞を歌い変えた一節が心に突き刺さり、続く「サイコカルチャー」では“存在を証明しろ。お前たちの居場所はここだ”という真緒の号令によるヘッドバンギングで、場内一丸となって文句ナシの一体感を見せつける。
「生きてるか、東京! 素直に生きてるか!?」──真緒
オーディエンスのみならずメンバーもハイテンションに荒ぶり、亜季までもがお立ち台に上がった代表曲「迷彩」でヒートアップし切ると、ピアノの音色が流れて真緒のアカペラから贈られたのは「サイレントイヴ」。激情に流されることなく、クリーンな歌声で届けられたSadie最高峰の切なチューンは、哀しい諦めの裏に温かな優しさを醸して、今までにない清々しさへとオーディエンスを誘う。そして、ツアータイトルに籠められた“心に積もった黒い闇を互いに取り払う”というテーマを、見事に叶えてみせたのだ。
「僕たち、ちゃんと続きます。ちゃんとアルバム作って、ツアーして、皆のところに帰ってきます。お前らと出会って、ライブして、別れて、また新しい旅立ちをして。その繰り返しがSadieなんやと思います。こうやって会いに来てくれるお前たちを、まだまだ守らせてください。また辛くなったら、葛藤したら、Sadieに会いに来たらええねん!」──真緒
ステージを去る前に真緒が語った言葉には、Sadieというバンドを支えてくれる人々への心からの感謝が滲んでいた。生まれも育ちも異なる人間が集まり、一つの創作表現を世に問うて、長くバンドを続けるというのは並大抵のことではない。しかし、そこにシンパシーを感じてバンドを愛し、求める人々が存在する限り、彼らの“帰るべき場所”としてSadieは其処に在り続ける。そして繰り返される出会いと別れの中で、互いを成長させていく。それが記念すべきメモリアルイヤーを前にして、Sadieの見出した答えなのだ。
取材・文◎清水素子 撮影◎江隈麗志
■<BLEACH OUT A BLACK STAIN>ツアーファイナル
2014.6.5(Thu)@赤坂BLITZセットリスト
SE
01.Jealousy
02.Voice of pain
03.Grieving the dead soul
04. 心眼
05. Rosario- ロザリオ-
SE
06. 溺れる魚
07. 官能とParadox
08. 淡き群青
09. 追恋の華
SE
10.STARRING
11.Skelton Bug
12.SUICIDAL ROCK CITY
13.Sexual affection
14.bleach
15.THE REQUIEM
16. 嘆きの幸福
SE
ENCORE
17. クライモア
18. RODEO SCREAM
19. MAD-ROID
20. METEOR
21. サイコカルチャー
22. 迷彩
23. サイレントイヴ
■ミニアルバム『bleach』
2014年5月14日発売
【初回限定盤A-type(CD+DVD)】
MRS-0057 \3.024-(tax in)
DVD:MUSIC CLIP
【初回限定盤B-type(CD+DVD)】
MRS-0058 \3.024-(tax in)
DVD:MUSIC CLIP メイキング映像
【通常盤 CD Only】
MRS-0059 \2,484-(tax in)
plugless ver.:サイレントイヴ収録
<収録曲>
1. bleach
2. Voice of pain
3. 追恋の華
4. Sexual affection
5. 溺れる魚
6. 嘆きの幸福
■New Mini Album「bleach」発売記念全国ワンマンツアー
<BLEACH OUT A BLACK STAIN>
5月16日(金) 名古屋ボトムライン
5月18日(日) 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
5月20日(火) Livehouse 浜松窓枠
5月23日(金) 梅田 AKASO
5月24日(土) 広島 BACK BEAT
5月27日(火) 福岡DRUM Be-1
5月31日(土) 宇都宮KENT
6月1日(日) 仙台CLUB JUNK BOX
6月5日(木) 赤坂BLITZ
◆Sadie オフィシャルサイト
この記事の関連情報
DEZERT × Sadie、<This Is The “FACT”>大阪公演よりアンコールセッション映像公開
【ライヴレポート】DEZERT × Sadie、<This Is The “FACT”>大阪公演で鳴らした愛「関西で一番ヤバイ場所にしようや」
【対談】千秋(DEZERT) × 真緒(Sadie)、<This Is The “FACT”>直前に語る本当の原点「なんとしても対バンを実現させなきゃいけない」
【ライブレポート】Sadie、主催ライブ<THE UNITED KILLERS>開催。「最高のライバルと、最高の仲間と一緒にできて本当に光栄です」
Sadie真緒、バースデーライブ<哀シミヲ謳歌>開催
Sadie、全曲フルリテイクのセルフカバーアルバム『THE REVIVAL OF SADNESS』発売決定
Sadie、代表曲「迷彩」MVを新たに制作・公開
10月22日、BARKS主催V系ライブイベント<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>東京公演開催
【インタビュー】AXESSORYのリアルとファンタジー